08/10 ツール・ド・アニメ「茄子 アンダルシアの夏」を観てくる。

 世界三大自転車レースのひとつブエルタ・ア・エスパーニャの舞台、スペイン、アンダルシア地方。ぺぺ・ベネンヘリは選手の一人として、この故郷へ戻っていた。そして兄のアンヘルと幼なじみのカルメンの結婚式の日、ぺぺは懐かしい村を走り抜ける。再び故郷を後にするために。

 原作がそうなのかはさておき、徹底して自転車レースをドラマティックに描くことに焦点を絞り、サイドストーリーとなる人間ドラマはポイントをかいつまむ程度にまで簡略化し、47分というまるでテレビの1時間枠に収まるようにまとめられた作品。アンダルシアの暑く乾燥した風景の中で繰り広げられるレースシーンのリアリティーに関しては、作画、音楽、脚本、演出のすべてに文句のつけようがないほど。実写では当たり前に描くことが出来るロード・レーサーの機能美が、アニメーションとなっても損なわれていませんし、実写では不可能な描写は迫力満点。知っている人にはちょっと嬉しい、ツーリングレースでは有名な悪魔おじさんも顔出し。本来声優ではない実況中継も、よくある友情出演のぎこちなさがなく、実際のレースの実況そのまま。この実況でレースの状況や駆け引きを解説してはいるのですが、レースシーンばかりであることがかなりの客層を切り捨てているのもまた事実でしょう。

 というわけで、ぺぺとアンヘルとカルメン、そして彼らを取り巻く人々&猫に関しては、これこれこういうことがありましたという出来事が描かれるだけですので、あまり語るところがありません。これが意図的かどうかはわかりませんが、この切り捨て方はあまり潔しとも感じられません。もう30分ほど延ばして、このドラマをもう少し緻密に描いていればよりドラマティックな仕上がりになったのではないかな。単に原作がそうであったのかもしれませんし、原作者が苦手だったのかもしれませんが、それを補うのが脚本家の腕の見せ所でしょうに。もしかして、ほんとにテレビ1時間枠を狙っていたのかな。

 そしてどうしても気に入らなかったのが、歌と、セリフの言い回し。劇判にはいかにもスペインといった音楽がつけられているのに、歌はカントリーにしか聞こえません。スペイン民謡にもそんな楽曲があるのかな。そして語尾に“〜っす”とつけられたぺぺのセリフのおかげで、そうでなくても日本のサラリーマンみたいな作画のぺぺが、まったくもって日本人にしか見えません。なので、所々でツール・ド・信州か? と思えてなりませんね。まあ、エンディングで流されるおそらく原作と同じ、どう見ても軽井沢あたりの話だろうという画と比べる限りは、頑張っているとは思いますが。

 レースシーンに迫力があるのでファンでなければ楽しめないというほどではありませんが、切り捨てられたドラマも含めて、もっともっとアンダルシアの雰囲気が出されていればと思えてしまうのが残念でした。そして一応つっこみを入れておきますが、レースのゴールシーン、作画のやりすぎ。あの迫力の出し方は「クレしん」にしか見えなかったから、爆笑してしまったぞ。

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