08/30 東海道中膝栗毛「ドラゴンヘッド」を観てくる。

 日本坂あたりで謎の事故にあった東海道新幹線で生き残った高校生の男女二人が、歩いて東京へ帰ろうとする話。

 話にならない。いや、評するに値しないのではなく、話がないのですよ。極論してしまえば、テル(妻夫木聡)とアコ(SAYAKA)が火山灰の中やら廃墟をうろうろしているだけ。もう、サバイバルにもなっていません。ノブオ(山田孝之)が狂った原因が、てっきり彼が見たという赤い光にあると思ったんだけど、どうやらそうではないらしいぞと気づいたあたりからいやな予感が・・・。まさか「復活の日」災害版だったとは。開き直ってみたところで、極限状態に置かれて狂った人々というのもわかりますが、その極限状態の原因がまったく説明されないのでは、理解も同情もしようがありません。さらには、ロボトミー手術によって感情を取り除かれた双子も、アコの怒りを買わせるだけで本筋とは何の関わりがないのはどういう事だ。何かを怖がっていたから医師である父親に施術されたのなら、その何かを提示しなくては布石にも伏線にもならないぞ。おかしな効果を持つ非常食にしても、結果だけで原因と過程が描かれていないのでは、あってもなくてもおんなじだ。ロケーションだけのために海外遠征しているヒマがあったら、脚本を読み直して設定を練り直せ。そのロケーションと視覚効果は、パラレルワールドの日本としてなら、それなりに良かったけどね。でも、見せかけだけのデジタル処理に頼らない元画を作ることが先決だと思うぞ。もしかして、それっぽいところは本当に高感度カメラ撮影をしたのかもしれんが。

 とはいえ、実は不愉快になるどころかあまりのばかばかしさ加減と、妙に真に迫った妻夫木聡の演技に、必死で笑いをこらえていたのですよ。幸運なのかタフなのか、生きてるのが不思議なくらい妻夫木聡は五体満足でした。あと、日本刀を振りかざすあたりに往年の迫力がにじみ出る寺田農とか、根津陣八は傾いたメガネを直してほしいとか、どうでもいいところが気になって仕方ありませんでした。演技なんかどうでもいいSAYAKAは、演技以前の問題以前に存在自体どうでもよろしいほど気にもならなかったがね。いや、こんなストーリーでは、とりあえず少女を配しておかなきゃ形にならないってな程度のもんでしょう。あんまり上手いと、妻夫木聡をくっちまうしね。一見狂ってそうな近藤芳正が正気で、藤木直人が実はってペアはなかなか良かった。妻夫木聡に銃を打たせようとしたり、妻夫木聡に銃を撃ちまくったり、ああ、狂ってるなと。でも、変に説明的なセリフが多かったのは、かえってインパクトを弱くしていたかな。しかし、ラストでピエロメイクの本物のノブオとの対決がなかったのは残念。キーマンはこいつじゃなかったのか? 狂気と執念で東京にやってきなさいって。

 さて、荒廃した世界を押し出しているにもかかわらず、世界観として確立させていないので、好き勝手に想像することは出来ますが、めんどくさくてそんな気にもなりません。初回と最終回を見逃した、連続ドラマみたいなものか。テルとアコが口をそろえる「何が何だかもうわけがわからないよ」、はい、僕にも何が何だかわけがわかりませんでした。ところで、ローソンはスポンサーになっていたけど、伊藤園はなっていないの? それと、ドラゴンヘッドってもしかして竜脈から来てるの? 帝都物語?

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