08/14 超幼稚園児の憂鬱と大衆の恐怖「パワーパフガールズムービー」を観てくる。

 ある朝、天才少年科学者デクスターは、体中に謎のぶつぶつが大量発生してしまうが、それは水疱瘡で、掻き続けているとなんとニワトリになってしまうというのであった・・・は冒頭に付けられた短編「デクスターズラボ・恐怖のニワトリ男」。ちょうど冷房で汗が引いてきたところへ、もうこっちまで体中むずむずしてきそうな作品。

 ゴッサムシティーのような犯罪のはびこるどこにでもある町タウンズビル。郊外に住むユートニウム博士の研究室ではサルのジョジョが暴れ回っていた。ではなくて「お砂糖とスパイスと素敵なもの全部」にちょっとした薬が加えられ、スーパーパワーを持つとってもキュートな女の子が誕生した。その3人、利発なブロッサム、内気なバブルス、オテンバなバターカップは幼稚園に通いはじめるが、友達と始めた鬼ごっこが高じてスーパーパワー爆発、タウンズビルの町をめちゃくちゃにしてしまう。街中から嫌われ疎外された3人は博士の言い付けどおりスーパーパワーを使わないことに決めるのだが、彼女たちの力を利用して町を支配しようとするジョジョにうまく丸め込まれてしまうのだった・・・。

 ハチャメチャなキッズ・アニメかと思いきや、異端として疎外されるものの苦悩や、虐げられ続けたものの怒り、大多数という集団の恐怖、弱者の暴力といった、スーパーヒーロー(ヒロイン)の影の部分が妙に浮き彫りにされ、こんなんで深く考えていいものかとふと我にかえりつつも考えてしまうやっぱりハチャメチャなキッズアニメ。ガールズたちの体組織はお菓子かいとかケミカルXって結局何じゃいとかおサルのモジョ・ジョジョたちは「猿の惑星」じゃなくてまとまりのない「猿の軍団」だろうなんて小さなことはこの際どうでもよく、超音速で空を飛び目からビームを出すガールズたちは無条件にかわいいのだ。この作品を楽しみにしている方がこんなサイトを見ているとは思えないのでそこはかとなくネタバレしてしまうが、ラストでスーパーパワーを捨てて普通の子供になろうとするガールズたちを、大衆は説得してパワーを持ったままにさせ、結局のところ体よく利用してしまう道を歩むのだ。情けないを通り越して怒りすら覚える結末である。かわいいガールズたちの深刻な悩みもわかるが、ジョジョたちサルの反乱こそが最も異端の悩みを表わし、感情移入できるといえよう。ところで、この作品に明らかに欠けているのがお母さんなんですが、テレビシリーズでは何かしらコンプレックスみたいなものが描かれているんでしょうか。まあ、「フランケンシュタイン」であり「鉄腕アトム」である、ついでに「猿の惑星」である物語なんでしょうから考えすぎかな。

・・・「猫の恩返し」よりもずっとおもしろかったぞ

戻る