02/11 仕事きっちり?「トランスポーター」を観てくる。

 愛車BMWを駆って積めるものならどんなやばい荷でも運ぶオヤジが、どうも生ものを運ぶのは初めてだったらしく、ついつい開封しちゃったもんだからマフィアに狙われる、前半カーアクション後半カンフーアクションの話。

 自分で自分にその道のプロならば当たり前のお約束をいちいち言い聞かせているようなやつは信用してはいかんのだ。というわけで、巻き込まれ型犯罪アクションのお約束をいちいち自分に言い聞かせて作ったら、こんなつぎはぎになっちゃいましたという作品にしか見えないあたりが悲しい。

 確かに見せ場としてのアクションはてんこ盛りなのですが、早回しコマ抜きジョグダイヤルぐりぐり視覚効果ベタベタハードロックがんがんなので、かえって疾走感とパワフルさが失われています。おまけに、はったりが効き過ぎて、ただのはったりになってしまった部分も多々あります。どこかで観たようなシーンの再現もいっこうに構いませんが、見せ方に工夫がみられず、既存のアクション映画をバラバラにつなぎ合わせた何かのCMにしか見えません、といったらCM作家に失礼か。しかもBGM(すでに劇伴ではない)の選曲もストーリーに関係なく映像にのみ合わせてしまったため、話の展開と曲の雰囲気がちぐはぐになってしまいました。冒頭でクラシックがかかるのでちょっと期待していたんですが、すでにMTVですらありません。

 また、マフィアの犯罪としての部分も腰砕け。確かにそういう取引は今でも行われているのですが、ちょっと無理がありますし、これをネタに深みを出しているわけでもありません。何よりもヒロインと香港マフィアの関係が、ありきたりといえばありきたり、ばかばかしいといえばばかばかしい。いや、どちらでもいいんですが、気の抜けたドラマには開いた口がふさがりません。キャラクターの粒の小ささは、ここらあたりから推して知るべし。脇役なんか、昔懐かしいベタベタの香港マフィアだよ、笑っちゃうよ。

 山葵、赤楝蛇ときて、「燃えよドラゴン」でも作りたかったのかね。いろいろな作品が混ざっているけど、最終的に思ったのはこれなんだな。まあ、あいかわらず五分刈りオヤジと小娘のラブロマンスってのがベッソンらしいか。作品を構成する要素がポップにもヘビーにもなれずに中ぶらりんな雰囲気となってしまい、今一つ引き込まれません。何しろ、ヒロインの存在すら忘れて暴走するクライマックスでは、何が目的だったのかさっぱりわからなくなってしまいました。というわけで、けっして面白くないわけではありませんが、私としてはどうしても酷評せざるをえない作品なのでした。

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