BEFORE GET IN SLEEP

8.20
8月に入ってから、休みなしでぶっとばしていたので、さすがに疲れがたまっているようだ。今日はなかなか起きられず。昼過ぎになんとかベッドを這い出て、公園散歩。ピキヌーでカレー食べて、帰ってきたものの、何も手につかないまま、さらに昼寝。夕方、意を決して、学芸大学のスターバックスまで行って、ダブルトールラテでなんとか息を吹き返す。もう、これなしでは生きていけません、僕は。ほとんどドラッグに近い。
スタジオに行ったら、ほどなくYAMAUCHI来訪。僕がミックスする2曲目のインスト曲のデータを持ってきてくれたので、それをPRO TOOLSに取りこみ。取りこんだら、すぐにミックスしたくなり、始めてしまう。こないだのミックスがうまく行ったので、今日はお任せ状態。YAMAUCHIからはほとんどリクエストなく、「大丈夫そうですね」ということで、彼はヴィデオの編集に向かう。さらに、僕はひとりで黙々作業。 アナログ・シンセ多用のジャズ・ファンク的な曲なので、イアン・オブライエンみたいになればいいなと思って、空間作りにエネルギーを注ぐ。リヴァーブもディレイも使わない状態で、音像を立体的にする術が最近、少しづつ分かってきた。が、空間のことばかり考えていたら、ふと、オケのグルーヴを見失った。このあたりがミックスの難しさ。小音量で聞くことにして、リズムの組みをいちから検討しなおす。
数時間、作業して、ようやく気持ち良いところに来たので、今日はそこでやめに。細かいオートメーションなどは明日以後に。

8.21
台風来ないかな〜、と工藤ゆきみたいに(古っ!)思ったりするのは、普段、人間社会のことばかりで忙殺されきってるからかもしれない。だから、人間の手ではどうしようもないことが、空の彼方からやってきたりすることをどっかで待ち望んでいる。僕にもそういうところがあるみたいだ。
午前中からCDをいろいろ聞き、原稿書いたり、宛名書きなどの雑務したり。銀行行って、もろもろ振り込み。資金難に頭痛めつつ、今日もダブルトールラテで気を取り直し、スタジオに。昨日のミックスの続き。が、マックがトラブる。
トラブル・シューティングするうちに、アナログに出していたチャンネルのバランスが崩れたりして、またグルーヴを見失った状態に。YAMAUCHIとふたりでバランス取り直すが、どうも納得いかない。で、仮ミックスと聞き比べてみたら、どうも一部ファイルの音色が違っているらしいことも判明。作業は膠着状態に。
結局、ドラムトラックに絞って、バランスと音色を検討しなおし、グルーピングとコンプをやりなおして、ドラムだけでも聞いて格好良いオケを作ることにする。ドラム、ベースまで出来た時点で、今日の作業は終了。YAMAUCHIはヴィデオ編集の方へ。僕はそのヴィデオ・クリップ用の「樹海」のマスタリング。というのも、この曲、サイン波のキックがド〜ンと入っているので、そのままでは放送に使われた場合、ローエンドでリミッターを振ってしまい、ただでも大きいとは言えないヴォーカルがよけいに小さくなってしまう。なので、テレビやラジオで再生することを前提にローカットした上で、リミッターをたっぷりかけたマスターを作ることにしたのだ。
が、結構、これが難しい作業。ロー出さないと気持ち良くないし。結局、2種類作って、MAの時に聞きくべてみることにした。
夜更けにラフト・ミュージックの笹岡さん来訪。ママ・ミルクの新作を聞かせてもらう。リトル・クリーチャーズの栗原くんのプロデュース。前作よりもエッジが強く出た感じでめちゃめちゃカッコイイ。エゴ・ラッピンの森くんのマーク・リボーみたいなギターにも痺れる。
三宿の蕎麦屋で軽く飲んでから帰宅。台風は随分ゆっくり進んでるみたいだが、明日ぐらいには来るのかな?

8.22
台風の影響で、アポの変更があり、午前中からバタバタ。チボ・マットのマネージャーのデヴィッドと連絡を取り合う。午後、青山でデヴィッドとゆかちゃん、みほちゃんと合流。僕の旧友でもある某社のA&Rと軽いミーティング。みほちゃんからスモーキー・ホーメル(ベックのギタリスト)とふたりで作ったアルバムのCD-Rをもらう。
スタジオに行って、昨日のYAMAUCHIの曲のミックスの続き。ストリングスの音作りをしたら、急に雰囲気がよくなり、自分的にはかなり完成したと思えるところまで進む。夜、YAMAUCHIがやってきて、さらに作業。が、彼が参考用に持ってきたマッシヴ・アタックの曲は方向性、というより質感がまるっきり違う。僕はインナーゾーン・オーケストラやハーバートを聞きながらミックスしていたのだが、その曲は往年のビーチ・ボーイズみたいなアナログ・サウンド。でも、こういうのもアリと思ったので、頑張ってみる。グルーヴはもう十分に出ていたので、バランスを変えずに、全体の質感を変えることを試みる。テープエコーを多用。ドラムにも、ベースにまでかけてしまう。普段なら、中低域が膨らみすぎないようカットする帯域をブーストしてみる。ミックスしていると、ハイが足りないとか、ミッドローが飽和しているとか、整ったトータル・バランスを作ろうとしがちになるが、要は気持ち良ければいいのだということに、今さらながら気づく。ブライアン・ウィルソンもリー・ペリーもそれしか考えていなかったはず・・・などと考えつつ、結局、また数時間あ〜でもないこ〜でもないやるうちに、こんなミックスが自分に出来るんだと思えるものになった。モワーッとしているが、グルーヴは出ている。アナログ・シンセがすごく歌って聞こえる。
さすがに耳がそろそろ限界だったので、午前2時くらいに終了。CD-Rに焼いて、YAMAUCHIに家でチェックしてもらうことに。今日も働いたな〜。

8.23
日中は家で資料作りなど。夕方、YAMAUCHIのリリースに関して軽い打ち合わせ。最初のマキシ・シングルの発売日を10月25日に決定する。スタジオに行って、今日は朝日がとあるアーティストへの提供用に書いた曲のデモ・レコーディングをする・・・はずだったが、彼女が持ってきたデジパフォのデータはヴァージョン2.7のもの。スタジオのはまだ2.6だったのでファイルが読めず。曲の構成を検討し、4小節ヴァースを足すことを提案する。いろいろコード進行を試し、転調の仕掛けを作る。あとは週末に作業の予定。久しぶりに早く帰宅。

8.24
朝日新聞の試聴室選考会議。昔はニッパチと言って、2月8月はレコード出しても売れないというジンクスがあったみたいだが、今年の8月は話題盤の多いこと。ぶっちぎりのビョークに加えて、アニ・デフランコ、マックスウェル、メアリー・J・ブライジ、アッシャーなどなど、ひとりで十枚近く推薦。が、R&B〜ヒップホップは僕以外、聞いている選者がいないので、今ひとつ話は噛み合わず。あと、ビョークも絶賛は僕だけでした。ミュージック・マガジンに宮子くんが書いてたような感想が、コンサバなところなのかもしれないなあ。僕はいまだ、聞く度に、あまりの素晴らしさに、ただただ痺れて何もできなくなってしまう。
そういえば、ビョークの原稿をあちこちに書くことになったので、見とかなきゃマズイでしょってことで、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のヴィデオを借りては来たのだが、ついに最後まで見ることができず、諦めてしまった。何度もトライしたのだが、コレ、見終わったら絶対、うなだれるか、腹立つかのどっちかだろうと思ってしまったので、途中でやめるのが正しい、と思うことにした。劇中でビョークがミュージカルは最後の曲になると悲しくなるので、最後から2番目の曲になったら席を立つって、セリフを言っていたけれど、アレが監督のメッセージだとしたら、最後まで見ないというのも映画の見方としてアリだろうし。
スタジオに行って、おとといミックスしたYAMAUCHIの曲の直し。細かいフェーダー操作をYAMAUCHIとふたりで詰める。夕方に終了。コレでYAMAUCHIのアルバムで僕がミックスする曲は終わり。これはまた凄く勉強になったミックスだった。50トラック、60トラックのミックスも怖くなくったし。
渋谷に出て、PHATのダイスケと落ち合い、タラフ・ドゥ・ハイドゥークスのライヴを見る。面白かった〜。リズムの加速感、一瞬でリズム・チェンジして次に行く瞬間のカタルシスには、現代のクラブ・ミュージックだったり、ハードコアなロックだったりと同質の感覚があるとも思った。楽屋に行って、メンバーに紹介してもらう。ボストン時代、「ラッチョ・ドローム」のヴィデオを月に一度は見ていたというダイスケは、「あのジジイと日本で握手できることになるんて・・・」。帰りにふたりカレー食べながら、9月以降のレコーディング計画を話す。
スタジオに戻って、「GIRL'S TALK」帰りの朝日と昨日、読めなかったデジパフォのデータをあらためて検討。が、曲の構成に関してと、仮歌の発音に関して、ちょっとモメる。おまけに、MIDIタイムピースが故障。ヘンな音がMIDIデータに混じってしまい、作業できず。チキショ〜。なんだかんだと喋っただけでおしまい。作業は週明けに再度やることに。

8.25
夏休み最後の週末かあ。プール行きたいが、なんだか疲れていて、家でゴロゴロ。ビョークばっかり聞いている。近所のスタジオでやっているYAMAUCHIのミックスにも顔を出せず。夕方、クアトロに。今日明日はカーネーションのツーデイズ。ビキニのレコードを即売させてもらう。共演はHARCO、カーネーションのゲストはニノ・トリンカ上田くんってことで、知り合いの多いイヴェント。売れゆきもまずまず。
三茶のお気に入りのカフェで珍しくひとりで飲んで、帰宅。今年後半のスケジュールを見直す。10〜11月に「SEA OF MEMORY」コンピレーションとYAMAUCHIのデビュー・マキシ、PHATのセカンド・ミニ・アルバムを続けて出し、12月にはタイスケ・マツオのフル・アルバムを。SAKANAと朝日美穂も年内に何か出したいし、岡村トリビュートでも何曲か制作に関わらねばならないだろう。他にもやりたいことはいろいろ。体力勝負だなあ。
ところで、駒沢のピキヌーに雑誌の切り抜きが貼ってあって、その中でピキヌーの店主がいいことを言っていた。いわく、よく、生まれかわったら何になりたいかって質問をするけれど、自分はもちろん、次もカレー屋をやっている・・・みたいな。僕もたぶん、そうだな。たくさんレコード聞いて、たくさんレコード作れれば。

8.26
疲れがピークなのか、首、肩、腰がバキバキ。そんな時になぜか、オーディオのセッティングが気になり、家にある3セットのスピーカーを全部移動。ベッドサイドのセット用のALRジョーダンをATCに換えて、LEAKのチューブアンプで鳴らしていたATCを自作SPに代えて、仕事用のメインセットをALRジョーダンに代えた。ベッドでごくごく小音量で聞くセットに一番高価で一番大きいATCを使い、たっぷり設置スペースのあるメインセットにALRジョーダンのちっこいエントリーSをちょこんと載せたのだが、これが結構良い。ATCの音は圧倒的に落ち着くし、エントリーSはきちっとしたスタンドに載せて、パワー入れてやると、想像以上に鳴る。ローもYAMAHAの10Mくらいは出るし、ステレオ感がよく見渡せる。しばらくはこれにしてみよう。
近所のスタジオでYAMAUCHIのミックス最終日。ハウス・エンジニアの吉光さんは先日の間瀬さんの繊細でハイファイな感じに比べると、ラフでザックリした太さを出すタイプみたいだ。ミックスするうちに、ヴォーカルの聞こえ方が、仮ミックスにあった手作り感からちょっと遠くなりすぎた気がしたので、そこだけ注文させてもらう。サウンドに関しては、YAMAUCHI本人がセルフ・プロデュースできるので心配なし。
一度、帰宅して雑用を済ませた後、またスタジオに。YAMAUCHIサポーターのガンちゃんとCDのクレジットなどの詰め。それから渋谷に向かい、昨日と同じく、カーネーションのクアトロで物販。それから自分のスタジオに。
行ったら、デモCD-Rが1枚届いていたのだが、これがとても良かった。デモは最近は週に1本くらい来る。来れば必ず聞きはするのだけれど、申し訳ないが、すべてに返事を書くことは無理だったりする。送られてきたデモを聞いて、レコードを作りましょうということになったことも、実は一度もない。二度ばかりデモを作ったことがあるぐらいか。でも、今日のデモは二度も聞いてしまった。アッと驚くような音楽ではないのだけれど、すごくムードがある。カヴァー曲が心憎い。おかげでちょっとなごんでから、少しだけ作業。
深夜、YAMAUCHIのスタジオに戻ったら、2曲目のミックスは意外に早く終了していた。といっても二時は回っていたが。これでアルバムはほぼ完成。「でも、意外に達成感ないんですよ」とYAMAUCHI。もう次のことを考えているみたいだ。僕がミックスした2曲目のインストをCD-Rに焼いていったので、スタジオのジェネレックのラージで聞く。うわっ、サイン波のキックがドカ〜ンと出すぎか? でも、10Mで聞いたらバッチリのバランス。マスタリングでスーパーローエンドだけ締めれば良さそうだ。YAMAUCHIも「ベースの聞こえ方が気持ち良い」と大満足。僕は達成感あって、ベッドに直行。爆睡。