フロム・ビヨンド

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深夜、黙々とコンピューターにプログラムを打ち込むティリンギャスト。それは部屋を埋めつくす計器類と、部屋の中央に設置された一台の共振器、リゾネーターにつながっていた。打ち込み終えたティリンギャストがリゾネーターのスイッチを入れると、その周囲はほのかなピンク色の光りに包まれ、深海魚のような生物が現われた。それは異界の扉が開かれた、次元の壁を打ち破ったのである。しかし、優雅に空中を漂っていた生物は、リゾネーターに歩み寄ったティリンギャストの頬に食らいついた。あわててスイッチを切ると、光は消え、生物も消え去ったのだった。

ティリンギャストはプレトリアス博士をたたき起こし、実験の成功を伝える。そして再び共振器のスイッチを入れたプレトリアス博士は、何者かの気配を強く感じた。しかし、コンピューターが暴走し、機械は全て勝手に動作してしまう。スイッチを切るよう叫ぶティリンギャストだが、まだ見ぬ神秘をこの目で確認するのだと博士は応じない。実験室は異様なエネルギーに満たされ、爆発するように窓ガラスが吹き飛んだ。

この物音を聞きつけ、眠りを妨げられた隣家の婦人。しかしこの騒ぎは今に始まったものではなかった。警察へ電話し、出動を要請する婦人だが、目を離した隙に飼犬のバニーがプレトリアス研究所に入り込んでしまう。

電話もそこそこに、恐る恐る犬の後に続いて家に入る婦人。そしてバニーと婦人が実験室の扉の前に来た瞬間、突然扉をあけてティリンギャストが飛び出してきた。婦人には目もくれずに家を飛び出したティリンギャストは、駆けつけた警官に取り押さえられてしまう。あとから悲鳴を上げて出てきた婦人がバニーがいないことに気づいた時、バニーは実験室に転がるプレトリアス博士のもとにいた。しかし、そのプレトリアスの体からは、首がねじり取られていたのだった。

気がおかしくなっていると判断されたティリンギャストは、分裂症として病院に収容された。そこで専門医のキャサリン博士に会い、実験の一部始終を話す。プレトリアスとティリンギャストの実験とは、松果体をリゾネーターの振動で刺激し、潜在意識の感覚、第六感を働かせようというものであった。実験は成功し、その結果二人は怪物を目の当たりにする。その怪物とは、次元が異なるだけで常に我々のそばにいるという。そしてその怪物にプレトリアスは頭を食いちぎられたのだと。

にわかには信じられないキャサリンは、ティリンギャストをCTスキャンにかける。すると、ティリンギャストの松果体が異常に肥大していることを発見する。これはリゾネーターの実験によるものではないかと考えたキャサリンは、ティリンギャストを退院させ、実験の再現を要求する。実験を拒むティリンギャストだが、病院から出るにはそれしかないとあきらめた。そして警察から派遣されたブランリー巡査長を伴ってプレトリアス研究所へ。

研究所に入った3人だが、ブランリーとキャサリンの隙を突いてティリンギャストが逃げ出してしまう。彼を探すブランリーたちはプレトリアス博士の部屋でSMに興じるププレトリアスのビデオを発見した。そして最上階の部屋、リゾネーターの実験室でティリンギャストを見つける。

ブランリーの提案で食事を取ったのち、リゾネーターを修復したティリンギャストはそのスイッチを入れた。そして再び、中を漂う位階の生物の姿を垣間見る。クラゲのようなそれに手を伸ばしたブランリーは、腕をかじられてしまうが、しかしそれ以上の驚きが彼らを待っていた。死んだはずのプレトリアス博士が姿を現したのだ。そしてプレトリアスは言う、死んだのではなく、異なる世界に移っただけなのだと。こちらの世界では肉体などは何の意味をなさないというプレトリアスの体は、みるみるうちに異形の怪物に変化する。銃を抜き発砲するブランリーだが、ティリンギャストがリゾネーターのスイッチを切ると、全てが消えてしまった。

これ以上実験を続けることを拒むティリンギャストと、危険を訴えるブランリーだったが、異常にこの実験に興味を持ったキャサリンは頑として実験の継続を要求する。それは、彼女の父が分裂症として入院させられ、一五年を病院で過ごした後、亡くなったからだという。松果体と分裂症の関係がこの実験で明らかになれば、多くの患者を救うことができると願ったからであった。しかし、その実験の結果破滅を招くかもしれないと危惧するティリンギャスト。さらに、命を危険にさらすわけにはいかないと、ブランリーはしばらく休憩してここを出ることに決めた。

しかし、二人が寝静まっている隙に、リゾネーターのスイッチを入れてしまうキャサリン。異変に気付き駆けつけるティリンギャストだったが、異常に興奮したキャサリンをおさえることができず、自分もまた興奮状態に。そしてついにプレトリアスも現われてしまう。プレトリアスにキャサリンを捕らえられ、リゾネーターのスイッチを切ることができなくなってしまったティリンギャストは、実験室を飛び出し、地下室のブレーカーをきりに行く。しかしリゾネーターの影響は地下室にまで及んでおり、ブレーカーの前には巨大な怪物がうごめいていた。ブランリーの奮闘も空しく、怪物に飲みこまれかけるティリンギャスト。しかし機転をきかせたブランリーがケーブルを引き抜き、キャサリンとティリンギャストは一命を取り留めるが、ティリンギャストは意識を取り戻さなかった。

これでも懲りないキャサリンは、怪物を呼び寄せたのは邪念をもってリゾネーターを動かしたからだと言い張り、再度の実験を要求する。さすがにこれを認めるわけにはいかないブランリーは、すぐに研究所を離れると身仕度するよう言い放ち、車の用意をするために部屋を出ていった。

帰る支度を始めるかにみえたキャサリンであったが、プレトリアスの部屋にあるSM器具から妙な気を起こし、クローゼットの中に見つけたボンデージを身につけ再び興奮状態に陥ってしまう。しかしティリンギャストにのしかかっているところに戻ってきたブランリーにたしなめられ、正気に戻った。

だがその時、リゾネーターが動きだした。なんと、プレトリアスがあちらの世界から手を下したのだった。意識を取り戻したティリンギャストとともにスイッチを切りに向かうが、無数の小さな怪物に襲われてブランリーが命を落としてしまう。そして現われたプレトリアス博士は、すでに人間の体をしていなかった。プレトリアスはティリンギャストを誘う、こちらの世界へ来るようにと。すると、すでにリゾネーターの影響を強く受けていたティリンギャストの額を突き破り、肥大した松果体が突き出てきた。なんとその状態で見る世界は、奇妙な光に彩られた美しいものであった。しかし、ティリンギャストもろとも異界に引きずり込まれそうになったキャサリンは、偶然手にした消火器をリゾネーターに吹き掛け、難を逃れた。

病院のベッドで目を覚ましたティリンギャストは、異常な感覚のままに食べ物を求めて院内をさまよい歩いていた。病室の前におかれた食事を口にするが、吐き出してしまう。そして病理実験室で見つけた脳にかぶりついているところを医者に発見される。だがしかし、彼を制止した医者の中に新鮮な脳を感じたのか、ティリンギャストはその医者に襲いかかり、眼窩にかぶりつくのであった。

そのため病院は大騒ぎになり、自身も異常者として電気ショックを受けそうになっていたキャサリンは隙を突いて逃げだす。そして駐車場から車で出て行く彼女の姿を見かけたティリンギャストは、一瞬正常に戻ったかのようにみえたが、そこへ入ってきた救急隊の一人を襲ってしまう。しかしもう一人に襲いかかった時に松果体が頭蓋に引っ込み、一時的に正常に戻った彼はその救急車であとを追った。

プレトリアス研究所にやってきたキャサリンは、リゾネーターに時限爆弾をセットする。しかし研究室を出たところで、ティリンギャストにつかまり、拘束器具につながれてしまった。再び松果体が伸びてきたティリンギャストはキャサリンに襲いかかるが、松果体を食いちぎられ、ようやく正常に戻る。しかしあちらの世界からリゾネーターを動かし、プレトリアス博士が現われた。プレトリアスを挑発し、その場を離れたティリンギャストだが、プレトリアスに首を食いちぎられ吸収されてしまう。

なんとかいましめから逃れたキャサリンは研究所から逃げだそうとするが、ティリンギャストの死体に驚き、リゾネーターの研究室に飛び込んでしまった。そこでプレトリアスに捕らえられそうになるが、プレトリアスの体を破ってティリンギャストが出てくる。プレトリアスとティリンギャストが争うなか、刻一刻と迫る時限爆弾の爆発時間。そして間一髪、プレトリアスから逃れたキャサリンは、窓から飛び出した。

爆発する研究所、怪我をおいながらもキャサリンは助かった。彼女を取り囲む近隣の住民の中に、あの隣家の婦人の顔も見えた。キャサリンは言う、彼が食べられた・・・。そしてキャサリンの泣声は、いつしか哄笑にかわり、炎に彩られた夜空にこだまするのであった。

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