06/21 ダンシング・ミニ再び「ミニミニ大作戦」を観てくる。

 老練な金庫破り師ジョン・ブリジャーは、仮釈放中でありながら監察官の目を逃れ、水の都ベニスにきていた。彼をイタリアに呼び寄せたのは、スマートな仕事を信条とする盗みのプロ、チャーリー・クローカー。ジョンはチャーリーたちとのこの仕事を最後に、足を洗うつもりだった。そして仕事は成功し、3500万ドルの金塊を手にするのだが、仲間の一人スティーブの裏切りにあい、ジョンは命を落とし、金塊はすべて奪われてしまう。それから数年後のロサンゼルス。警察にも協力する鍵師のプロとなっていた、ジョンの一人娘ステラの元に、チャーリーが訪ねてくる。鍵師としてのステラの腕を借り、スティーブから金塊を取り戻すというジョンの復讐を持ちかけられた彼女は、一度はその誘いを断るのだが・・・。

 「THE ITALIAN JOB」という原題も「ミニミニ大作戦」という邦題も、1969年版とまったく同じ。しかしその中身はまるで別物で、かつての単純に愉快な泥棒逃走劇とはうってかわって、中心にあるのは復讐劇という重いテーマ。それにもかかわらず、涙を誘うような湿った方向に走ることなく、軽快かつ迫力ある作品に仕上げられています。しかも前作にしっかりと敬意を表し、同じようなシチュエーションに同じようなアクションを取り入れ、それが単なる踏襲にとどまっていないのも好感が持てるところ。ステラの愛車が前モデルのミニであるのには、思わずニヤリとさせられます。

 惜しむらくは、イタリアン・ジョブが冒頭だけで、舞台はすぐにロスに移ってしまいます。やはりイタリアの古都を走り回るミニでなければ、今ひとつ格好が付きませんね。もう一つ残念なのは、フルモデルチェンジされたミニが決して小さくはないことでしょう。ロスを走り回る旧ミニがより小ささを引き立てられているのに対し、新ミニは普通にとけ込んでしまっています。それでも、きちんとツボを押さえた本物のカーアクションは、小粋で迫力満点。周到な準備が一度ご破算になってしまう脚本に多少のつまずきと力押しがあるものの、このアクションを観るだけですべて許してしまいます。別物になってしまったとはいえ、やっぱりミニはボーイズ・レーサーなんですね。何しろ、出演者たちが嬉々としてミニをぶっ飛ばしているのですから。あれは絶対に演出じゃない素顔だと思いますよ。

 また、キャラクターのすべてに見せ場が用意されており、そのどれもが中途半端ではないのがまたユニーク。あんまり個々を押し出すと話が散らかりがちになりますが、誰もがきちんとひとつの目的のために組み込まれています。しかも、彼らを取り巻く裏社会もユニークに描かれていたりと、決して手を抜いていません。それだけに、メインはアメリカが舞台だったのが惜しまれます。

 決して大作とはいえませんし、壮大なテーマやスケールというわけではありませんが、小粋で愉快で遊び心があふれていながら、きちんと地に足をつけたストーリーは見ごたえ十分。あまり期待していなかったこともあってか、前作以上に楽しめました。遊び心といえば、とある爆破シーンでスパイダーマンがいたけど、ありゃなんだったんだろう。エキストラの偶然かな?

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