10/14 MTV吸血鬼戦隊ショー「クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア」を観てくる。

 ロックのリズムに100年の眠りから目覚めたレスタトは、自らロックシンガーとなって世界を我がものにしようとする。しかし、彼の歌声に反応したのは、市井に潜む吸血鬼たちだけではなかった。古代エジプトに血塗られた一ページを刻んだ吸血鬼の女王が、今蘇る・・・んだけどなぁ。

 吸血鬼の退屈と孤独と愛に飢えた悲しみ、いやそうやって自虐や耽美に浸るのはいっこうに構わないんだけど、この映画の中のどこにそんなものがあるというのか。出てくる吸血鬼はまったく持って退屈そうではないし、いつでもどこでもお友達と一緒でちっとも孤独そうではない。おまけにレスタトが大して美形ではないどころか、そろいもそろって童顔と不美人ばかり。女王アカーシャからしてまったく威厳が無く、ただのわがまま小娘にしかみえないのが興ざめ。幼少のみぎりのかわいらしさがみじんも残らないジェシーは哀れですらある。わずかながらその存在自体に興味を引かれるのは、吸血鬼マリウスとタラマスカのデイビッドぐらいだ。しかし、そんな見栄えのしないキャスティングを補うかのように、背景やセットなどの美術と映像にはかなり力が入っていると見えて、華美にならない程度の美しい絵作りはまずまず。もちろん、MTV以外の部分だけどね。何しろ、デスバレーで行われるライブステージは笑っちゃうしかない。吸血鬼同士で一波乱あるんだけど、まるで戦隊ショーだぞ。しかもただの宙づりアクションはダメダメだし、アカーシャの登場シーンなんてもう目も当てられない、アホかこいつら。会場の吸血鬼だけを浮き立たせる、MTV的な映像はよかったんだけどね。全編MTVの方が、開き直っていてすっきりしたかもしれないかな。

 まあ、過去のシーンに見応えのある映像があっただけでもよかったかな。違う意味で全編MTVを期待していたのは裏切られたけどね。そうそう、レスタトが吸血鬼の弱点の一つを克服するカットがあるからお見逃し無く。まったく無意味だし、その要因からしてずっこけること請け合いだから。ここの映像は末世的な雰囲気が抜群なだけに、実に残念。それともう一つ、レスタトが入ったロックグループのプロモーションビデオ、小さくしか映らなかったと思うけど、「カリガリ博士」のチェザーレの殺人を模したものがあるのもお見逃し無く。これはセットが一つしか出てこないけど、雰囲気は出ています。きっとスタッフに物好きさんがいたんだろうね。

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