10/07 走る安倍晴明「陰陽師」を観てくる。

 夢枕氏のファンであることを加味して、脚本が秀逸ですね。映像化されても、冗長になる一歩手前で展開する行間の間のよさが引き立ってます。ストーリーの構成もうまく、けっして短編の寄せ集めに陥ることなくまとまっています。話の基本がすでにありますから目新しさが無くなるかなと思いましたが、再構築されたためにさほど気にはなりませんでした。

 加えて、カメラワークと編集も綺麗に流れています。これは見ていて不自然になったり疲れたりすることがなくてよかったですね。ほとんどをロケしたんじゃないかと思われる美術もまずまず。まあ、変に冒険せず無難にまとめているともいえますが、物語が古典なら主演も古典だからいいんじゃないかな。

 というわけで狂言師野村萬斎、どんな晴明を演じてくれるかと思いきや、こちらも思いのほか獏氏の描くスタイルをふまえていました。世俗から一歩離れたというか、人の道を降りたようなような所、少々キザというよりもすかした感じになってしまいましたが、なかなかよかったと思いますよ。ラストの立ち回り、ワイヤーアクションというよりもただの宙吊りはちょいとばかり間が抜けていましたが、身のこなしが華麗でしたし迫力もありました。

 この晴明と対極をなす芦屋道尊を演じる真田広之、こちらはまあ想像通りダンディですねぇ。悪役というには語弊がありますが、リング・らせんあたりで見せたイメージを引き継いでいます。ラストのほうでちょっと戸惑うあたりはご愛敬ということで。

 さて、ここまでは一見非の打ち所がないような作品ですが、実は粗が目立つのも確か。まずは密虫、今井絵里子がどうとかではなくて、晴明のオウム返ししかしないんじゃただのバカだよ。そして源博雅、これがまた地に足がついていないというか浮ついたというか、終始道化に徹してしまっているのが残念。青音と早良親王のラブロマンスには目をつぶるとしても、この二人の演出は残念でなりません。

 おまけに、珍妙なSFXには度肝を抜かれました。早良親王復活の場面なんて目も当てられませんぞ。生成りにいたっては、SFXどころか冗談のようなメイクだし、脚本がしっかりしていて見た目による状況説明なんか不要だったから、SFXは際立たせず、特殊メイクもほどほどにしといたほうがよかったと思うぞ。思い切って特殊効果はいっさい使わなくてもよかったかもね。

 あ、道尊のペットの変な鳥、これは見なかったことにしよう。あれは何かの間違いに違いない、きっとセサミ・ストリートの夢でも見ていたんだ、うん。もしかして式神・・・?

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