06/01 フリークス賛歌「愛しのローズマリー」を観てくる。

 牧師であった父の遺言が原因で、外見だけで女性を判断するようになってしまったハル。しかし、どちらかと言うと醜男であり、調子外れなギャグも不発な彼は、理想的な美人に相手にされなかった。そんなある日、高名なカウンセラーのアンソニーと出会い、自分の追い求める女性像をさとされたハルは、アンソニーに心の美しさが外見に現われて見えるという催眠術をかけられる。その日を堺に、声をかける女性すべてにモテモテのハルは、一人の女性ローズマリーと交際を始める。彼女はハルの勤める会社の重役スティーブの娘でもあり、公私共に順風満帆。しかし、ハル以外の目から見ればどうにもおかしな事ばかり、何しろ美人指向だった彼の趣味がまったく逆になってしまったのだから。そして、ハルの親友マウリシオはアンソニーに会い、ハルの催眠術を解いてしまう。ローズマリーとの、それまでの夢のような生活と現実のギャップに悩むハルだったが・・・。

 発想もひねりも凡作なので、たぶん多少ネタバレがあってもさしつかえないと思いますから、小出しにレビューします。

 コメディーとしては爆笑というほどでもなく、映画としてもまとまってはいるものの、小品に止まっています。ことに、美人と醜女のギャップがはなはだしく、太っていることをネタにした映像にもインパクトがあるにもかかわらず、心の美しさや優しさの表現に、社会奉仕や慈善事業、医療に携わっているというだけでは押しが弱すぎますね。これは、ストーリーのほとんどがハルの行動を追っているというウィークポイントを克服できなかったからでしょうか。もっと催眠術後に出会う女性たち、せめてローズマリーの視点を追っていれば何とかなったのかもしれません。これはハルが悩み抜くラストも同じ。醜男ながらだんだん良い男に見えてくる彼に比べて、ローズマリーの良さを感じることができません。残念ながら、見た目のギャップにしか目が行きませんでした。オチもまぁ想像どおり。私自身、実際、心の素敵な方はたとえ見た目がどうであれ雰囲気に滲み出すものだと感じています。残念ながら、醜女のときのローズマリーにはそれが感じられませんでした。そもそも「ダイエットしても同じだから」と痩せる努力すら怠っているんですから、はっきり言って同情の余地なしです。

 また、マウリシオがアンソニーにハルの催眠術を解いてもらうよう頼む下り、ハルの仕事のことで嘘をつくのが許せません。後半、ハルのことを親身になって考えていなかったことに気づくのですが、それとこれとは別問題。マウリシオの行動に関しては時間と距離にどうしても合点が行かない部分もあるんですが、まあそれはいいとしましょう。ついでですが、マウリシオの身体的欠損?、あれは笑えませんでした。ここで気付いたのですが、表現が良くないかもしれませんが、この映画ってフリークスへの応援歌なんじゃないかと。ま、ラストではちょっとだけ笑えたかな。

 そんななかで唯一、これは子供をダシに使ったのかなぁと思われるんですが、小児病棟の下り、特に催眠術が解けた後のエピソードには心を打たれました。この作品で一番心の美しい出演者は、ここの子供たちです。

 まあ、ストーリーを抜きにすれば実にキュートな女性がわんさか出てきますから、目の保養にはなりますね。これでローズマリー役のグィネス・パルトロウの二役がもっと前面に出ていれば、どっちのローズマリーも最終的にはかわいく思えたと思うのに。そう、太っちょさんの彼女もスレンダーなグィネスが演じていたんですねぇ。エンディング・ロールでのアホなメイクは結構笑えます。ただし、エンディングロール後の映像、私には理解できませんでした。あれって障害者への、もしくは障害者からの何かのメッセージのつもりだったんでしょうか。

 コメディーとメッセージの折り合いが今ひとつ付けられなかったような印象はありますが、それなりには楽しめる作品でした。毒舌と下品さがかなり控えめなのが物足りないむきもあるでしょうが、私には好印象です。

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