09/23 必然という名の運命の逃げ口「サイン」を観てくる。

 ある朝、グラハムと弟のメリルは子供たちの叫び声で目が覚めた。子供たちの声を頼りにトウモロコシ畑の中を探しまわった二人は、丸く折り倒されたトウモロコシの傍らで呆然とする子供たちを見つける。グラハムたちはニュースで、この怪異、ミステリーサークルがペンシルバニアの片田舎にとどまらず、世界的規模で起こっていることを知った。しかしこの怪事の直後、飼い犬が凶暴化し、やがて一家の周りに何者かの不気味な足音が聞こえ始める。

 今時珍しい、大まじめに作ったトンチキSFは、電波系ドラマ仕立てのUFO特番といったところ。そこにあるのは当たり前の家族愛であり、感動するほど特別な感情は存在しません。メル・ギブソン演じる元牧師のグラハムも、大工だろうが小間物屋だろうが職業はどうでもいい背景設定なのですが、これが信仰を失った牧師という設定からして映画のヒットは神頼みなのではないかと穿った見方も出来てしまうあたりがまた愉快。地球に大挙してやってきたUFOにしても、劇中でグラハムたちが得られる情報以上のものを観客が得られないため、勢い余って地球侵略人類皆殺しに走ってしまいそうになります。しかし、ちょっと冷静に考えればその真偽が定かではないことが容易にわかろうというもの。実はこの作品、信じるか否か、調査か侵略か、オールオアナッシングの二極どちらかを選択しなければいけないという変な強迫観念が埋め込まれていると思われる節があります。それを押しつけられる観客はたまったものではありませんが、ついつい自分はどちらかと思ってしまう方も少なくないでしょう。

 という倫理観はさておき、どう考えてもおかしな設定のエイリアンとミステリーサークルに終始するこの作品、作り手の本質はバカ映画に違いないと思うのでした。エイリアンの弱点は大気中にも十分すぎるほど存在するぞ、そんなところに素っ裸でくるかおまえら?、今時のUFOは目視飛行なのか?、アルミホイルのヘルメットには矢追純一もびっくりだ!、婦人警官は言ってることがちぐはぐだ!、いきなりほえる犬にはびびったぞ、出たがりシャマランは出なくていいぞ!、とにもかくにも子役はすばらしかったぞ。最後に一つ、何じゃこの映画の後に配られる解析マニュアルは、巨大バッタだのミニクジラだのエイリアン大統領と会見なんて記事をでっち上げる新聞の方がよっぽどおもしろいぞ。あ〜、久々に笑えたバカ映画でした。・・・ちょっと感動したかも。

 僕の嫌いな観客インタビューCMが始まったので、ちょっと追記。この作品は、シャマランの過去の作品がそうであったように、誰しもが手放しに感動する要素で構成されています。ホームドラマとしてもSFとしても中途半端なことは否めませんが、前記の要素「子供、動物、病気、不幸」といった手段を使っているとはいえ、2時間きっちり見せる作りには感心してしまいます。ただし、これは決してほめ言葉ではありません。なぜなら、そういった要素を引っこ抜くと何も残らないからです。あ、宇宙人が残るような残らないような。

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