06/14 スイートホーム・アラバマ「メラニーは行く!」を観てくる。

 南部の田舎からニューヨークに飛び出し、新進気鋭のファッションデザイナーとして認められたメラニーは、市長の息子で富豪のアンドリューにプロポーズされ、まさにこれから幸せの絶頂へと突き進もうとしていた。しかし彼女は故郷アラバマでジェイクと結婚しており、彼は未だに離婚に応じないままでいる。ユーヨークでつかんだ幸せのため、過去に決着をつけるため、メラニーはアラバマへやってきた。しかし、ジェイクはいろいろと理由をつけては離婚届にサインをすることを拒否し続ける。そんなある日、昔と変わらぬ仲間たちの集まるバーで、メラニーは酔ったはずみにかつての友人たちを傷つけてしまった。しかも、翌日目覚めるとジェイクのサインの入った離婚届が枕元に。気まずい雰囲気の中、田舎の優しさ、家族の優しさ、友人の優しさ、そしてジェイクの優しさを再び感じ始めたメラニーは、複雑な心境になってゆく。そこへアンドリューがやってきて、しかもメラニーよりも先にジェイクと会ってしまい、メラニーの立場はさらにややこしいことになってしまうのだった。

 てなわけで二股ラブコメディーなのですが、せっかく面白くなりそうなシチュエーションをふんだんに盛り込んでいるにもかかわらず、どれも不発に終わらせてしまっているのが残念。この手のストーリーはオーソドックスに進めてしまうと結末を読まれてしまうので、もっとひねりが必要でしょう。にもかかわらず、メラニーの心を田舎に戻そうとするシチュエーションと、彼女が昔は悪かったというあまり意味のない説明に時間を割きすぎています。映画としてのコメディーは見せるものなので、いらんことをちまちまと説明してしまっては面白みがなくなってしまうのですよ。その分をジェイクとアンドリューの絡みと、クライマックスに向けてのメラニーの揺れ動く心情に裂くべきでしたね。

 もっと言えば、アラバマにやってきた、ニューヨークでのメラニーの仲間たちのカルチャーショックと、あっちの彼とこっちの彼(見ればわかる)のもしかして? なんてことをより色濃く描いていれば、コメディーとしてももう少し色が付いたんじゃないかな。そういう脇のシチュエーションと、メラニーたち主要な3人とが面白く絡むことも期待したんだけどね。まあ、本筋はそれなり、本筋とは関係ないコメディーには結構笑えました。

 それでもキャスティングは素晴らしく、偏見を承知で言わせてもらえば、メラニーを演じるリース・ウィザースプーンが、いかにも田舎から出てきて一花咲かせたという風貌で見事にマッチしており、ニューヨークではさほどではないものの、舞台をアラバマに移した途端に輝いて見えるのは見事。ジョシュ・ルーカス演じるジェイクも、パトリック・デンプシー演じるアンドリューも、いい人過ぎるほどに優しい男を演じています。そのほかのキャラクターのキャスティングと設定もセオリーにそっているとはいえ見事なのに、彼ら彼女らが引き起こすアクシデントに華が足りないのです。中盤まではもっともっとメラニーがまわりを翻弄し、クライマックスでもっとメラニーが翻弄されたらよかったのにね。まわりがあんまりいい人過ぎて、さほど翻弄されていないのが惜しまれます。

 ちなみに、アメリ女みたいな日本の宣伝は方向性が違うだろ、ポスターは嘘八百だし。確かに、メラニーがもっとわがままだった方が、ラストへ向けての厚みも出たんだろうけどね。ドラマとしての厚みがなく、結婚後たった1年で飛び出したメラニーの言葉には、観客への説得力が足りません。そんなわけで、枕につけた「スイートホーム・アラバマ」はこの作品の原題なのですが、それはそのままこの作品を現しているのでした。うーむ、共感できるようなできないような。女性のわがままは可愛いものですが、僕はもっとわがままで優しくないのでたぶんダメだな。

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