02/04 おとぎ話は闇の中「ヴィドック」を観てくる。

 1830年7月24日、折しもパリに再び革命の風雲急を告げる中、新聞の見出しはヴィドックの訃報を伝えていた。怪盗転じて警察の協力者から探偵となり、落雷による奇妙な連続殺人事件を追っていた彼は、とあるガラス工房の奥深くで追っていた犯人にの手にかかったというのだ。ヴィドックの伝記を任されていた青年作家エチエンヌは、自身の書く伝記の中で事の真相と犯人を暴き、ヴィドックの復讐を誓う。ヴィドックの足跡を追うエチエンヌは、証言者たちの話から落雷によって殺された物たちに共通点があること、その裏に鏡の仮面をかけた怪人の伝説が絡んでいることを知るが、証言者たちは次々と連続殺人犯の手に落ちてゆく。そしてついに真相に迫るエチエンヌ、彼がそこに見たものはいったい何か、鏡の仮面の正体とはいったい何者なのか。

 というわけで何のかんの言いならが見てきましたよ。簡単に言い表せば、アブラぎったオヤジのドアップが不快極まる作品。まあそれはそれとして、めまぐるしいと聞いていた映像は「ムーラン・ルージュ」ほどではなかったし、アクションもカンフーという物ではなく軽業師といったところでした。もちろん、クローズアップが目に付きすぎる嫌いはあるし、ひたすら移動し続ける視点は落ち着きがなかったけどね。

 さらに、デジタル撮影された映像はあまりに手を加えすぎて実体感と現実味が欠け落ちてしまった。特に、トーンとカラーを落としすぎたためか、雰囲気をねらった落ち着いた色合いというよりもダビングを繰り返してボロボロになったといった印象が強く、意図的なのかどうなのか、粒状感の強い荒れた画質になってしまった。しかもね、CGとの合成が見え見えで、まるでゲームのような映像に仕上がってしまったのね。まあ、前述したカメラワークもフィルムワークも含めて、何となくゲーム感覚をねらっていたのかなって気はするんだけど。

 それ以上に、字幕を出す場所と文字の大きさが気に入らなかったな。字数を考えればもう少し小さくして文章と改行のつながりを良くし、左右への視点移動が激しい映像だから下に横書きするべきだった。それが左右両方に出された日にゃぁ、目が回るのも当然だよ。もっとも、字幕で見ることまで考えて映画を作るとは思えないんだけど、映像の作り手にももうちょっと工夫してほしかったね。フランス語がわからなければ、この作品の魅力は半減するんじゃないかな。もちろん、僕もフランス語はさっぱりわからないから忙しくてしょうがなかった。

 とまあ映像は狙いすぎてはじけてしまった感じはあるんだけど、作品としてはなかなかおもしろく、ものの見事にその術中にはまってしまった。回想によって事件を追うミステリーなんだけど、これが錬金術となったとたんにオカルティックになり、しっかりとホラーへと突き進んでくれるのね。こうしてはまってしまうとアブラオヤジどもの魅力倍増、向かうところ敵なしみたいな豪傑ヴィドックもさることながら、とつとつとポイントを押さえていく警官のドゼがまたいい味だしてるんだな。ラストのどんでん返しも含めて、シナリオの勝利といったところ。このラストにはやられたねぇ、途中から警視総督に目をつけていたんだけど・・・そう来たか。

 そうそう、銀仮面は「ファントム・オブ・パラダイス」というよりも「スクリーム」でした。アクションシーンでは思わず笑っちゃったよ。もっとも、ぐっと引いた目で見れば、7月革命で民衆はそれどころじゃなかったんじゃない?というパリの街は瓦礫の山なのでした。

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