12/30 カオスワールド「マイノリティー・リポート」を観てくる。

 20年前に思い描いたようなハイテク機器がかえって古臭く感じられるのは意図的なのかどうか定かではありませんが、かつてシド・ミードが描いてきた世界観を踏襲しているであろうことは想像に固くありません。もっとも、毎度同じようなデザインセンスは、これがスピルバーグの理想か限界なのかと思えなくもないのですが。まあ、無線ネットワークが浸透しつつある昨今に、あのコンピュータ事情はないだろうと思えてなりません。というわけで未来社会に見るべきものが全くなく、複製不能という理由だけで使われる木の玉に失笑を隠せず、前半は睡魔との戦いになってしまいました。

 しかし、恐らくSFファンには不評を買いそうな後半のドラマの方が、私には見ごたえがありました。もちろん謎解きとしては弱いのですが、舞台をスラム街に移し、ようやくフィリップ・K・ディックの世界が広がりを見せます。深みのなさも、情熱のなさも、思い入れのなさも、ラストまでこれぞディック。ちょっと中途半端ながら、犯罪を未然に防ぐ社会における、忘れ去られてしまいそうな現場捜査の勘所が特に印象的ですね。それにしても、たった3人、実質1人の予知に全てを縛られる世界そのものが「マイノリティー・リポート」であり、未来予知なんかよりもずっとパラドックスに思えてなりません。世の中は混沌の中にこそ成立するものなのですよ。おっと、それよりも何よりも免職処分になったはずのIDはさっさと処分しようよ。

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