BEFORE GET IN SLEEP

6.25
昨夜の話だが、夜中の1時頃に江口氏から電話。「何時頃までなら待てるでしょうか?」と聞かれたので、「3時頃までなら。そこでデザイナーと結論出しますので」。が、「あ〜、それは無理です。下絵は描けたんですが、これから色を付けなきゃいけないので」という答え。「じゃあ、何時間あれば?」「朝までやって9時頃なら。なので、9時にバイク便を送りますよ。10時までには着くと思います」「じゃあ、それでお願いします。僕は午前中に上野に行かねばならないので、10時には出ます。なので、必ず10時までに送ってください」となり、一応、僕は寝れることに。デザイナーの角田さんにも「・・・ということなので、一度、休みましょう」と伝える。
が、朝の8時頃にまた江口氏から電話。「あの〜、昨日、上野に出掛けられるということでしたけれど」「はい」「じゃあ、そこまで届けますよ」。アレ? バイク便送るということだったはずだが・・・。こういう展開の場合、明らかなのはまだ出来てないということ。届けます、というのは、出来たら届けます、という意味。なぜ分かるかというと・・・ゴ、ゴメンナサイ、僕はもうしませんよお〜。
それはともかく、マズイ展開なのは明らかなので、これは自分が吉祥寺まで行くしかないと腹を決める。上野に盤面のフィルム出力を届けた後、「僕が吉祥寺まで取りに窺います」ということにする。午後1時にはプレス会社の担当者と製作進行のミーティングがアリ。そこでメドが見えてなかったら、もうちょっと、どうしたら良いか分からない状況なのだ。
1時間置きに江口氏と連絡を取り続け、12時に吉祥寺に。寿プロに向かう。余裕ある作りのマンションの一室。ベルを押して、最初に出てきたのはアシスタント・・・と思いきや、それが江口寿史本人だった。僕と同い年のはずなのだが、うわっ、若いっ! 僕もよく、見た目若いと言われるが、負けたかもしれないな。「先ちゃん」のイラストとは似ても似つかない、クールな人。そういえば、奥さんは十数歳年下という話だった・・・。
とにもかくにも原稿を取るため、僕は製作進行管理の高橋、ということで通していたのだが、「高橋さんって、あのミュージック・マガジンとか書かれていた高橋健太郎さんですよね」と江口氏。なんだバレていたのか。だったら、と、MEMORY LABのCDをプレゼント。実を言うと、彼の漫画には二十代の頃からたくさん刺激を受けてきた。突如、クラフトワークが登場したりする漫画なんて、描いている人は他にいなかったし。彼は早くに成功したので、僕はずっと年上の人だろうと思ってきたのだが、HPを見ると、世代的にかなり近い音楽体験をしてきたみたいだ。最近、聞いているのがジム・オルークだったり、マウス・オン・マーズだったりするあたりまで。
しかし、あの江口寿史からそんなに簡単に原稿が取れるかといえば、そうは問屋が卸すはずはなかった。「これなんですけれど」と見せてもらったイラストはまだ色が入っていない。昨晩、これから色を入れるので、あと8時間ということだったのに。いや、二週間前の時点で、イメージはバッチリ固まったので、今、下絵をやっていると聞いていたのに。が、とりあえず、モノクロでもデザインには回せるので、「それを持って帰ります」ということでファイルとプリントアウトをもらう。イラストはいかにも江口氏らしい、高校生の女の子がバスケットボールを抱えている図。膝のあたりのラインの繊細さはさすがだなあ。抱き締めたくなる可愛さ。
遅れて吉祥寺にやってきた朝日に戦利品を手渡し、角田さんのところに一刻も早く届けてもらうことにして、僕は急いで渋谷に。プレス会社の担当者とミーティング。「まだデジパック仕様でも行けるでしょうか?」「う〜ん、チャンスは・・・ありますね」。ああ、もう早く色が入ることを祈るのみか。あるいはもう、初回限定、モノクロ塗り絵仕様でリリースしちゃおうか。それはそれでレア盤になったりして・・・。
スタジオに戻り、なんだかんだの雑用。渋谷でさかなの西脇くんと瞬間ミーティング。それからAXでデスチャ。出てきた瞬間はなんだよ! カラオケかよ! それもコーラスパートまでカラオケ。リードヴォーカルとMCだけが生というライヴ。二階席だったので音もあんまり良くないし、最初のうちはどうしたものかと見守っていたのだが、次第に引き込まれてしまった。だいたい、デスチャのあの変態オケを生バンドでやっても良くなるはずはないし、だったら、カラオケの方が正解なんだろう。その分、ダンスで見せる。コスチュームで見せる。歌も思っていた以上にパワフル。コンサートというよりは、テレビを観ているようなものなのだが、1時間でスパッと終わった瞬間には、楽しかった〜。デスチャ最高!
再び、スタジオに戻り、また雑用。気がついたら、江口氏の追っかけしている間に、自分の原稿が3本溜まってもいた。担当者がこの日記を読んだら、一体、何というのだろう・・・。ああ、今夜もまた寝られません。

6.26

こんな時にマック絶不調。メールがうまく受け取れない。プリントアウトできない。フロッピーもCD-ROM読まない。朝から半日を費やして、ほとんど何もできずいらつく。
遅い午後に下北沢のオトゲノムで社長の北岡さんとミーティング。久しぶりの再会。北岡氏とは、創設時のスペースシャワーが青葉台のマンションで、何がなんだか分からない熱気の中でワイワイやっている頃に知り合った。あの頃のスペースシャワーはまるで遊び場みたいな面白い場所だったが、彼の新会社、オトゲノムの事務所にはあの頃を思い出す、同じような空気が漂っている。いいなあ。レコード会社を始めて、最初に手掛けたバンプ・オブ・チキンで大成功。「ビギナーズラックですよ」。MEMORY LABも、第一弾のさかながインディーとしては十分なヒットでラッキーだったけれど、こっちは桁が違いますね。でも、これから出すアーティストも面白そう。いろいろ話せて楽しかった。 
家に戻ってマックと格闘するが駄目。もう泣く。スタジオに行って、朝日とプロモーション素材を作ろうとするが、こっちのマックも不調。プリントアウトできない。何がなんだか。ウィルスでも感染したのか。そんなところに、ダイスケがやってきたのだが、たくさん待たしてしまった。深夜にかけて、ようやく、「SEA OF MEMORY」用のダイスケのミックスの手直し。ミックス自体は先日、作り込んもので良しとして、全体の構成を考え直す。そうしたら、4分台だった曲が7分を越えてしまった。でも、ループの中に聞き続けていると、いろんな新しい響きが聞こえてくるような、面白い効果が出るようになったと思う。ダイスケのジェフ・ミルズ好きもすごく出ている。
夜中に朝日とデザイナー、角田さんのところにジャケットの上がりも見に行く。初めて見た色付きの江口氏のイラストは・・・痺れました。誰のCDだか分からなくても、僕は絶対にジャケ買いするだろう。自分の関わったCDがこんなジャケットで世に出るなんて、信じられない気持ち。ヤバイです。江口寿史サイコ〜。

6.27

遅れを取り戻すべく、早朝から原稿仕事。ともかく何も考えないでやる。なんとかふたつ終えて家を飛び出し、上高井戸のスタジオに。PHATのレコーディング。先月のレコーディングはスムーズだったし、そこでセッティングも煮詰めてあるので、今日はもっとうまく行くかと思いきや、最初の曲から意外に手間取る。バンドは絶好調のはずなのに。原因はレコーディング予定の曲を最近のライヴでやりすぎたことか。今回のレコーディングはダイスケがMPCでベーシック・トラックをかなり作り込んでいる。が、そのトラックを使って、かなりの数のライヴは先にやってしまったので、新鮮さがなくなった頃にレコーディングになってしまったのだ。
なので、ちょっとアプローチを買えて、録っていくことを提案。ライヴにように白熱しない、そのかわりクールな持続感のある演奏をめざしていったら、良いテイクが録れた。しかし、バンドというのは本当に生き物のようで面白い。 
2曲目は7/8拍子のバラード。これも難航。でも、アプローチを変えて試すうちに、録音作品として聞きごたえのある方向が見出せた。ここまでですでに10時間が経過。もう1曲やりたかったが、ダイスケがシーケンサーを忘れてきたので、譜面をもとに、それをMPCに打ち込むところから始める。ヘンなシーケンス。ニューウェイヴ」期のエレ・ポップのようでもあり、最近のミッシー・エリオットとかにも似たエイジアン・テイストも感じたりする。これはPHAT独特のひとりづつレコーディングでさらっとやる。でも、やっているうちに僕はいろいろアイデアが思い浮かんでしまい、今回のレコーディングでも一番楽しみな曲に。「これはオレに任せてくれ」とガンガン編集して、何か作らせてもらうことにする。ヒット曲にする秘策アリなのだ。
これでPHATのセカンド・アルバムのスタジオ・レコーディングは終了。来月はライヴ・ジャムのレコーディング。2枚組になる予定のアルバムは前作から物凄い飛躍をしたものになるはず。楽しみに待っていてください。

6.28

江口寿史さんのイラストは入ったものの、ジャケット・デザインはまだまだ。発売日まで一カ月を切ったのにジャケ写もないという異常事態なわけで、状況が緊迫しているのにはまだ変わりない。一昨日からデザイナーの角田さんに頑張ってもらっているが、イラストのインパクトが強いだけに、デザイン細部の詰めは難航。昼に朝日とふたりで角田さんの事務所に見に行くが、もう少し時間が必要ということになる。
スタジオでプロモ資料送付などの雑務をこなして、夜に再び、角田さんの事務所へ。ようやく、ジャケット・デザインの完成を見る。目立つでしょう、このジャケットは。なんとか、あすには入稿できることになりホッ。
あしたこそは休むぞ。絶対に休むぞ。

6.29

ところで、昨日、たまたまJ-WAVE聞いてたらかかったデヴィッド・ミードの曲(パフィーの推薦曲だった!)は良かったな。アルバム、もう出ているのか? このところレコード屋もあまり行っていなかった。ニューヨークでもアザー・ミュージックで数枚買っただけだったし。今週末くらい、ドカッと買いたいもの。
今日は休むと決めたので、ずっと家で過ごす。本当は掃除や洗濯をすべきだったのだが、ベッドから出て、ネットして、またベッドへ、みたいな。気がつくと、それで日が暮れていた。ミュージック・マガジン・ナイト覗きに、高円寺まで行ってみようかと思っていたのだが、もう遅いか。が、ひとつ、買い物の必要があるのを思い出した。スタジオのマックの外付けHDを買い足さないと、明日のレコーディングもままならない状況なのだ。でも、もう新宿のヨドバシくらいしか空いていない時間。意を決して、速攻、新宿まで出て、60GのFIREWIRE HDを買う。
スタジオに行って、その接続。これでスタジオの9600は内蔵40G、外付け160Gになってしまった。さらにスタジオ・メンテ。このところ、機材の持ち出しが多かったので、ニュートラルなセッティングに戻す。なんだかんだで明け方まで。結局、休んだような、休んでないような。

6.30

先日、大阪で知り合ったラフト・ミュージックの笹岡さんの依頼で、アコースティック・ダブ・メッセンジャーズのレコーディング。アコダブのメンバー4人と笹岡さんが来訪。僕を含めて6人で長時間作業、となると、狭いERROR RECORDINGはかなり居住性に問題ありなのだが、双子の美人姉妹を含むアコダブの仕事ですからね。いや〜、楽しかった〜。
まずはハードディスクレコーダーに録ってあるリズム・トラックをPRO TOOLSに落とす。リズム・トラックといっても、アコダブの場合は完全生。リハスタで録ったそうだが、とても良い音で録れていた。それから、ヴァイオリンとフルートの録り。生楽器のレコーディングはやっぱり楽しい。AKGのC12AとRODE CLASSICの二本を立ててみるが、ここのポイントにこう立てたら、こういう音が録れるはずという狙いが当たって、どちらも良い音で録れた。ヴァイオリンはRODE CLASSICを採用。フルートは二本を合わせて使う。ミックスではもうEQもコンプもなしで行ける音。
曲はかの大スタンダード、「ブラジル」。アコダブのヴァージョンは東南アジアを想起させるSEに始まり、ややクラシカルな展開の後、後半は歪んだドラムがドカ〜ンと入ってきたりで、8分以上もある奇想天外なサウンド・トリップ。録りの途中から、少しづつ音を作っていって、全体なムードや構成的なことをメンバーと詰めていく。8時くらいにはだいたいの方向性が見えたので、祐天寺はおいしい蕎麦屋ありますよ、パスタ屋もいいですよ、と言って、みんなを食事に送り出す。ひとりになった一時間ちょっとの間に、やりたいことをガンガンにやる。
そう、山口泰の影響で、僕もかなりのステレオ・フェチになってしまったので、ミックスというのはそれぞれの楽器の音色を決めて、定位を決めて、というよりも、いろんな楽器をいろんな形でステレオ化させた「面」を重ね合わせて、立体を作るような考え方でやっていく。透明なアクリル板に描いた絵を何枚も重ねていくような感じ。そのためにアナログ機材も使っていろんなことをする。ギターのポジション移動で弦が擦れる音だけを極端にEQして、ディレイで飛ばし、ダブしてみたりもする。あ〜でもない、こ〜でもないとブツブツ言い、ウロウロしながらやるので、ここの局面は一人じゃないとやりにくい。
食事から戻ってきたメンバーとさらに方向性を確認。音響っぽい暗い感じとか、くぐもった感じは極力避けたのだが、するとちょっと、衛生的な明るさが強すぎた気もして、そのへんの調整が微妙。でも、12時頃にはほぼ完成。トータルのEQ、コンプまでは出来なかったが、一度、CD-Rに焼いたミックスを持ち返ってもらって、後日、リクエストがあれば、手直しするということにして、作業は終える。CD-Rを聞いてみたが、気持ち良い音。やっぱり、アコースティックはいい!
笹岡さんと三宿のカフェで軽くビールなど。もりばやしさんと信藤さんにバッタリ会う。もりばやしさんは自分のHPを作って、日記を書き始めるとか。やめた方がいいですよ!と言っておいたが・・・。

7.01

午前中、カン・アキトシさんから電話。「高橋さん、今どこですか?」「家ですが・・・」「アレッ?」「アレッ???」。
なんと、彼女がスタジオに来る約束をお互い、午前と午後で勘違いしていたのだった。「その日はかなり夜遅くないと行けないんですよ」「う〜ん、なるべく早い方が嬉しいんだけれど、早めだったら、どのくらいですか?」「じゃあ、10時半くらいだったらどうですか?」「ああ、そのぐらいならOK、OK」というやりとりだったのだが・・・。まあ、そそっかしさではお互いタメでしょう。
急いで、家を飛び出し、祐天寺に。待たせたお詫びに昼食を奢った後、来週、ERROR RECORDINGで歌録りとミックスをする彼女の曲について、軽くミーティング。昨日のアコダブに続いて、また外注のエンジニア仕事。これも楽しくやれそう。
午後は久しぶりにひがしみえちゃんがやってきて、新曲のプリプロ。以前に彼女が持ってきた時、ローラ・ニーロの話になり、ツタヤに借りに行って・・・あれ以来、そのままになっていた曲だ。みえちゃんが持ってきた新しいピアノのミディ・データは、中間部にドクター・ジョンみたいなロールするピアノ・ソロが入っていた。彼女の吸収力は凄い。
仮歌を録った後、キーを3度も下げることを提案。あと、スキャット部分にはR&Bっぽいフィーリングがあるのに、日本語が乗ると消えてしまう点を解消すべく、ヴォーカルのリズムの取り方を検討する。
夕方、マサがやってきて、「SEA OF MEMORY」に収録する彼の曲のマスター作り。AIFFファイルを一度、PRO TOOLSに読みこんで、DATに録ったものと、それを直接、CD-Rに焼いたものを聞き比べるが、DATの方が音像が大きかったので、DATを採用。
みえちゃんと夕食を食べた後、今度は入れ替わりに朝日がやってきて、7/30のライヴでやる岡村靖幸のカヴァー曲のアレンジ。もちろん、「だいすき」とは別の曲。実は僕の頭の中には前々からアレンジができあがっていたので、それを実際に打ち込んで、仮歌を入れてみた。バッチリ、真夏の夜のパーティー・チューンになったはず。しかし、来客の多い日。帰宅後はベッドに直行。爆睡。