07/20 原点回帰「ブルー・クラッシュ」を観てくる。

 オアフ島ノースショア。アン・マリーは天才的なサーフィンの腕をもちながら、3年前の大会でおぼれて命を失い欠けて以来、サーフィンの腕も実生活でもその恐怖から抜け出せない日々を過ごしていた。そんな自分から抜け出そうと、名誉も危険も最高峰のサーフ大会パイプ・ライン・マスターズに出場する。その大会までの一週間、家族や親友、恋人に囲まれて時に励まされ、時に挫折をしながらも、アン・マリーは次第にかつての自信とサーフィンへの情熱を取り戻してゆくのだった。

 ストーリーだけを抜き出せばよくある青春スポ恨ドラマなのですが、この作品の見所は芸術品のようなチューブを描く巨大な波とその中をくぐり抜ける幻想的なサーファーたち、そしてそれらの迫力を余すところなく伝えるサーフカメラの映像にあります。全編に少しずつ加えられた中途半端にMTV的な作りが映画としてのパワーを損ねてしまいましたが、メインとなるサーフシーンはドキュメンタリータッチに仕上げられ、この本物の迫力がオーソドックスなドラマを牽引すると同時にリアルな物語を印象づけています。荒削りな編集と構成も気になるところですが、青春スポ恨ドラマであることを考慮すればそれもまた効果的であるともいえます。いや、個人的には小さな声で「ヘタッピ」といっておきますけど。

 しかし、キャラクター構成から言動までオーソドックスなのは、さすがにその行動が先が読めてしまい、もう一つパンチ不足というか、あくの強さが感じられません。キャラクターたちがそれぞれの役割はきちんとこなしているだけに、これは少々惜しまれるところ。とはいえ、これはおとぎ話ではなくドキュメンタリー的な作品であるため、あまり奇をてらうのは確かに不自然になってしまいますから難しいところ。まあ、あまり穿った角度から観てはいけないということですね。ただ、後で調べていて知ったのですが、アン・マリーの仲間の一人レナを演じるサノー・レイクが、ベテランサーファーであるにもかかわらずその腕を披露していないのは、かなりもったいなかったのではないでしょうか。彼女の雰囲気からして仲間のお守り役というのは理解できますが、ちょこっとでいいから実はサーフィンうまいんだよと見せてあげれば、ケイト・ボスワース(アン)、ミシェル・ロドリゲス(エデン)と互角のインパクトを与えられたのではないかと思いますね。現地のサーファーたちの楽しむ姿がかなりたくさん盛り込まれているので、サノー・レイクのショットを入れる余裕は十分にあるのですから。

 また、一般的には決してなじみ深いとはいえないサーフィンの用語を、解説抜きでそのまま使っているのはちょっと驚き。しかし、いちいち解説していたらうるさくなるだけですし、単語の意味や状況描写からだいたいわかりそうなことなので、問題にするほどのことではないでしょう。私も含めて、サーフィンに縁がなくてもドキドキゾクゾクと楽しむことができればそれでいいのです。映画とは未体験の体験なのですからね。実は、ちょっと自戒の意味もあったりします。読んだら観てみたくなるレビューを離れてしまっていたような気がしてならないんですねぇ、反省反省。

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