01/20 臭い物には蓋をしろ!「フロム・ヘル」を観てくる。

 時は1888年舞台はロンドン、ホワイトチャペル一角に巻き起こる連続娼婦殺人事件。阿片を吸っては予知夢を見るアバーライン警部たちの捜査をあざ笑うかのように、警察に届けられた犠牲者の一部とそれに添えられた手紙にはフロム・ヘルの一文が。娼婦の一人メアリと浅からぬ仲になったアバーラインは、彼女からの情報をもとに捜査をすすめる。やがて浮かび上がった犯人像から捜査の手は英国王室とフリーメーソンに近づき、事件の核心は意外な方向に展開していくのであった。そしてメアリに忍び寄る殺人鬼の影、アバーラインは彼女を守ることができるのか。

 冒頭からたたみ込むような勢いにどうなることかと思ったら、すぐにしっとりと落ちついた展開になって一安心。チェコに作られたという19世紀末のロンドンのセットにプラハの古城で行われたロケも、実に雰囲気たっぷり。霧の立ちこめる石造りの街並み、ガス灯に浮かび上がる怪しい人影、これぞゴシックホラーという世界を、落ちついた色合いと引き締まった陰影の美しい映像で堪能できます。

 しかも、スラム街と娼婦たち、ことにヒロインであってもいたずらに美化することなく描いていることにも好感が持てますね。そのためか、全体的に人間関係が淡々としているようにも見受けられますが、それがかえって強かさや逞しさ、秘めた情熱や感情を表現しているようにも感じられます。これはとくにアバーライン警部を常に補佐しているゴッドレイ巡査部長に強く感じられ、いい味を出しています。

 とまあ雰囲気はすばらしいのですが、途中で事件の真相が見えてしまうあたりが残念でなりません。

 ですから中盤からの展開は謎解きミステリーから離れ、アバーライン警部がどこまで王宮やフリーメーソン、公安や警察上層部などの権力に立ち向かえるか、殺人事件を食い止めることができるのか、物語をどう締めくくるかが見どころになっています。殺人事件といえばストーリーのクライマックスのメアリ、これも実は事前に予想できちゃうんですが、真相は映画館でということで。

 ちなみに、本編とはあんまり関係ない部分なんだけど、ジャックなんかよりもギャングのマックイーンがいちばん怖かった。タクシードライバーとエルム街の悪夢を足したようなやつだったよ。そういえばギミックはこいつと馬車だけだったなぁ。あとは、とにかくガス灯とオイルランプにこだわっていたのが印象的だったし、妙にうれしかった。でも、さすがR15指定、ちょっとグロかった。

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