04/27 熱海の黙示録「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 栄光のヤキニクロード」を観てくる。

 ある日の朝、野原一家はあまりにも粗末な朝食のために荒れに荒れていた。しかし、厳しい家計を切りつめに切りつめ、最高級焼き肉の日を実現するための最後の手段と知り、狂喜乱舞の1日が始まる。・・・はずだったのだが、そこへ突然、一台の車が突入してきた。かくまって欲しいという白衣の男に憤慨するのもつかの間、その男を追ってさらに謎の男がやってくる。しかし、秘密は野原一家に託したという白衣の男の言葉により、野原一家はわけがわからぬまま謎の集団「スウィート・ボーイズ」に追われる運命となる。ひとまずはその場を脱した野原一家だったが、いつの間にか凶悪犯として全国指名手配され、懸賞金をかけられたことから世間からも追われる身となってしまった。とにもかくにも誤解を解くため、敵の本拠地熱海へ乗り込むことを決意し、散り散りとなりながらも「熱海の本拠地へ連行しようとする」敵の魔手を逃れ、「自ら敵の本拠地熱海を目指す」野原一家。果たして彼らは「敵の本拠地熱海」にたどり着き、夕飯までに「自宅のある春日部」に帰って焼き肉にありつくことができるのか!

 ん? 野原一家の行動原理が何かおかしくはないか? なんてことはおそらく意図的な矛盾なのでしょうからいいとして、何故うわべだけ「地獄の黙示録」の皮を被ってしまったのかが今ひとつしっくり来ません。確かに、ロード・ムービーとしてのスラップ・スティック・チェイスは、パワーとスピード、はったりとおバカさが満点で、実に見応えがあります。高枝切りばさみやスチームクリーナーを「人間に向ける」といった常軌を逸するしんのすけへの攻撃など、PL法あたりに引っかかりそうなほどに度を超している部分は気に入りませんが、まあ漫画だからできる演出と大目に見るとしましょう。問題は「地獄の黙示録」ネタで笑いをとろうという姿勢が、どう考えても対象とする年齢層に通じないであろうことは明らかなことです。そもそも「地獄の黙示録」が笑えない作品なので、これでは作り手の自己満足ではありませんか。

 いや、いいんですよ、作り手の自己満足でも、面白ければ。そして、きちんとまとめ上げていれば。

 始末の悪いことに、ラストのエピソードまでが「地獄の黙示録」を中途半端に模してしまい、オチとしてまったくつまらないものになってしまいました。本歌におけるカーツ大佐の存在感は、物語の最初から関わっているからなのです。本作のように、それまで存在の明かされていない黒幕がぽっと出てきて、唐突に自己紹介と目的の歌を歌われても、これまでの展開と話がかみ合わず、ちっとも面白くないのです。本作での野原一家はウィラード大尉にはなり得ないのです。いよいよ本物のクライマックスを迎えたというのに、まるで違う作品に差し替えられてしまっているのです。これじゃ子供騙しにもなっていないではありませんか。実際、劇場にわんさと集まったよい子もわるい子もほとんど反応していなかったぞ。ぶりぶり左右衛門のモブシーンが泣いているぞ。

 とまあ前2作はかなり特殊なのでさておき、それ以前のクレしん劇場版の足元にも及ばない作品になってしまいましたが、ロード・ムービーの部分が痛快だったことだけでも評価するとしましょう。春日部防衛隊のメンバーの葛藤と友情は一つの見せ場だったし、黒幕と華原朋美(しんのすけと絡まないこいつ何か意味があるのか?)以外のキャラクターはそれなりに見られたしね。一途な天城にはちょっとぐっと来るものがあったし、生活感のある下田にはホッとしたけど、ドラマとして成り立っていないのがもったいないな。ええいっ、今夜は焼き肉とビールだ!

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