邦題 |
遊星よりの物体X |
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原題 |
The Thing |
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制作年 |
1951年 |
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制作国 |
アメリカ |
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制作社 |
RKO・ラジオ・ピクチャーズ |
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製作 |
ハワード・ホークス |
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監督 |
クリスチャン・ナイビー |
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脚本 |
チャールズ・レデラー |
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原作 |
ジョン・W・キャンベルJr |
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出演 |
ケネス・トビー |
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映像情報 |
87分/モノクロ |
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【ストーリー】 北極で掘り起こした異星人と、人間たちの戦い。 |
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【コメント】 アスタウンディング・ストーリーズ誌にラヴクラフトの「狂気の山脈」が掲載された年の翌年1937年、この、奇しくもラヴクラフトの没年に同誌の編集に就いたのがジョン・W・キャンベルJrでした。彼の作品「影が行く」は、1938年8月号にドン・A・スチュアート名義で掲載された作品であり、「狂気の山脈」にインスパイアされた作品でした。これらの作品の間には、南極を舞台に繰り広げられるはるか昔に地球にやってきた異世界の生物と人間との遭遇という共通のプロットがありますが、作品の持つ雰囲気は異なっています。「狂気の山脈」では邪神たちが待ちうけている極地に飛びこむ、邪神を前面に出しながらもじわっとした冒険譚であるのに対して、「影が行く」ではほかの生物に寄生し、吸収し、変身するエイリアンによる恐怖が、何が怪物なのかわからないというサスペンスタッチに描かれているのが特徴です。 1951年の映画化では、舞台を南極からアラスカに移したまではよかったのですが、怪物はつい最近落ちてきたばかりであり、人間タイプで寄生能力も変身能力はないという設定に変更されてしまいました。これにより原作の誰が怪物かわからないというサスペンスな部分が排除され、男くさいSFアクションに仕上がっています。このあたりは、メロドラマに無関心でひたすらにクールといわれていたハワード・ホークスらしい作品でしょう。しかし、有無を言わさずエイリアンを悪者と決めつけてしまうあたり、現代の感覚で見れば「地球という見知らぬ星に不時着した上に、凶暴な原住民に襲われた宇宙人の悲劇」という感は否めません。これはハワード・ホークスがユダヤ差別主義者であったらしく、しかも一九四〇年代後半からハリウッドを覆った赤狩りを反映しているのでしょうか。人種差別はラヴクラフトとホークスに共通する点ではありますが、ホークスの性格からして搦め手からじっくりと攻めるようなラヴクラフトの作品は性にあわないでしょうね。 |