12/03 おジャ魔女忍玉学園「ハリー・ポッターと賢者の石」を観てくる。

 耳にするレビューがベストセラーとなった原作と比較したものばかりなのと、2時間30分という長丁場にはちょっとばかり不安があったけど、不明瞭なところなど全くなく、あっという間の150分。確かに詰め込みすぎの感はあるけど、押さえるところは押さえる、流すところは流すというめりはりの良さが、スピーディーながらけっして慌ただしくなることなく物語を進めています。なによりも原作を読んでいない私にとっては、しっかりと独立した作品になっているのがうれしかったですね。原作を読まないと理解できない映画なんて、はっきりいって愚の骨頂ですから。

 さてさて肝心な中身のほうですが、バイクにまたがった姿がどう見てもヘルズ・エンジェルスの親玉にしか見えないハグリッドの登場から突っ走っていたよ。ストーリーは意地悪な継母にこき使われるハリーが実は・・・ってな「みにくいアヒルの子」や「シンデレラ」みたいなものなんですが、この冒頭の意地悪家族の下りが陰湿になることなく、結構ぶっとんでいるのがよかったね。フクロウの大群と大量の手紙に怒って引っ越すんだけど、その引っ越し先には笑った笑った。ロンドンの魔法街からキングズ・クロス駅の一昔前の雰囲気もすばらしく、すっかりスクリーンの中に引きずり込まれちゃいました。

 ホグワーツでの出来事はいちいち書き出していたらきりがなくなっちゃうけど、学園物としてはベタなキャスティングとイベントばかりながら、魔法というファンタジックなスパイスがばっちり効いていてぜんぜん引くことはありませんでした。学校がディズニーランドのおばけ屋敷そのまんまってのには、いまいちなんだかなぁ〜だったけどね。ほうきにのったローラー・ボールみたいなクィディッチには、久々に体中に力が入ったよ。イジメも多少はあるけど、ハリーが自信満々なおかげで暗くなることもなかったしね。ま、なんとなくスター・ウォーズタッチなのをあちこちに感じたんだけどね。

 キャラクターといえば、なんといっても小生意気なハーマイオニーのかわいいことかわいいこと。この、先生に火を放つという大それたことをするおちゃめさん、ヲジサンは将来が楽しみだぞ。なんて危ない妄想はさておき、お笑いキャラかと思ったロンが意外なほど実力派だったのには驚いたね。命がけでハリーを助けるチェスのシーン、近ごろ流行のお涙自己犠牲主義とは一線を画した迫力があったよ。ハリーのヒロイズムだけに焦点を絞っていないのも好感触ながら、脇のキャラを立たせつつも散漫になっていないのがすばらしいね。

 とはいえこの物語はただの学園コメディーじゃなく、賢者の石を絡めて暗闇の部分との対決がクライマックスになっているんだけど、ここらはまあ見てのお楽しみ。久々に百聞は一見にしかずという作品でした。というか、やっぱりイベントが多すぎてかいちゃいられないってのが本音かな。

 そうそう、何かありそうなスネイプ先生、あのキャラのままだとベタベタだなぁ〜、実はそうじゃなっくってという設定だったらいいなぁ〜と思っていたら、思わずニヤリでした。でも、なんにもなかったというのはいまいちだったぞ。あと、白フクロウのヘドウィッグが活躍してくれたらよかったな。閲覧禁止の図書館に満足な鍵がかかっていなかったのは妙だぞ。イギリスの学園制度と寮制度、あんまり馴染みがないんだけど、そういうドキュメンタリーに見覚えがあってよかった。

 寮制度といえば、ラストで別に得点に結びつけなくてもよかったんじゃないかと思うな。確かにハリーは特別なんだけど、ちょっとえこひいきを感じちゃったよ。秘密秘密と秘密主義を押し出すわりにはばればれな所もあって、妙な言い方だけど魔法学校の管理体制の甘さがひしひしと感じられちゃうんだな。もっともこのあたりは、生徒の視点、同年代の子供たちの視線から見るべきものなんだね。大人の中でもハグリッドが強く描かれているのは管理社会に束縛されないアウトローへの憧れなんじゃないかなとか、校長が寛容でユニークなのはそれとは逆に管理社会の頂点への憧れとかさ。やっぱり大人の目から見た子供への憧憬を払拭することはできないんだなぁなんて勘繰っちゃぁいけないかな。がんばれ中堅!

 すでに続編が来年末に公開決定しているそうだけど、作りが雑にならないことを切に願うよ。この作品でもコマ飛びに2ヶ所気がついちゃった。これが編集で入ったものじゃなければいいんだけどな。で、原作を読む気になったかって? 今は「インスマス年代記」にはまってるから、読み終わってから考えるよ。とりあえず、空いている時にもう一回ぐらい観に行きたいなぁ。

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