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10.13
こないだからやっている広告方面のお仕事を進めつつ、リミエキの曲のミックスを進めつつ、週末のカリー対決の秘策を練ったり。そういえば、先の子猫ちゃんは無事、飼い主が決定。大阪に行ったそうです。そう聞かされて、また切ない気持ちになったりして。勇気を出して、ふたりで暮らすことにすれば良かったかなあ。めっちゃ可愛かったんですよ、彼女。

10.14
ZEPP TOKYOでオカムラチャン。全盛期にはまともにアルバムを聞いたことがなかったので、ライヴももちろん初体験。でも、すっごいオモシロカッタ〜。ともかく、目が離せないわけです。彼の一挙一動に。バンドはあんまり良くなかった。7年前と同じメンバーだそうですが、う〜ん、7年前で止まっている人達に見えてしまったな。オカムラチャンも声が出ません。時折、ハッとするくらいのシャウトだったり、ハイトーンのファルセットだったりが出ることもあるのですが、安定感がないというか、メロディーをちゃんと歌えてないことが多い。地声でのキーが下がっているようで、「あの娘ぼくがロングシュート・・・」などは上に上がるメロディーを下に下がるように変えて歌っていたし。三部構成で2時間を越えるステージでしたが、途中、息のあがったオカムラチャンの回復を待つためと思われる、メンバーのソロ・パートやMCパートなどもあり。ショーアップされているようで、バタバタしたところも多いコンサートだったわけですが、でもね、なんか夢があって、切ない。カッコワルイところがなぜか人の心を捉えてやまないオカムラチャンらしいコンサートでした。みんなが一緒に歌ってオカムラチャンを助けてた。トリビュート盤の収録曲は僕も一緒に歌いましたよ。
ところでZEPPって遠いと思っていたら、帰りに東京テレポート駅からJRに乗ったら大井町まで10分足らず。自由が丘経由で30分ほどで家まで戻ってきちゃった。

10.15
東芝EMIで定例のミーティング。その流れで、「LTE IT BE NAKED」の試聴会に参加。オリジナル盤を最後に聞いたのって、二十年以上は前。ビートルズ・マニアじゃない僕は曲目、曲順の違いもへえ〜そうなんだ、というぐらいの認識ですが、でも、新鮮な印象は受けた。「ロング・アンド・ワインディング・ロード」は高校生の頃の印象で、コードが難しい曲と思っていたのだけれど、なんだ、意外にシンプル。ポールはキャロル・キング聞いて、この分数和音シンコペを作ったんだろうな、とか今頃になって気づいたり。
夕方から朝日ととあるお仕事用の曲の歌詞とメロディーの詰め。僕が思い描いていた譜割りと彼女が歌う譜割りがことごとく違う。なんで、そんな難しい譜割りで歌えるのかと思うが、彼女にはそっちの方が自然だという。夜にひがしみえちゃんが来訪。彼女にリード・ヴォーカルを取ってもらうことにしたので、練習してもらいつつ、さらに細かい譜割りなどを詰める。テンポが速い中に、言葉が詰まっているので、かなり難しそう。とりあえず仮歌を録るところまでが今日はやっと。

10.16
銀座ナイルにカレー粉を買いに行く。が、ムルギー・ランチ食べて、満腹、満足して、ふと気がつくと、カレー粉は買わずに帰りの地下鉄に乗っていました。ボケ〜。何しに行ったのやら。仕方なく、自由が丘でカレーの材料をあれこれ購入。
家に戻って、リミエキのリリースまわりの雑務アレコレ。今回は1000枚限定プレス。が、蓋を開けてみたら、オーダーが凄い勢い。1000枚じゃ足りないわ。でも、欲張って追加プレスなどしない。とあるディストリビューターからの600枚納品の受注を400枚に抑えてもらう。こんなことはレーベル始まって以来、初めてだ。
スタジオ行って、あれこれ作業。3曲ほど、めっちゃカッコイイのが出来ているけれど、何をやっているのか、ここでは正確に書けないのが残念。

10.17〜18
仕事はお休み。19日の「カリー対決」の準備。でも、調理を始めるにはキッチンを片付ける必要があったり、気がつくと、基本の調味料が切れていたりで、バタバタ。9リットルのカレーを作るのに、どのくらいの材料が必要なのかも、よく分からない。もともと、僕は料理する時、材料の分量はテキト〜。レシピとかを見て作ることもなくなってしまった。こんなもんだろう、と思って作る。その方が面白い。アバウトなのです、音楽作る時もそうだけれど、厳密なのは苦手。
とりあえず、一度に買って持って帰れる量の材料でやることにして、玉葱を二十個、セロリを3本、いちじくを十八個、ニンニクを三個買う。今回のお題は「秋カレー」。二週間ほど考え悩んだ末、今しか食べられない食材として、いちじくを選んでみたのでした。いちじくは好きな果物で、ワインで煮て、コンポートにしたことは何度かある(クリームチーズを添えて食べると美味)。が、ネットで検索してみたら、なんとワインで煮ないで、ターメリックと砂糖で煮て、キルシュ酒に漬けるコンポートのレシピが乗っていた。ターメリックで煮てもいいなら、カレーとの相性は良いに決まっている。なので、数日前に鳥といちじくのカレーに決定!
と思ったのだが、いちじくを買いこんだ後に、心に迷いが。というのも、「秋カレー」と言われて、最初に考えたのは秋刀魚のカレーです。秋刀魚はみんな好きだしね。いちじくよりはポピュラリティーがある。でも、秋刀魚はカレーになるかどうか、何度も考えてみたが、どう考えても秋刀魚を煮込むというのはおいしそうに思えない。煮崩れそうだし、脂が嫌な感じで浮きそうだ。それよりは塩焼で食べたいと日本人なら思うはず。
なので、秋刀魚カレーは却下したのだが、マーケットで買い物しているうちに、秋刀魚カレーの作り方を思いついてしまった。思いついたら、試作してみたい。なので、こっちを先に作ることにした。レシピはですね、秋刀魚をまず燻製にする。そう、僕の得意な燻製です。燻製にして脂を落し、身を締めて、カレーの中でも身が崩れないようにするわけです。味付けは塩と胡椒とクミン。桜チップで燻製に。
カレー・ルーは玉葱とカレー粉だけでシンプルに。が、魚カレーにするために、塩味をアンチョビだけで付けることにした。言ってみれば、秋刀魚の燻製にカレー風味のアンチョビ・ソースをかけて、ゴハンと一緒に食べるというような一品です。美味しいそうでしょ。実際、美味しかったです、試作品は。
しかし、料理としての完成度はどうかというと、秋刀魚の燻製は美味しい、ソースも美味しい。が、両者が絶対的な必然性を持ってカップリングされているかというと、う〜ん、そこまでは混じりあっていない気がする。やっぱり、アイデア料理の範疇か。さらに改良を進める余地はありそうだが、試作して分かったのは、秋刀魚を三枚におろした後、燻製にする前に毛抜きで小骨を抜いて上げないと、人様にお出しすることは出来ないことだった。作る量を考えると、これは手間がかかり過ぎる。なので、やはり秋刀魚カレーは却下。残った燻製で黒ビール飲んだら、そっちの方が美味しかったしね。
なので、鳥とイチジクのカレーに戻る。以下、今回のレシピです。
いちじくは皮むきした後、変色を防ぐためにレモンを絞っておきます。鍋に水を張り、ターメリックを熔かし、クローヴを数本入れ、砂糖とメイプルシロップを加えて、温めた後、いちじくを放りこんで、軽く沸騰するまで煮る。沸騰したらアク取りし、キル酒を加えて、さらに2、3分だけ弱火で煮る。火から下ろして、さらにキルシュ酒を加え、さます。鍋ごと冷蔵庫に入れて、一日、漬け置きです。
カレー・ルーはまず玉葱と格闘。二十個の玉葱を刻んで、3回ほどに分けて炒め、水分を飛ばして量を減らしてから、ひとつの鍋で延々、4時間くらい弱火で炒め続ける。絶対に焦げつかせてはいけないので、常にかきまぜている必要があります。
それとは別にセロリとニンニクの微塵切りを炒めて、香りを出したものを同じように水分が飛ぶまで炒めておきます。こちらは三十分もあればOK。
両者を混ぜ合わせてからカレー粉を加え、さらに炒めます。カレー粉はナイルで買い損ねたので、そこらのマーケットで売っている浅岡香辛料の普通のカレー粉。今回はスパイスもクミン、クローブ、カルダモン、ベイリーフを使うくらいです。なかなか手に入らない食材を使って料理したりするのは、若い頃は好きだったけれども、最近は興味なくなってしまいました。そこらで売っているもので、おいしいもの作ればいいんだもの。そうでないと、一、二回しか使わないうちに賞味期限が切れてしまうスパイスや調味料が冷蔵庫に溜まってしまう。塩と胡椒と醤油と酒があればいいんです、日本料理や中華料理は。あとはダシで勝負。あ、これは僕の料理本に対する哲学ですが、一品作ることに、何かスパイスや調味料を買わなければならないような料理本は良くない料理本です。塩と胡椒と醤油と酒で作れるメニューが沢山載っている料理本が良い料理本だと思う。
話が逸れてしまいましたが、さて、カレー粉を入れたところまでだっけ。ドロドロになったこのカレー・ルーにザク切りのトマトの缶詰めを二缶加えて、もう少し炒めた後、鳥がらのスープを加えて煮ます。鳥がらのスープはもちろん深鍋でがらと野菜を煮て、8リットルほど作ってありました。しかし、玉葱二十粉のルーと8リットルのスープと、一瓶の半分ほどのカレーの粉の量が正しかったのかどうかは、半信半疑のままです。
丁重にアク取りしつつ、これを2、3時間煮たところで、前日までの仕込みは終了。あとは当日。

10.19
マーケットで鶏肉を1.5キロほど買って、これを塩、胡椒、クミンで下味付け。たっぷりのオイルでニンニクと鷹の爪を先に炒めたフライパンで軽く焦げ目が付くまで炒めた後に、昨日のカレーとは別の鍋に。チキンは最後の一時間くらいで煮込むので。
が、ここで大問題発生。深鍋で9リットルものカレーを作ったのは初めてだったのですが、このくらいの量になると、弱火でとろとろ煮ていても、底でルーが焦げてしまうようです。鍋の底をこそげ取るようにすると、黒い焦げが浮いてきたりして。焦げた匂いはわずかでも分かりますから、これはマズイ。なので、一度、鍋を移すことに。あれやこれやで家中の鍋を総動員です。
が、怪我の功名というか、移しながら、ここで必勝の秘策となるアイデアを思いついた。今回はこのままルーを一度、裏ゴシしてしまおう。というのも、ちょっとカレー・ルーといちじくのコンポートの相性を試食してみたところ、カレー・ルーの方が強過ぎる気がしたのです。コンポートをさらに甘くするという手もあるが、それよりはルーをもう少しさらっと、洗練された感じにしてバランスを取りたい。ならば裏ごししてしまおう。ということで、締め切り2時間前に急遽、裏ごしをすることに。9リットルのカレーを裏ゴシですよ。でも、裏ごししてポタージュ風にしたら、それまでのインド・カレーでもなく、小麦粉を使った欧風カレーでもない、独特のスープ・カレー風になり、イチジクとの相性も飛躍的に改善されました。これは行ける!
鶏肉の方は裏ゴシせずに残した少量のルーとチキン・カレーとして別に煮ます。イチジクを漬け汁から出してタッパーウェアに移し、常温に。この三つをグレープフルーツムーンには別々に運んで、直前にミックスするということにしました。本当は家でゴハンを焚いて、一度、試食したかったですが、タイムリミット。なので、塩加減などはちょっと自信ないまま。9リットルなんて作ったことがないし、何度も味見し過ぎて、舌もよく分からない感じになっている。が、ヘンにここで塩や胡椒や唐辛子を足しすぎたりすると、取り返しがつかないことになります。ともかく、最終的な味加減は現場で見ることにして、塩、胡椒、市販のガムラマサラと、クミン、クローブ、カルダモン入れた胡椒挽きを持って、いざ、グレープフルーツムーンへ。
GFMで厨房に。思えば、こういうプロの厨房に入ること自体が初めての経験です。それだけでちょっとビビリます。カリー番長のみずのさんはすでに到着済み。巨大な鍋でカレーを温めています。具のたくさん入った、これはタイ・カレーかな? 生のハーブとかも入っていて、一目見て、これは勝ち目ないわ、と思いました。
僕も巨大鍋でスープ・カレーとチキン・カレーをミックス。最後の味加減を見ますが、アレ、何か足りないかも。塩は十分です。スパイスも最後にフレッシュなのを加えました。が、辛味と甘味がもう少しづつ欲しいかも。なので、急遽、三軒茶屋商店街に飛び出し、買い物。りんごジュースと唐辛子の細切りを買ってきました。りんごジュースを一瓶加えて、唐辛子の細切りの方はカレーを盛る時にトッピングにすることに。イチジクもカレーと一緒に煮ることは最後までしないで、お皿の上で一緒になるだけです。しかし、結局ライスの上に乗せての味見は一度もしていないんだよな、このカレー。
以上、レシピでした。まあ、カレー作りというのは、曲のミックスにかなり煮ています。
しかし、今回の「カリー対決」のように、勝敗の決まるイヴェントというのは音楽の世界にはありません。だから、僕はそういうものにほとんど縁なく過ごしてきた。二十代の頃に草野球やっていたのが最後かな。コンサートやイヴェントで今日は何対何で勝った、負けたとかいうのはアリエナイ。でも、スポーツ選手などは毎日がそれなわけで、面白いだろうなあ、きっと。でも、物凄い精神力がいるんだろうなあ、などと考えました。
が、勝負事はやるからには勝たねばならぬ。敵は100回以上もイヴェントにカレーを仕出しし、しかも、二度、同じカレーを出したことはないというカリー番長です。負けてもともと・・・と最初は思っていたのが、いざ作り出したら、勝つことしか考えていない。勝つためだったら、9リットルのカレーの裏ごしだって何だってやる。燃えましたね〜、いつになく。
厨房でみずのさんのカレーを見た時には、これは大差で完敗とも思ったのですが、さて、イヴェントが始まって、お客さんの反応を見ていると、ん? 結構、善戦しているかも。イヴェントの途中で、自分でも初めて食べてみましたが、うん、これなら納得できる味。これで負けても悔いはない。少なくとも良い勝負はしてそうです。みずのさんのカレーは南インド風のさばカレー。豪快な一品です。旨いっ! 僕のが「美味しい」だったら、みずのさんのはまさに「旨いっ」って感じ。もっと沢山、かきこむようにして食べたい感じ。そういう意味では対照的な二品です。僕のは鳥といちじくが入ったさらっとしたスープ・カレーですから。でも、お客さんは女性客が多い。カフェで出すならオレのレシピだ!。
勝負はお客さんがどちらのカレーがおいしかったか、スプーンの投票で決めます。投票の時点ではみずのさんと僕がどちらのカレーを作ったのかは明らかにされていません。いよいよ開票。投票箱から一本づつ、スプーンを抜いて数えていくわけです。ドキドキです。開票が進み、次の一本はもうないかもしれない、という頃になると心臓バクバクです。しかし、これが希に見る好勝負。会場のお客さんの数からして、そろそろ半々、というところまで行っても、互いに譲らない。司会のダイスケとカリー番長リーダーのさっかりん(2003年カリー・グランプリ・チャンピオン)が一度、開票を止めました。たぶん、あと一、二本。
大差で負けると思っていた勝負がここまで来て、正直、僕は思いましたね。勝った! 次の瞬間にはオレがスポットライトを浴び、マイクに歩み寄って、「オマエラ、何が番長だ! カリーってのはそんな甘くね〜んだよ。次はさっかりん、オマエを倒す!」とさっかりんを指さし、睨みあう図が頭の中には浮かんでいました。しかし・・・最後の一本が取り出されたのは、さばカリーの箱。両手で頭を抱えて崩れ落ちるオレ・・・。