12/05 種の起源「アンダーワールド」を観てくる。

 はるか昔より続く、吸血鬼一族と人狼一族の戦い。しかし、このおぞましく壮絶な戦いも、狼族のリーダー、ルシアンの死と共に終焉を迎えようとしていた。狼族の生き残りを捜す吸血鬼の戦士セリーンたちは、地下鉄のホームで一人の人間、マイケルを追う狼族の一団と遭遇し、犠牲を出しながらも狼族が集結していることを知る。だが、吸血鬼の新しいリーダー、クレイヴンは歯牙にもかけない。狼族が追っているマイケルと、クレイヴンの態度に疑念を抱いたセリーンは、事の真相に迫ろうとするのだが、そこには死んだはずのルシアンの影と、自分を救ってくれたはずの吸血鬼先代のリーダー、ビクターの影が見えてくるのだった。

 古都ハンガリーのロケーションに闇色のブルーを基調とした色彩、徹底してクールで退廃的に描かれたこの舞台に飛び交う銃弾の雨と、翻る黒のロングコートの群れ。一見、どこかで飽きるほど観たこのシチュエーションを決して二番煎じにさせない、しっかりしたプロットとストーリーによって、オリジナリティーあふれるゴシック・ホラーとなっています。さらに、重い足かせを主人公のみに背負わせず、一族全てが分かち合っていることも、ダーク・ヒーローものとしてはなかなか珍しい。吸血鬼と人狼の起源に一人の人間を配し、今となってはタブーとされているその起源に迫ろうとする物語に、吸血鬼の貴族意識、人狼の獣性と悲しみをきちんと盛り込み、それぞれの思惑や戸惑い、翻弄されてゆく様が、あるものは種を超えて、あるものは種に縛られて、実に見事に描かれています。かっこいいと思わせるスタイルに頼りすぎていたり、語り足りない部分や辻褄の合わないパーツもありますが、おそらくアメコミを強く意識しているのでしょうからケチはつけますまい。何しろ、古めかしいドレスに身を包んだ吸血鬼元老院の一団が、地下鉄の巡るこの街に蒸気機関車で乗り付けるのですから。

 また、はっきりそれとわかるCGIを多用しながら、意図的に派手な見せ場を作っていないのが、ゴシック色を色濃く出していて好感が持てるところ。変身した人狼に重量感がないとか、ラストのモンスターが何だかおかしなものになってしまったのは少々残念ですが、CGIのポイントは押さえてあると言えるでしょう。ただし、CGIとはいえ見た目で迫力の出せる人狼とは違い、常人とは極端な差の少ない吸血鬼が、いまいち吸血鬼たり得ていないことが残念。銀や紫外線の弾丸といった設定でガン・アクションをフォローしているものの、肉弾戦の少なさが災いしてしまいました。銃器を使うなとは言いませんが、古典的なハンターにならって、もっと一撃必殺みたいなストイックさを大事にして欲しいですね。さらに、吸血鬼が鏡に映ってしまうのも大問題。本質を古典的なままに描いているのですから、こういうところは押さえておくべきですね。吸血鬼の特徴であるニンニクや十字架を出さないのなら、鏡も出さなかった方がよかったんじゃないかな。というよりも、見た目で特徴を出せないなら、こっちで特徴を出した方がよかったかもしれません。細かいカット割りの多用と必ずスローモーションになるワイヤーアクションはすでにお約束ですが、これもまた多用されるフラッシュバックには少々目が痛くなりました。単なるアクセントではなく重要なポイントなので、もうちょっと工夫してくれるとよかったかな。

 さて、すっかり定着した美男美女というわけでもありませんがそれなりに見栄えのするキャラクターたちですが、外見の良さが物語りに貢献しているというほどでもなく、せいぜいが貴族的な一面を強調している程度でいまいちかな。それでもセリーナは線の細さが逆に気丈さを強調しているといえますが、すいません、こういう強気なヒロインの見せる弱さに、私はころっと参ってしまうのでした。というわけで結構好きです、こういうタイプ。なんて好みはさておき、下賤の者として描かれている人狼一族の、ルシアンの秘めた温かさに心を打たれましたね。思いもよらぬ方向へ向かうラストにつれて、ちょっといじわるともいえるキャラクターたちの相関とどんでん返しですが、心地よく戸惑わされることでしょう。なんでぇ、今時のダーク・ヒーロー・アクションじゃねぇのかなんて思っていると、しっぺ返しを喰らいますよ。

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