10/06 監獄ブリティッシュロック「ジョニー・イングリッシュ」(吹き替え版)を観てくる。

 英国諜報部MI-7のナンバーワンが任務に失敗して命を落とした。ところが、その葬儀に集まった優秀なメンバーもまた、何者かに仕掛けられた爆弾によって全員命を落としてしまう。そんな成り行きによってMI-7の重要なポストに就いたジョニー・イングリッシュは修復作業を終えた英国王室至宝の王冠披露警護の任務に就くのだが、あっさりと王冠が盗まれてしまった。さらに成り行きから行き当たりばったりで、その王冠を利用して英国を支配しようとする黒幕と対決するのだが・・・。

 まずは、ブリティッシュコメディーがどうにも肌に合わないせいか、「モンティー・パイソン」も「Mr.ビーン」も今ひとつ乗り切れないことをお断りしておきます。という前提は、残念ながらこの作品にも当てはまってしまいました。確かにコメディーの質としては十分に笑える仕上がりなのですが、黒幕が誰なのかという謎解きがいつどこで行われていたのかまったく気が付かなかったところから、私のケチが付いてしまいます。刑務所を出所した悪党の雇い主が誰なのかをジョニー・イングリッシュが決めつけるこのくだり、そこまでのシーンでその悪党が雇い主と同じ画面に収まっていなかった気がするのは、私が見落としたのでしょうかね。なのでどうにも腑に落ちないまま、犯罪の裏側よりもコメディーを前面に押し出した話かどんどん展開してしまいます。さらに、当の黒幕の日本語吹き替えがふざけすぎていて、黒幕までコメディーリリーフ過ぎるぞと思っていたら、ラストの展開を見る限りもともとそんな作りだったらしいことにもがっかり。ローワン・アトキンソン演じるジョニー・イングリッシュだけが徹底的にコメディーリリーフであり、黒幕が大真面目であればあるほどその対比が面白いのではないかと思うのですけどね。もっとも、ジョニーが大真面目であればあるほどコメディーリリーフになっていくのが面白いわけですから、作りとしては正解なのでしょうけど。まあ、事件の真相に迫るほど、コメディーとしてはもう一つと感じてしまいましたが、それまでのパート、特に盗まれた王冠を追い回すカーチェイスでは爆笑させられました。ジョニーの部下バフがボケているようで実はとっても優秀、謎の(というほどでもないのが残念な)美女ローナもそれなりに役割を果たし、いい味を出しています。これでパスカル・ソヴァージュがもっと大物然としていたらなぁ、おっと失礼。いや、王座を奪ってイギリス本土を大改造(ニューヨーク1997)してしまおうという発想には恐れ入りました。でも、戴冠式にちっとも威厳が感じられなかったのは減点。87分とコンパクトにまとめることよりも、もっと犯罪のパートを入念に描いた方が良かったと思うよ。それから、007のパロディーのパーツを、もっと事件解決に活かしてほしかったな。特に予告でもかかっている射出座席、あんな使い方ではもったいないぞ。プロットは十分に面白いと思うので、先細りの作りが実にもったいない作品でした。パーツが足りなかったのかもしれないけど、編集でもうちょっと面白くできると思うよ。他作品と比較したくはありませんが、もっと「ピンク・パンサー」を狙うべきじゃなかったのかね。あ、フランスとイギリスの反目が根底にあったりするんじゃダメかもね。

 山口智充の吹き替えは、さすが芸達者なだけあって下手な役者よりもはるかに上手かったことに驚きました。この吹き替えでは、声質といいしゃべり方といい、広川太一郎に似ていますね。ただ、ローワン・アトキンソンのイメージとはちょっと違うかな、どうかな。

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