04/25 悪い奴ほどよく眠る「シカゴ」を観てくる。

 煙草と銃の紫煙に煙る、1920年代のシカゴ。キャバレーというショービジネスのトップスター、ヴェルマ・ケリーは、夫と妹を射殺し、逮捕された。そんな彼女のステージに憧れ、自身もまたスターを夢見るロキシー・ハートもまた、浮気相手を射殺し、投獄される。名声を得ていたケリーは、有名な”汚れた”敏腕弁護士ビリー・フリンを雇い、獄中にあっても紙面を賑わせていた。しかし、ロキシーの弁護をそのビリーが引き受けたことから、ケリーとロキシーの立場が逆転してしまう。名声を求める女たちとビリーの欲望と確執と葛藤は、裁判というステージで最高潮を迎える。

 ストーリーだけを抜き出すと、ショービジネスをめぐるロマンティック・サスペンスのように思えますが、ところがどっこい、この作品そのものがショービジネス、キャバレーのステージで演じられる物語なのです。派手なステージとパフォーマンスは映画ならでは。かといって全編がミュージカルというわけではなく、ほどよくドラマが織り交ぜられており、これによってブロードウェイミュージカルは見事に映像化されているといえるでしょう。とはいえ、唐突に始まるミュージカルには、最初は何が起こっておるのだと、とまどいましたが。

 「ブリジット・ジョーンズの日記」でチチを売り物にしたレニー・ゼルウィガーのチチがないのは何故かなんてことはさておき、確かに可愛いセックスシンボルを好演していますが、童顔であることを抜きにして何かが足りないという印象が正直なところ。キャサリン・ゼタ=ジョーンズと並ぶと、そのパワフルさにどうしてもかすんでしまいます。個人的にはクイーン・ラティファにもうちょっとブルージーな、たとえていえばアレサ・フランクリンばりのステージを与えて欲しかったかな。もちろん、リチャード・ギアも変なおっちゃん・・・いやいや、派手で汚い弁護士を熱演。そんな中、ジョン・C・ライリー演じる、真面目でちょっと抜けたエイモスが、派手ではなくあまり見栄えのしないもののいい味を出しています。しかし、残念ながらどのキャラクターにも感情移入できなかったのでした。いやまあ、好みの女優がいなかったといえばまあそれまでなんですが。

 きらびやかで猥雑でコミカル、真面目で真摯なものを求めようとはしていないのですが、ショーのひとつにしているものの悲劇を盛り込んで流れを引き締め、心変わりの激しいマスコミと世相がそれなりの重さを感じさせています。まあ、ここで行われる裁判そのものがとんだ茶番なのだし、成り上がりサクセスストーリーなのでそんな細かいことは抜きに、セクシーで下品で見事なステージと、(おそらく誰の目にも予想通りの?)ドラマティックな展開を楽しみましょう。歌もダンスも見応えあり、特に女囚たちのステージが「クレイジー・ホース」っぽくてよかったね。くさくさした世の中、たまにはこういった作品で肩の力を抜くのもいいよ。

 さて、ちょっぴり揚げ足取り。といっても邦訳字幕なんですが・・・。「目が出ない」は「芽が出ない」ですな。その他、略しすぎとかもっと粋な言い回しだろうというのが散見されます。「キャッチ・ミー〜」でも直訳すぎるとか前後の単語使い(キャッチ〜キャッチ〜といったあたり)が活かされていないきらいがありましたが、わりと古典的な言葉のあやなので、へたに現代風に訳すことは無いでしょう。まあ、原語での言葉遊びを邦訳するのは至難の業なんでしょうけどね。でも、字幕フォントに古い字体を使えばいいってもんじゃないですよ。

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