08/31 星に願いを「劇場版ポケットモンスター/アドバンスジェネレーション 七夜の願い星」を観てくる。

 秘密基地の留守番を任されたニャースは、ポケモンダンシングマシンを使ってサカキ様に見せるためのダンスの練習をしていた。しかし、そこへピカチュウたちが忍び込み、捕らわれていたポケモンを助け出そうとしたからさあ大変。ひみつ基地に吹き荒れる「ポルカ・オ・ドルカ」の嵐! これは併映の短編「おどるポケモンひみつ基地」。憶測でしかありませんが、スタッフたちはバスター・キートンを徹底的に研究し、ポケモンたちで再現したのかな? キートンそのままのニャースが実にユニークな、スラップスティック・アクション・コメディーに仕上がっています。実写映画でも、これくらいの脚本と演出が出来ればいいのにね。惜しむらくは、ニャースが歌いまくらなかったことかな。中途半端なナレーションは邪魔だった。

 千年に一度、七日間だけその姿を見せる千年彗星を見るために、サトシたちはホウエン地方の移動遊園地にやってきた。バトラーのマジックショーに入ったサトシたちだったが、マサトはバトラーのアシスタント、ダイアンの持っている結晶のようなものから声が聞こえるという。ロケット団とのドタバタでバトラーと仲良くなったサトシたちは、その結晶が千年に一度、七日間だけ目覚め、願いを叶えてくれるという伝説のポケモン、ジラーチであることを知る。そして、ジラーチが目覚めるためには純真な心を持つパートナーが必要であり、それがマサトであるとしてジラーチを預けられた。思わぬ事に喜ぶマサトたち。しかしバトラーは、ジラーチの真実の眼が開く時、千年彗星から強力なエネルギーが放たれるという秘められた力を使って、ある野望を達成しようとしていたのだった。

 毎度ながらの「伝説のポケモン」をキャスティングした劇場版なのですが、毎度ながら良質の仕上がり。時間の制約からか少々展開を急ぎすぎてはいますが、マサトとジラーチの出会いと別れ、バトラーの過去と野望の二つのドラマは短いながら説得力があり、十分に感情移入させてくれます。そしてお決まりのポケモンバトルですが、クライマックスはシシ神じゃねぇかというのはさておき、そんなことではずっこけさせないほどに見事なアクション。やってることは確かによくあるネタばかりではありますが、それをそうと感じさせないところが、やはり脚本と演出の力なのでしょう。また、いつもの主役、サトシとピカチュウを脇役に徹底させ、メインにするにはどう見ても押しの弱いマサトを上手くサポートし、彼とジラーチを主役としてきちんと盛り上げていることにも好感が持てます。そしてもっとも感心したのは、無から有は生まれない、失われたものはそう簡単に取り戻せないことをきちんと描いていること。これは、マサトがジラーチにかなえてもらう「お菓子がほしい」と、バトラーによって結果として枯れ果ててしまった森が物語っています。まあ、当たり前といえば当たり前なんですけどね。子供向けだからといって甘えや妥協はせず、それでいてきちんと子供向けに作られた安心して観ることが出来る作品でした。これ、大人でも楽しめることが、どこかで大人向けに作られているというものとはまったく違うんですね。だって、とても自己満足で作っているとは思えないもの。

 しかし、まさか「ポケモン」で涙するとは思わなかったよ。会わなきゃよかったから会えてよかったに変わるマサトの心境、バトラーを立ち直らせようとするダイアンの危機、いいねぇ。でも、助ける人間の名前だけをいちいち挙げ連ねたサトシのセリフはいただけなかったな。ポケモンたちと、ついでにロケット団も含まれているので「仲間たち」の一言であるべき。それにしても、どうしてこういう脚本と演出が、実写映画でなかなか出来ないのかなぁ。失笑するしかない感動の押し売り作品しか作れない製作者たちには、こういうところからも学んでいただきたい。まあ、キャラクターを大人に換えればいいってもんじゃないんだけどね。それに、ベタなやり口でもいいんですよ。照れ隠しをせず、きちんと物語が描けていれば。

戻る