11/15 空飛ぶカンフー三銃士「ヤング・ブラッド」を見てくる。

 場違いなワイヤーアクションに惨憺な評価はすでに知るところでしたが、密かに楽しみにしていた三銃士、なんだそんなに捨てたもんじゃないじゃん、結構おもしろいじゃん。思ってたほど空飛んでないし。

 復讐劇の要素と徹底した悪役演出のためにくっつけられたような冒頭は結構ハードだったけど、そこからの展開は程々のハードさとユーモアとスピード感を失わず、テンションはあがりっぱなし。何たって、酒場の剣劇立ち回りなんて早すぎて何をやってるのかさっぱりわからないし、全体にカットワークが細かすぎて、かなり落ち着きがない。もうちょっとしっとりとした進行にしてほしかったね。映像美はなかなかのものだし、カメラワークもアングルもさほど悪くはないだけにこれは残念。

 映像美といっても、町並みや宮殿のセットとロケーションは、かなりこぢんまりとしているのがちょっと気になったかな。当時のパリがどんなだったかは知らないんだけど、宮殿内はそこそこ豪華だったし、生活感漂う下町の雰囲気も良かっただけに、スケールの小ささは残念でした。森に囲まれた郊外も、街道というよりは田舎道だったしね。

 なんてフィルム・ワークとスケールに難はあるものの、銃士たちよりもダルタニアンに焦点を絞って散漫になることを控えたらしいストーリーは十分におもしろい。まあ、知名度の高い原作がおもしろいんだから、よほど無意味な脚色をしない限り大丈夫。三銃士の活躍がないに等しいのは寂しすぎるけれど、王妃とフランチェスカのじゃじゃ馬ぶりがいい味出しているからよしとしましょう。女優といえばカトリーヌ・ドヌーヴが出ているんだけどまあそれはさておき、子供からおばあちゃんまでみんなかわいくて品があるのが好感触でした。

 とワクワクしたのもクライマックス直前まで。敵を欺くにはなんとやらなんて必然性は感じられない展開と、いくらワイヤー使いたいからってそこまでしたら興ざめだよのラストは、せっかく盛り上がった雰囲気をすべて台無しにしてしまったぞ。ええい、くやしいからシーンだけネタばれしちゃえ。ここを覚悟してみれば、案外楽しめるかもね。

 何の戦略もなく城攻めをする銃士たちってのはまあよくあるパターンだからいいとしても、彼らの活躍はあまり描かれず、カメラはダルタニヤンの単独行動だけを追っちゃうんだな。ところがその肝心なダルタニアンの戦い、ロープをつたってのだらだらとしたアクションにはロープ切っちゃえばおしまいじゃんと誰もが思うだろうし、延々と長梯子の上ばかりで行われるファブルとの決闘はサーカスの軽業師みたいだし、手に汗握らないどころかどんどんバカバカしくなっちゃうのでした。ここは銃士らしく剣士らしく、地に足をつけてしっかりと構えた剣劇をやってもらわないとだめだよ。

 この一気に脱力してしまうクライマックスのおかげで、エンディングのすがすがしさも失笑気味だし、それまでのワクワク感もどこかへ吹き飛んでしまうのでした。おまけに途中の粗が後になってやけに気になってきたぞ。最後の最後で目的と手段をはき違えちゃったのだな。ほんと、傑作になり損ねたもったいない作品でした。

 そういえば、久しぶりにオープニングのタイトルロールが独立していたな。だからどうしたってた程度なんだけどね。

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