BEFORE GET IN SLEEP

7.23
朝からJ-WAVEで「だいすき」が流れていて、めちゃめちゃ気分がいい。オレ以外、誰にもできないアレンジとミックス! ラジオで聞いてもすべてが完璧なバランスだった。なんで、オレはビョークのプロデューサーに抜擢されないんだろう?ってぐらいの気分で公園散歩。馬鹿だねえ、曲がラジオでかかったぐらいで。
午前中はHPのリニューアル。MEMORYLABとビキニとSAKANAと・・・少しづつ更新。ビキニのCDを含め、MP3でたくさんの曲を聞けるようにした。
渋谷で上田(禎)くんと鹿島くん、それに某音楽出版社の重役の方とミーティング。内容は内緒。いろいろ話すうちに、レーベルをやっていく上での自分の姿勢というのが整理できた気がした。
J-WAVEへのプロモーションは先週で一度、終了したつもりだったのだが、曲がかかり始めたので、今日もまた行くことにする。旧友のディレクターのロッカーの前にアナログ盤を貼りつけてしまう。何人かに本チャンのCDを渡して、雑談する。さらなる手応えあり。
しかしまあ、やっていることは矛盾しているなあと思う。朝日美穂がこんなにラジオで好反応を得たのはインディー時代の「FRIENDS」以来だろう。あの時も同じような草の根プロモーションをしただけだった。
その後、ソニー時代はメジャーの宣伝力を借りて、エアプレイを取ってはいたけれども、結局、本物の手応えが返ってきたのはインディー・デビュー時と今回なのだ。ラジオ・ヒットが必要とされるメジャー時代には、彼女と僕は「THRILL MARCH」のようなアブストラクトな作品を作っていた。それがインディーに戻ったら、こうやって草の根プロモでもエアプレイを獲得できるキャッチーな作品を作っている。なぜなのかは、よく分からない。シングルを作れ、と言われても、ソニーでは作れなかった。が、「FRIENDS」と「だいすき」はシングル的な機能をきちんと意識して作ることができている。皮肉だが、ともかく、そういう流れなのだ。
渋谷でソニー時代に一時期、A&Rチーフだった人とすれ違う。言葉少なに挨拶だけで立ち去っていった。今回、ソニー時代のスタッフが少なからず、協力してくれているが、ほとんどの人がどこか後ろめたそうにしている。実際、ソニーはたくさんの約束を破り続けた末、契約書の文面だけを盾にいかにも会社的に物事を処理してくれたので、後ろめたくて当然だろ!ってとこはあるのだが、なんだかな〜。どんどんダメな会社になっていくのが見えるのは淋しいものだ。一緒に仕事した人達は仕事した人達なわけだから。
そういえば、タワーレコードの渋谷店が「だいすき」と一緒に試聴機に入れようと「THRILL MARCH」をオーダーしても一向に入らないという。生産完了なのか。それならそれで、そういうアナウンスがあるべきだが。「ONION」は世の中に3万枚くらいあるから、今後も中古で入手可能だろうが、「THRILL MARCH」はそんなにないし、手放す人も少ないだろうから、早晩、入手困難になるかもしれませんね。「ジム・オルークが絶賛した幻の名盤」になるなら早くなってくれとも思うが。
渋谷でPHATのダイスケの車にピックアップしてもらい、スタジオに行って、26日のレコーディング用の機材積み込み。それから、ダイスケがうちに来て、ふたりでビョークの新作を聞く。ホントはまだ家じゃ聞いちゃいけないはずの音源だが、とある筋から入手。あまりの素晴らしさにふたりで痺れる。まだまだ修行必要だなあと近所のラーメン屋でビール飲みながら話す。
江口寿史さんのHPに日記がアップされたので読む。読むうちになんだかしんみりしてしまった。僕のような凡人に天才、江口寿史の苦悩が分かるなんて言ったらおこがましいとも思うが、少なくとも状態としては、僕が何年もの間、原稿が書けずにいるのとまったく同じ・・・・二時間で出来ることが、なぜ、何週間も出来ないのか、オレにだって分からないのだ。でも、そんな僕だったから、江口さんの原稿が取れたのかもしれない。
日記には僕のことも書いてあった。「昔ミュージックマガジンを愛読していた頃、数あるレコードレビューの中で高橋さんの書いたものが1番好きだった」。僕は二十代の頃、マンガを十数誌精読していた時代があるのだが、一番好きだったのは江口寿史だった。すべてのセンスが凄まじく好きだった。不思議なものだ。今になって、こんな縁ができるなんて。
彼がビキニのCDを誉めてくれているのも、とてつもなく嬉しかった。ま、誉められて当然の内容だとは思うけれど。しかし、同世代ということもあるのか、あちこちに頷くことが書いてある。最近、AORが聞きたい。うんうん、その通り。今度、会う機会があったら、デヴィッド・ミードのCDをプレゼントしよ。

7.24

ビョークの新作を繰り返し聞く。こんなに透明で、かつ、こんなに重い音楽を聞いたことがない気がする。分子レベルまで美しい結晶になっているように思える音盤。聞けば聞くほど、打ち返す言葉がなかなか見つけられない。
見つけられないまま、アーニー・ディフランコの新作をカセットで聞いたら、これがまた、グ〜の音も出ません。たかだかスピーカーから流れる音を聞いているだけなのに、どうしてこんな、身動きもできないくらいに、彼女の世界に捕らえられてしまうのだろう。生々しさがともかく凄まじい。ラフな録音のようでいながら、隅々にまで、彼女の強烈な意志が張りめぐらされているのも分かる。
実は今日はふたつ、レコード・レヴューの仕事を抱えていて、他にもいろんなCDやカセットを聞いていたのだが、どちらのレヴューも今回はセレクションの中に邦楽を入れることが出来なかった。話題盤がないわけではない。が、とてもじゃないが、****や*******をビョークやアーニー・ディフランコの隣に、いや、デヴィッド・ミードやケイクの隣にすら置く気にはなれなかった。
近年、僕は日本の音楽をたくさん聞くようになり、しばしば、日本の音楽が面白いという発言もしてきたと思うのだが、でも、最近のJ-POPを聞いていると、あまりにローファイ(音だけでなく精神的に)というか、目線が聞き手と同じ・・・・でなければ売れないのかもしれないけれど、同じになり過ぎて、聞く側のイマジネーションの限界を越えるような音楽が少なくなってしまった気はする。ある意味、メジャーの莫大な予算を使いながら、インディーでも出来るような音楽をやっている人達が多いような。そういうものの方が売れるから、いきおい、メジャー・レーベルもそういう音楽ばかり作るようになって、夢が低い、というか、低い夢もあっていいと思うけれど、高い夢を見ることができない。
でも、もっと誰も到達していないところに届こうとする音楽がないと、この文化自体が衰退してしまうんじゃないだろうか。携帯電話に負けるってのもそういうことだろうし。めざすならマイルスやプリンス、ジョニ・ミッチェルやビョーク、ジェフ・ミルズやエイフェックス・ツイン。PHATのダイスケなんかは、音楽っていったら、そのレヴェルしか見ていないから頼もしいのだが。
とまれ、そんなことまで考えてしまうほど、凄いです、ビョークとアーニー・ディフランコ。なんだか、デカイ壁が目の前にそびえたったような気さえする。だって、音楽作品を作ろうとするからには、ここまでやらなきゃ嘘だろうから。なんか、やる気出てきたぞ。が、その前にまず原稿書かなきゃ。

7.25

ビキニのCDの発売日。レコード店事情に詳しい人は発売日の前日の夕方には商品が並び出すのを知っているから、昨日ぐらいから探してくれていたようなのだが、なにしろ、プレス会社からディストリビューターの倉庫に入ったのが23日の朝。それから値段やバーコードのシールを貼って、全国の店に出荷して、25日に店頭に並ぶなんてのはやはり不可能でした。それでも今日の夕方には渋谷のタワレコなどには並んでいたらしいが。皆様には本当にご迷惑をかけました。ペコリ。
昨夜からの原稿がまだ終わらず。午前中から必死でやるが、出掛ける時間までに終えられず。エレアコとストラト抱えて、駒沢のスタジオで朝日美穂バンドのリハ最終日。今回のライヴはリズミックな曲中心で、アレンジも極力シンプルにしてあるので、三度目にリハにして結構、余裕ある状態。6時間リハのはずが5時間で終了。しかし、北村くんを含めたバンドの演奏力が充実してきただけに、ひとり、自分の力量不足が目立つなあ。ともかく、着実に役目を果たすように心がけよう。
帰宅後、少しだけ寝て、明け方からまた原稿。

7.26

銀座で朝日新聞の試聴室選考会議。今月はやはりタマが少なく、なんとか知恵を絞って、十枚を埋めた感じ。そうそう、アーニー・ディフランコの新作は今月、ユニヴァーサルから日本発売される予定で、アドヴァンス・カセットまで来ていたのに、発売中止になったそう。フジ・ロックに来るというのに。でも、来月、ビクターから出るようだ。
J-WAVEに届け物ついでにまたプロモーション。スガシカオの「アクロス・ザ・ヴュー」で「だいすき」がかかりそうという情報ゲット。スガさん、熱烈な岡村ファンだもんね。
スタジオに行って、まだこぼれている原稿を書こうとするが、もろもろ雑用に追われて果たせず。新宿タワーレコードでのインストア・ライヴのための機材搬出。朝日とふたりでタクシーでタワレコに向かい、機材を運びこむが、僕は直枝さんに挨拶したところで退出。品川に向かう。
品川ではPHATのストリート・ライヴ。港南口の階段下に、あたかもストリート・ライヴ用に作られたステージのようなスペースがあり、そこで演奏。それを僕とSCOTTがハードディスク・レコーダーで録音する。セッティングは去年の暮れに渋谷でやったストリート・レコーディングと同一。渋谷に比べると、ナチュラル・リヴァーブがないのがちょっと淋しいが、それでも十分なクォリティーの音は録れた。
観客は「オーガニック・グルーヴ」から流れてきた感じのジャム・バンド・ファンもいれば、偶然、通りかかったサラリーマンやOLもいる感じ。スケボーしながら聞いてる奴もいれば、年配のスーツ姿のおじさんがひとりで踊っていたりもして、なんだか面白い。渋谷に比べると、テンションは低く、レイドバックしているけれど、僕は結構、場所が気に入ってしまった。
近くの中華料理屋で軽く打ち上げ。途中から激論。もちろん、音楽に関してなのだが、ちょっとシリアス過ぎるかもなあ。音だけでコミニュケーションしなければいけないPHATのようなグループはそうなりがちなのかもしれないが、もうちょっと、それもアリだけれど、これもアリ。どっちも笑えるみたいな風に出来ないのだろうか?などと考える。
帰宅後、また原稿。あ、ネットを覗くと、タワレコのインストアも面白かったみたいだな。いろんな人が来てたみたいなのだが、会えなくて残念。

7.27

あまりの細切れスケジュールのため、原稿遅延。本来は立ち会いすべき様々な事柄にも、身体がひとつしかないので、欠席多し。連絡悪いという苦情多数。困った。
午前中からあれこれ頑張るが、あれこれ終わらず、タイスケマツオとの約束があったのを思い出し、慌てて出掛ける。スタジオでタイスケのためにPRO TROOLSの基本セッティングをして、後は彼に任せる。JASRACに行って、岡村靖幸トリビュートとさかなの再プレス申請。発売二日目でイニシャルの50%の枚数をプレス会社にリオーダー。だったら、最初からもっとプレスするんだったと後悔。でも、今は自宅が倉庫化しているので1000枚以上もストックを置くのは辛いのだ。
渋谷の東急ハンズで通販用の梱包材を仕入れて、一度、帰宅。もろもろ雑用。夜遅く、新宿に出て、閉店間際のタワレコから昨夜の朝日/直枝のインストア・ライヴに使った機材搬出。タクシーでスタジオに戻り、PRO TOOLS開いて、30日のライヴのためのCD-R作り。1曲カラオケを作るだけなのだが、ライヴ用にリズムをやや派手にしたり、後半、抜き差しのあるリズム・ブレイクを作ったり、いろいろやってしまう。
夜中一時頃、朝日がやってきてカラオケ確認。それからふたりで渋谷のエッグサイトに。直枝くんの出演するオールナイト・イヴェント。朝日も1曲ゲストで出るのだが、なんと出番は4時。ヒックスヴィル、高橋徹也くんなど、出演者には知り合い多し。ブラウンノーズ1号2号と初対面。いろんな人が飛び入りするラフなイヴェントで、昔のアメリカのコーヒー・ハウスでのフォーク・イヴェントってこんな感じだったのかなと思った。すごく和やかなで良い空間でした。煙くなかったのもいい。
あと、直枝くんの弾き語りソロ・ライヴはギターが良いのにビックリ。あんな風にざっくりギターが弾けたら気持ち良いだろうなあ。ニール・ヤング好きがよく分かった。カーネーションの曲、岡村カヴァー、最後の方にやった新曲も夜更けに聞く感じにピタリでぐっと来た。
で、僕の仕事は終演後(朝5時!)からの物販。エッグサイト出口の明るくなった空の下に机を出して、ビキニのCDとアナログを販売。これが売れる、売れる。半数以上の人がアナログ、CD両方買ってくれました。アナログは江口さんのフルサイズのイラストと初回限定というのが効くみたい。
さすがにドヨ〜ンと疲れ果て、朝まで遊んだ若者達にまじって、東横線に乗って帰る。フツ〜、オレの年代なら釣りやゴルフに出掛ける時間かも。いやはや。

7.28

昨夜の疲れもあってか、ほとんど一日、何もできなかった。今日のうちにやっておいた方が良いことは多々あるのだが、なんとなくベッドでゴロゴロ。ちょっとだけ公園散歩。久しぶりにLEAKの真空管アンプに火を入れて、ローラ・ニーロやリンダ・ルイスを聞いたり、テイラーのギターをつまびいたりして終わる。しばらく触ってあげなかったら、テイラーちょっと鳴らなくなっているような。
公園だけは近いけれど、コンビニに行くにも10分近く歩かねばならない今の環境は、静かにしていると、フッと世間が遠くなる。自由が丘の街まで行くだけで、山から降りていくような感覚だったり。マンションの最上階に住んでいるのも関係しているかな。
で、そういうフッと世間が遠くなった一瞬に、いろんなことがフッと過去になる。毎日、毎日、様々な物事と格闘しているわけだけれど、すべての物事はやろうと思ったらキリがない。音楽はレコードになってしまえば、文章は本になってしまえば、諦めがついたりするものだけれど、そうやっていろんな物事を過去にしていかないと、次に進むのは難しい。深追いをやめることだって大事。なんてことを今日はちょっと考えた。

7.29

涼しいのはいいなあ。珍しく自由が丘まで歩いて下っていった。
サンガワでカレー食べてから雪谷へ。一昨年まで住んでいた街だが、駅前にあった雑居マーケットがなくってしまい、1階がスーパーのマンションになってしまっていた。終戦後からずっとある感じの古いマーケットだったので、いつかはなくなるだろうと思っていたのだが、中にあった八百屋や魚屋や総菜屋がぜ〜んぶなくなってしまったのには愕然。僕が住み出した頃には駅前に魚屋が5件もある街だったのに。
雪谷に行ったのは、馴染みの自転車屋を覗きたかったからなのだが、今日は休みでさらにガックリ。電車に乗って実家に向かう。「選挙に行く」というと、母親が「あんたが行くなんて、初めて聞いた」。このやりとり、もう何十年と繰り返しているのだが・・・。投票所はあまり人がいなくて、投票率はどうなのかな?と思う。
家に戻って、あれこれ雑用。ビキニの通販の宛名書きを根性入れてやる。驚いたことに、もうアナログを100枚、通販で売ってしまった。店頭は一瞬で売りきれて、見かけないという。ジャケットいいもんね〜。実はアナログの音を僕も昨日、初めて聞いた。CDよりはるかに良い音だった。もうちょっと定価高くすれば良かったかな。なにしろ、この25センチ盤は全部売り切っても赤字なのだ。ポスター作るかわりにアナログ作ったつもり。
三軒茶屋の郵便局に行って、エイジアン・マーケットでまたカレー。今日は2-2・・・って、夏の間、僕のカレー食す率はイチローの打率をはるかに越えているね。
スタジオ行って、一昨日作ったライヴ用カラオケを作り直す。昨日、朝日と郷太くんがリハしたところ、後半のエディット・パート、特に4つ打ちドラムとチョッパー・ベースだけになるリズム・ブレイクを郷太くんが気に入ったので、もっと長くして欲しいという依頼。ココ、カッコイイどころか、めちゃめちゃカッコワルイんだけれど。80年代前半、リミックスなんて文化ができる前の12インチによくあったエクテンディッド・ヴァージョンって感じ。さすが、マイケルやワム好きの郷太だなあ。
さらっとエディットしなおして、CD-Rに焼く。そういえば、涼しくなったらマックは快調。さらに驚いたことに、こないだ壊れたと思った電源ディストリビューターも正常動作するようになった。全部、暑さのせい?
帰宅後、ストラトキャスターの手入れ。こないだペグをゴトーのロック式に換えたのだが、ロック式の弦の張り替えを自分でやるのは初めてだったのでちょっと戸惑う。でも、おかげでこのストラトはチューニングがすごく安定し、ライヴでも使えるようになった。なぜか、このギターを弾けると思うと嬉しい。
このストラトを買ったのは19歳の時。とある歌手のバック・バンドで九州行った時に世話になった楽器屋で、中古を譲ってもらった。以来、ずっと一緒。でも、ストラトはタッチがシビアなので弾くの難しい。ラフに弾いてもギターをねじふせる力のあるギタリストが弾くと格好良いのだけれど、僕などが弾くと、タッチが安定しないので粗ばかり目立つ。なので、最近はあまり使うこともなくなっていったのだけれど、こないだリハに持って行ったら、石垣くんに「一番しっくり来てますよ」と言われた。やっぱ、そうなのかな。
ライヴの曲目をひと通り、おさらい。それから、まだ残ってた原稿。朝までに終えないと。