06/08 古壷新酒「ザ・コア」を観てくる。

 ある日突然地球の核(コア)が活動を停止しちゃったもんだから地磁気がなくなって、このままじゃ太陽風にあおられて人類が滅亡しちゃうぞというわけで、核爆弾を地球の中心へ持っていって何とかしようというお話。

 「アルマゲドン」の地底バージョンなどと侮ってはいけない。これは60年代のSF映画を現在の映像技術で作ったらこうなるという見本なのだから。というのは嘘で、とんでもない嘘八百のSF的考証(科学的ではないところがミソね)で書かれた三文脚本を、そのまま現在の技術で映画化したらこうなっちゃったのね、ほんとのところは知らないけど。それを無理に史上初とか革新的なんてふりを取り繕おうとしているところがまたたまらない。静電気放電なんていわんでも、雷でいいじゃないかよ

 クオーツ時計の心臓部が地磁気に関係なく水晶のピエゾ効果でクロックを刻んでいることを・・・なんてのは知らなくてもいいけど、家電品を普通に扱えるとか、懐中電灯の電池を交換できるとか、いやいや、カブトムシは乾電池で動いていないことを知っていればつっこみを入れられる大穴がボコボコ開いているんだな。これはSFとしての設定で大失敗。街のほんの一区画にペースメーカーをつけてる人が多すぎるというのは、科学的物理学的以前に演出の失敗。地磁気がなくなったらではなく、地磁気が極度に増幅したらそうなるであろうってパニックが多すぎないかい。興味のある人は、地磁気と携帯電話の磁力を調べてみよう。ただし、核心となる地磁気と太陽風の関係は合っているのでご安心を。

 クライマックスなんて爆笑ものだよ。高温の場所へ行くのだからなぜ最初から動力源の一部でもそうしなかったのか、しかし温度を動力に変えるとしてそんな簡単なことでいいのか、最後の動力源はどこにあったのかとか、それがあるなら違う手段があるだろうとか、もうワクワクドキドキ。核が停止する原因ってのも実はあるんだけど、もう突っ込む気力もないし、ドラマとしてはまあそれでいいんじゃないと思うしかないのでした。

 というわけで古い時代の設定にケチをつけても仕方がないことを抜きにすれば、あふれるB級テイストを楽しめる作品。どんな謎もポンポンと解けて、どんな障害もガンガンと乗り越えて、御都合主義だろうといわれようとも、停滞することなくテンポよく進む演出と構成がとにかく快適。ジュール・ベルヌやH・G・ウェルズ世代のSFファンならそれなりに楽しめるんじゃないかな。ハードSFに慣れ親しんでいると、設定の穴に憤りを感じると思うけどね。

 これで悲劇を連続して演出しようなんてせこいことしなけりゃ、もっと面白かったのにね。もう、徹底的にクルーを殺してやろうという意図的な設定と自己犠牲精神が見え見えで、悲しいどころかばかばかしくなっちゃうよ。唯一、死を直前にしてのコンラッド博士の「俺何やってるんだ」はよかったけどね。この博士、もっと独断専行だったらピーター・カッシングにせまれたかもしれないのになぁ、残念。

 そんなこんなで私としてはそれなりに楽しめたけど、この作品で決定的に欠けているのは夢と冒険と地底人だな。いや、マントル層の奥深くに水晶の空洞があった時には、否応なく変な期待をしたのだよ。そうそう、エンディングの後になにやらキーワードが出るから、途中で席を立ってはいけないような気がするようなしないような。

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