
11.03
朝日美穂レコーディング。先週から始めた曲のドラム・トラックとキーボードを録った後、ベースとギターを考える。普通にやると、ハネたファンクになってしまうのだが、最近、どうも自然に身体から出てくるものでない感覚を身体が欲しているというアンビバレンツの中にあり、整合感のないギリギリの感じを探る。「リメイン・イン・ライト」より前のトーキング・ヘッズみたいな感じとか。アフロとも沖縄ともつかないギター・リフを思いつき、これは面白い!となったが、こういうのって二週間後には飽きてしまったりするしなあ。とりあえず、デモ落して終了。
11.04
例の「カリー対決後」、自炊熱が高まりまして、最近は自炊率5割くらいに戻っていたりする。たいした料理は作ってないけれど、鳥がらスープを深胴の鍋でどっと作って、連日、中華がゆ食べていたりします。
ところで、例のライヴチャージの話はさらに色々な人からメールをもらいました。あちこちで話題になったらしく、何年も会っていない某雑誌編集長が話題にしていたと伝え聞いて、へえ〜、こんなところと読んでいるんだと驚いたり。
しかし、とある人と話していて、ちょっと気になることがあったのは、「ギョ〜カイのそういうのって、どうにかならないんでしょうかねえ」と彼が言ったからでした。どうも僕の発言は誤解されやすい。というのは、ミュージシャンである彼は音楽業界の95パーセントは理不尽であるというような考えのもとに、僕の発言にシンパシーを寄せて話しているようだったからです。が、僕は自分の身近にあった二件の理不尽な事例について怒っていたのであって、むしろ、95パーセントはOKとしているわけです。
OKというのは、OKの範囲であるという意味で、その範囲内ではサイコ〜ってものからウ〜ン?てものまでありますが、少なくとも、件の二つ以外には、これは許せん!というような経験は過去、何十回と体験してきたイヴェントの中でもしたことがない。僕の少ない経験の範囲内ですから、同じような事例が沢山あるだろうことは予測できますが(なにしろ、イヴェントで人にギャラなど払ったことがない、と公言しつつ、イヴェント主催しているレコード会社社員がいるわけですから)、それでも95パーセントのイヴェントはOKの範囲内で、主催者もハコもミュージシャンも持ちつ持たれつのバランスを保っているはずです。
ミュージシャンが理不尽なリスクを負わされているかどうか、については、自ら集客に努力しているミュージシャンは、そう感じても無理はない状況があると思えますが、一方では自らの満足のためだけにその場を借りて演奏しているミュージシャンに対しては、搾取も何もないだろうとも思えます。もし、僕がライヴハウスの経営者、あるいはスタッフだったら、そういうミュージシャンにフラストレーションを覚えることも多いんじゃないかな。客を集める気がないミュージシャンにハコを貸しても、面白くないですものね。
CCCDの件についても、僕は現行のCDSに異議を唱えているのであって、コピーコントロールそのものにはむしろ賛同している。こんなことをしていると音楽業界はユーザーの信頼をなくす、と言っているだけなので、そこに、ギョ〜カイは腐っている、というようなシンパシーをどさっと重ねられても、違うわけです、それは。僕も紛れもなく音楽業界の一員であり、多くの友人や知己をその中に持っています。サイコ〜って思うところからウ〜ン?て思うところまで、いろんなことがこの世界にもあります。もちろん、自分自身の中にもありますね。ひどくイーカゲンな人間ですから、エラソーなこと言っていても。
つまるところ、これは国家や人種に対する人々の感情にも似た問題かもしれません。たったひとりの人間のたったひとつの行いですらが、あの国は嫌い、あの人種は嫌い、という感情を引き起こす。それをなくしたい、と僕は願っているわけですが、難しいですね。難しいからもっと言葉を尽くして説明しようとすると、余計に「難しいことはワカランが・・・」という感情論を引き起こしてしまうというのが、僕が人生でしばしば抱えるジレンマだったりします。
11.05
原稿仕事ともろもろ雑務。スタジオであすのレコーディング準備など。
11.06
もりばやしみほさん宅で朝日美穂レコーディング。久しぶりにKORGのD16を使用。ハードディスクに何が入っているか? チェックしてみたら、PHATのストリート・レコーディングが3曲入っていました。
「未完成の映画」という曲に、もりばやしさんのオルガンとグロッケンを入れてもらう。が、ここで大問題発生。プロトゥールズからD16にオケをダビングして持っていったのですが、この曲のオケはチューニングがかなり高いのです。高い理由は最初に僕が弾いたギターが高かったからです。僕はチューニング・メーターが苦手で、普段はギターを耳で合わせます。何かの曲が鳴っていると、その曲に合わせて、置いてあったりします。おかげで、ほぼ1/4音高いギターで、最初のガイドトラックを作ってしまった。
で、そのギターのフィーリングに合わせて、シンセやベースをチューニングを上げて録っていった。曲のキーというのは、曲のムードをかなり左右するので、これはこれで正解というか、独特のムードを出したと思うのですが、もりばやしさんの古いヤマハのオルガンのチューニングの許容範囲を越えてしまっていて合わない。グロッケンはチューニングなんて出来ませんから、まったくもって合わない。
どうしよう?と考えあぐんだ後、取った方法がパイオニアのCDJでオケをチューニングを上げて鳴らして、D16に録り、それにダビングするという方法でした。その場で朝日に歌ってもらい、仮歌も録りなおす(人間というのはチューニングがどうにでも出来て楽ですね、こういう場合、などと感心したり)。
苦労したのはここまでで、後はその場で3人でいろいろ話し合いつつ、オルガンとグロッケンのダビングをさらさらっと。素晴らしいものが録れました。もりばやしさんはセッション・ミュージシャンではないので、「じゃあ、まずオルガン・ソロを」「え〜、ソロは無理。キタちゃん(エマーソン北村くん)呼ぼう」というようなやりとりもあったりしましたが、歌を歌う人の楽器演奏というのは、楽器のプロのはない魅力があります。すっと曲そのものと一体になる演奏というか。
これは最近の僕の志向でもあるのですが、上手いミュージシャンを集めて、レコーディングすることに、以前ほど魅力を感じなくなってしまった。この曲も打ち込みのドラム(それもただのエイトビート)とシンセ、僕のベースとギター、もりばやしさんのオルガンとグロッケンで完成です。もりばやしさんがそこにいる、という感じのオケになるはず。それだけで、もう何も要らない。あとは、トラックのチューニングを戻すのが、ちょっと大変そうですが。
レコーディングの途中に一瞬、抜けてECDに会って、ちょっと相談事。レコーディング後は下北沢でラーメン食べて帰る。
11.07
最近、昼夜逆転気味。何とはなしに朝までヴィデオ見ていたり。不健康です。あ、でも、「ベッカムに恋をして」は久々に幸せな気分になれる映画でした。最後のラヴ・ストーリー仕立てが、かえって、今後の苦難を予想させて終わるのは気になるが、それよりも、お父さんが良いのよ〜。という見方をするようになったことで、あらためて自分の年齢を思い知ったりしますが。
昼は原稿仕事など。夜は藤原大輔とふたりで六本木スウィート・ベイジルでイースト・ワークス・エンターテインメントのイヴェントに。もう公表してもいいと思いますが、現在製作中の藤原大輔のセカンド・ソロは、同レーベルから来年春くらいのリリースです。今日のイヴェントは三つのピアノ・トリオが出演。普段、こういう場所に来ないので、いろいろ発見がありましたが、最後の佐藤允彦さんのトリオになったら、ピアノの音がNEVEのプリでも入れたか?というぐらい太くなったのにはビックリしたな。しかし、ピアノ・トリオって形態に関していえば、ベースの存在意義がよく分からないな〜、これだったら無い方が緊張感あって良さそう、などと3グループともに思ったり。帰り道、そのへんの今様ジャズに対する疑問を藤原にぶつけまくる。
ふたりでスタジオに寄り、2時間くらいディープな議論。本当は今日からセカンド・ソロのミックス開始のはずだったんですが、結局、プロ・トゥールズは開かずに終わる。でも、こういう日も必要。
帰ったら、「BEAT SOUND」の第二号が届いていました、第一号では僕のベッドルームのステレオがフィーチュアされていましたが、今回は6ページに渡ってERROR RECORDINGが取材され、和田博巳さんと僕が対談しています。よくまとめたな〜、あのとりとめもない雑談を、という編集者に頭の下がる内容です。いつも雑然としているスタジオは恐ろしく美しく写っています。う〜ん、趣味の良いスタジオだな〜。やっぱり、これは僕の宝物です(楽器類は一切写ってないのが残念ですが)。
あと、不思議なことですが、最近は雑誌に自分の写真が載っていても、違和感がなくなりました。昔は「これがオレなんだ〜」と嫌で仕方がなかったのに。そういうものなのでしょうか、人間、四十代も後半になると。
11.08
秋冬はマーケットに魚の種類が増えますね。人生ももう折り返し地点ですから、食べていないものは食べてみたい。というので、今日は朝からかじかなど煮てみました。かじか、ですよ。川魚なのに、アンコウ、ふぐ系のコリコリした身です。臭みもなく、うまく煮ることが出来ました。
うちの近く(といっても徒歩十五分)のスーパーは、時々、こういう珍しい魚を安く売っています。珍しい魚といえば、後にも先にも一度しかお目にかかったことがないのに、マンボウの刺身というのがありました。これは抜群に美味しくなかった。なんか、最初からカマボコみたいな、というよりは消しゴムみたいな、そんな身でした。でも、マンボウが好物という人も世の中にはいるのだろうか?
夜はリキッドルームでバッファロー・ドーター。これは朝日新聞にレヴュー書く予定。ナチュラル・カラミティーの森さんと会って、ちょっとお喋り。ナチュカラ新作、まだ聞いていないのだけれど、めっちゃ良さそうな予感。
11.09
雑務、雑務、雑務。先日来からやっている雑務のひとつは翻訳で、日本の音楽雑誌の記事を訳しているのですが、こんなの訳せるかよ!って記事の多いこと。良い意味で、英語的なロジックにはまらない日本語の文章というのもあるとは思うけれど、どっちかというと、どれもこれも、一度、ロジックを整理して書き直してから英語にしなきゃならないような文章ばかりなんですよ。で、論点を整理してみると、みんな同じなの、言ってることは。だから、平易な英語にしたら、全部、一緒になっちゃう。こういう風にならないようにせねば、とちょっと自分の文章の書き方についても考えさせられた。
夕方、選挙に行った後、実家で母と弟ふたりとスキヤキなどつつく。その後、いわゆる家族会議。どひゃ〜。いろいろ待ち受けていますね、人生には。
さて、年末のスケジュールが出てきました。恐ろしいほどにライヴ続きです。クリスマス前から行ってみましょう。
12/23 ニーハオ!@高円寺ペンギンハウス
12/25 朝日美穂@渋谷7th Floor
12/27 Limited Express (has gone?)@大阪FIREFLY (with ニルギリスほか)
12/28 さかな@吉祥寺MANDA-LA2 (ワンマン!)
12/29 朝日美穂@大阪クラブ・クアトロ (with hawaii1200、OK MUSIC BALL、AOKI takamasa(PROGERSSIVE FOrM)
12/30 大阪DAWNで僕がDJ(ライヴ・アクトはリトル・クリーチャーズ、コンボ・ピアノ、ママ・ミルクほか)
12/31 朝日美穂@吉祥寺スターパインズ・カフェ
27、28日はどう考えても無理がありますね。なので、リミエキとさかな、どちらか選ばねばならぬ。たぶん、正月はひたすら死んでいるでしょう。でも、人生はパーティーだ! どこかでお会いしましょう。