07/21 異文化コミュニケーション「マイ・ビッグ・ファット・ウエディング」を観てくる。

 シカゴの郊外に暮すギリシア系アメリカ人のポルトカロス家では、厳格なギリシャ正教会信徒の父ガス・ポルトカロスによる、ギリシア流の伝統的な教えが守られていた。その一つは、ギリシアの女性はギリシア人の男と結婚し、ギリシア人の子供をたくさん産み、死ぬまで家族の食事の世話をすること。しかし、ガスの娘トゥーラはさえない容貌から内向的な性格となり、恋愛とは無縁のまま30歳になってしまった。そんなある日、父のレストランで働くトゥーラは、店にやってきたイアンに一目惚れ。これがきっかけとなり、彼女は今までの自分を変えるため、成績がよかったコンピュータの勉強を大学でやり直し、叔母の旅行代理店で働きはじめる。そして偶然にも旅行代理店の前を通りかかったイアンと再会し、恋に落ちるのだが、ギリシア女性に科せられた教えのために家族には打ち明けられずにいた。ところが、二人の仲がポルトカロス家とその親族にまで知られてしまい、親類縁者を巻き込んで大騒ぎになってしまうのだった・・・。

 移民の民族主義とそれに起因する人種問題が根底にあり、おそらくそれを踏まえた上でのコメディーなのでしょう。しかし、私自身はそれらの問題を直接肌身に感じることがないため、残念ながらカルチャー・ギャップをうまく使ったなんとなく平凡なラブコメディーとしか受け取ることができません。さらに、舞台も音楽もほとんどがギリシア風で固められたため、シカゴの片隅で起こっているのではなく、ギリシアの片隅を舞台にしたアメリカ青年とのラブストーリーという雰囲気が強くなってしまいました。ですから、この作品がもっとも活きてくる場所は、移民の多いアメリカ都市部なのでしょうね。そう考えれば、トゥーラを演じたニア・ヴァルダロス本人による一人芝居をベースにしたこの低予算作品が、なぜアメリカでロングラン上映されたのかがわかってきます。

 といったことを抜きにしても、爆笑というほどではありませんが、私が受け取ったままの異文化ラブコメディーとしてそれなりに楽しめるとは思います。文化の違いによるスラップスティックはなかなかユニークですし、尊大な態度をとりつつも実は心配性のガスに、一見貞淑に見えつつも実はとってもパワフルなマリアたちギリシア女性、ギリシア流のやり方にとまどいつつも一心にトゥーラを愛してギリシア流を受け入れようとするイアン、そしてその中心で一生懸命なトゥーラと、個性的なキャラクターたちの行き違いやぶつかり合いがほどよい上映時間の中にぎっしりと詰め込まれています。それに、雰囲気を決めてしまうほどのギリシア風の音楽も、なかなか心地よいものでした。

 とまあ小粒ながらなかなか良質の作品なのですが、惜しむらくは自身の体験をもとにした自作自演の芝居とはいえ、1962年生まれのニア・ヴァルダロス本人が30歳のトゥーラを演じてしまったこと。いかにさえない風貌とはいえ、とても30歳には見えないどころかまだ40歳だったことの方が驚きになってしまいました。もっとも、相手役のイアンを演じる1961年生まれのジョン・コーベットがその年齢よりも若く見えてしまうため、ポイントのひとつである見た目のギャップはものの見事に表現されているのですけどね。ニア・ヴァルダロスにもかわいげはあるのですが、もうちょっと・・・その、ね。

 追記:文化圏の違いなんて大それたことでなくても、実は案外身近にあるんだね。核家族と大家族のぶつかり合いといってもいいし、となりの家とは習慣が違うといってもいい。結婚は個人同士のつながりって視野で見ちゃうと、見えてこない部分があるんだなぁ。再びそういう視点からみると、逃避行に走らなかったイアンはエライ!

戻る