07/12 惚れたぜTX「ターミネーター3」を観てくる。

 「審判の日」が回避されてから10年、目的を見失ったジョン・コナーは放浪生活に明け暮れていた。しかし平穏に見えた日々にもピリオドが打たれる時がやってくる。作られないはずのスカイネットが、ジョンを初めとする人々のリーダーを抹殺するため、強力なターミネーターTXを過去に送り込んできたのだった。時を同じくしてジョンを守るべく旧式量産型のターミネーターT-101も過去に送り込まれる。バイク事故で動物病院に忍び込んだジョンは、そこで偶然であったジュニアハイスクールの同級生ケイト・ブリュースターと共に、再び未来を救うべく動き出すのだったが・・・。

 1の恐怖、2の迫力には及ばないものの、それぞれのポイントをうまく押さえた脚本と演出がユニーク。けっして前作を超えようとか奇をてらおうとせず、潔く簡潔かつコンパクトにまとめたことは、高く評価できます。でも、もうちょっと冒険してもよかったかな。ヴィジュアルやアクションも、最近ありがちな軽く存在感の薄れた方向に転がることなく、もちろんCGIを(おそらく)多用しながらも重厚長大な存在感あふれているのがお見事。前半の見せ場であるカーアクションにしても、少々長すぎるきらいはあるものの、同じ見せ方を繰り返すことなく飽きさせずに最後まで見せきっています。そして何よりも、初作の時間転送時には何も身につけられないという設定を曲げることなく、女性型であるTXが一糸まとわぬ姿でビバリー・ヒルズのブティックに出現するのが拍手喝采。いや、衣服まで再現できる液体金属で覆われているのだから裸である必要はないのですが、そこはそれ、サービス精神の表れなのです。ついでながら、シュワちゃんT-101の衣料調達がまたユニークな演出になっています。許容範囲外のアラートやら最初にかけるサングラスやら。ジョンとケイト、さらにはTXにメインを譲って、シュワちゃんはもう完全にコメディーリリーフ。当然のことながら、感情を表すことなく大まじめに演じているのですから、よけいにおかしいったらありゃしません。

 さて、シュワちゃん以外のメインキャストを一新した3作目なのですが、前2作の印象が強すぎるためかはまり具合は今ひとつ。特にニック・スタール演じる、究極の危機を乗り切った上で人生を見失ったはずのジョンが、ただの弱気な青年にしか見えないのは残念。ロバート・パトリックのT-1000に代わるところのTXを演じるクリスタナ・ローケンも、シュワちゃんが迫力を押さえているだろうとはいえ決して迫力負けすることなく、頑張って表情を消しているものの、所々に見え隠れするかわいらしさが仇になっています。徹底して冷酷無比、まあ感情がないのだからそうなるのですがそうなりきれていませんね。ただし、そんなTXがもう踏みつぶされたい、いやいや抱きつぶされたいほどに、とんでもなくかわいらしいのです。機械をリモートコントロールする際、ちょっと小首をかしげる仕草なんかたまりませんって。二本の足で一生懸命走る姿には、思わずがんばれと応援してしまいます。わたしは声を大にして言いたい、惚れたぜTX! でも、その最期はバタリアンみたいで悲しかったぞ、CGIのくせに目にはおびえが表現されていたし。もっと小粋なラストを用意してほしかったぞ。ちなみに、時間転送されたばかりのときのヘアスタイル、おろしたままのウェーブのかかったロングヘアよりも、ビジネスというかフォーマルというか、アップにしている時の方がかわいいなってまだいうか。

 キャストの一新は仕方ないとして、作品としてひとつだけ物足りないところをあげるとすれば、ロードムービーになっているのに、移動や旅という雰囲気がほとんど出ていませんでしたね。ロケ地の雰囲気はともかく、人間、特にケイトにそれが出ていないと感じたんですよ。まあ、ターミネーターだのスカイネットだの人類の危機なんて、時間経過と共に心境を変えていくのは難しい設定なのですけどね。それでも、どうしても前2作と比較すればおもしろさも迫力も1ランク落ちるといわざるをえませんが、後半のドラマから悲壮なラストをもって続編につなげる、プロローグとしての役割は見事に果たしているのです。何しろ、原題にしかないサブタイトルが「RISE OF THE MACHINES」、機械たちの夜明け、もしくは目覚めが妥当な邦訳かな、なのですから。というか作るんだろうな? ターミネーター4。

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