11/09 支配者のチェス「マトリックス・レボリューションズ」を観てくる。

 プラントから抜け出した人類を殲滅するため、マトリックスは地下都市ザイオンにセンティネルズの大群を送り込む。必死の攻防にもかかわらず、追いつめられるザイオン。そのころ、マトリックスの設計者アーキテクトと、マトリックスワールドのプログラム予言者オラクルに提示された未来を「選択」したネオとモーフィアスたちは、別々の解決の道をたどろうとしていた。ネオは山へ芝刈り…いやいやマシン・シティーへ直談判に、モーフィアスはザイオン決戦へ。そしてマトリックスシステムから離脱してしまったプログラム、エージェント・スミスは、自らの分身を増やしつつ、ネオとの戦いの時を待っていた…みたいよ。

 ウォシャウスキー兄弟は、前作でさんざんこね回したへの付く理屈を全て放棄し、純粋にどんちゃん騒ぎに徹してしまったようです。そもそも第1作で築き上げた世界観、第2作では世界だけを引き継ぎもっとも肝心な観を捨て去ってしまったのですから、「マトリックス」という世界の結末はなんでもありなのですよ。ということを踏まえましてオラクル、あんた誰? 実は前作のオラクル役者が亡くなってしまったので、オラクルそのものを登場させないかと思いきや、まったく別の黒人役者を起用しています。しかも劇中で「こうなってしまったのはうまく説明できない」などとほざいたオラクル=ウォシャウスキー兄弟、バカですか? いや、しっかり笑わせてはもらったけど、オラクルとはいえしょせんはプログラムなのだから「書き換えられてしまった」で十分説明が付くじゃないですか。また、相変わらずそのほとんど全てをCGに頼ったアクションシーン、物量にものをいわせているパートはともかく、差しの勝負にまったく見応えがないのはどうしたことか。だいたい、近接銃撃戦ではどう見たって蜂の巣になっているのに、当たっていないと言い張るその態度がルール違反。どうやら、雨霰のように降り注ぐ弾丸を巧みによけていた、第1作の見せ方の妙を忘れてしまったらしい。これでは、いくらトリニティーが鶴のポーズを決めて見せても、ちっともかっこよくないですよ。クライマックスのネオとスミスの空中大決戦も推して知るべし。それにしても、一億総スミス隊、何もせずに見守っているだけってのがかえって不気味すぎるぞ。そんななかで、ロケット砲でゲリラ戦を展開する二人はなかなか見ごたえがありました。パターンではありますが、ここが一番よかったかな。ミフネ船長は全編叫びまくりでお疲れさんでしたけどね。しかし、細かいものを大量に寄せ集めて顔を作るのはもうやめよう、うんざりだ。

 さて、プログラム側(?)の伏線として既出らしいけどどう見ても新キャラを出したり、どういう立場なんだかよく判らない少女を出したり、新機軸というよりはでっち上げじゃなかろうかと思える結末への道しるべでしたが、世界の破壊と再構築なんてものではなく、全ては支配者のチェスだったのかね。ラストの太陽が泣いているぞ。そうそう、太陽といえば、トリニティーがおそらく初めて目にしたであろう太陽に感動するくだりは、なかなかうまかったね。欲を言えば暗中に落ちていくことでもう一言欲しかったけど、そのあとの悲劇のことで頭がいっぱいだったんだろうな、ウォシャウスキー兄弟。

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