06/30 知られざる世紀の大発見「ニューヨークの恋人」を観てくる。

 1876年のニューヨーク、建設途中のブルックリン橋建設公演を聞くとはなしに聞いていたレオポルドは、奇妙な小箱をもった男を見つけた。興味を持ったレオポルドはその男を追いかけるが、馬車に乗って逃げられてしまう。その夜、レオポルドは結婚相手を決めるパーティーのさなかに再び謎の男を見かけ、彼を追いかけてブルックリン橋の橋げたにやってきた。しかし、レオポルドは男と共にその高みから落ちてしまう。そして二人が現われたのは21世紀のニューヨーク。謎の男の正体は時間の裂け目を研究していたスチュアートであり、レオポルドは彼と共に125年余りの時を超えてしまったのだった。突然の出来事に戸惑うレオポルドはスチュアートの元恋人ケイトと出会い、お互いに惹かれ合っていくのだが・・・。

 おおげさなスラップ・スティックに発展することなく、登場人物を少なめに絞ったことも功を奏して、なかなか面白いライト・ロマンティック・コメディーに仕上がっています。タイム・スリップも超自然現象が原因ではなくちょっぴりSFタッチ、19世紀の街並みもしっかりと再現され、ただのコスチューム劇にとどまっていません。惜しむらくは、どちらのシーンも時間が短かったこと。時間の裂け目を計算で割り出すという世紀の大発見をしたスチュアートはわけあって中盤まったく姿を見せず、19世紀のニューヨークも冒頭それなりに描かれるものの、舞台はすぐに現代へ飛んでしまいます。

 19世紀の貴族レオポルドのカルチャーショックも見どころの一つのはずなんですが、これが意外にあっさりと現代に馴染んでしまうあたりは減点。トースターや食器洗い機など、終始それなりにユニークなシーンはあるのですが、肝心なラブコメの部分に最後まで生かしきれなかったのは残念でした。レオポルドを演じるヒュー・ジャックマンが、貴族の服を脱ぐと普通の兄ちゃんにしか見えなくて、終盤には、貴族的にも、タイムスリップという尋常ではない状況にも重さがなくなっちゃったってのも原因かな。さらに全編にわたって伏線もひねりもないオーソドックスな展開のため、期待以上でも以下でもないのも好みが別れるところ。せめて、現代のカットを切りつめてでもラストはもう一ひねり欲しかったね。ケイトは少しだけ時間をずらして飛ばし、小さくていいからもう一度出会いを演出したら、もうちょっと盛り上がったような気がするんだけどなぁ。

 メグ・ライアンはちょっと疲れたキャリア・ウーマンを演出するためか少々老け顔だったんだけど、こういうライトなラブコメに合っていて魅力たっぷり。しっかりしているんだけど、ふと手を差し伸べたくなる雰囲気がかわいいんですね。そういえば挿入曲にヘンリー・マンシーニの、というよりも「ティファニーで朝食を」の「ムーン・リバー」が使われていました。これはケイトとレオポルドの二人ではなく、レコードをかけている老人のシチュエーションにぴったりだったんですけど、もしかして「ティファニーで朝食を」へのオマージュ、それともメグ・ライアンをオードリー・ヘプバーンに重ねていたのでしょうか。どちらもステキな女優ですが、雰囲気はちがうような気が・・・。

 そうそう、いるだけで雰囲気がちがう、それほどまでに存在感が強かったのが、過去の執事、現代のアパートの管理人、オーティスを演じるフィリップ・ボスコでした。特別に活躍するってわけじゃありませんが、この人がスクリーンのどこかにいるだけで不思議な落ち着きが出ています。まあ、たまにはこういう映画もええでってことで。なんといってもイチャイチャ度は格段に低いってのがいいね。

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