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10.06
彼女との親密な一夜も明けて、お別れです。僕が呼びかけると、ベッドの下から顔を出して、「ニャ〜」と答えるまでになったのに。切ないなあ・・・と思っていると、隣の奥さんが「高橋さんさえ良かったら、このまま・・・」。そう来るとは思っていたんですけれどね。「いや、僕は留守が多いので」「大丈夫よ、猫ちゃんはひとりでも」「う、う〜ん」てな会話もありましたが、やっぱり飼うのは無理なので最後の抱擁。
午後に朝日宅に行って機材搬出。渋谷NESTで湯川潮音ちゃんのレコ発。楽しいイヴェントでした。朝日のライヴもリハ〜本番ともにスムーズ。NESTのサンクラの卓は音が柔らかく、気持ち良くオペレイトできた。たぶん、最近の朝日のライヴの中では一番、音が良かったんじゃないかな。今日、初披露したエレクトロな新曲も良い出来映え。レコーディングしているドラム入りのヴァージョンより、シンプルなシンセ・シークエンスとエレピだけやった今日のヴァージョンの方が良いかもしれないと思ってしまった。
朝日のライヴが終ったところで、観に来ていた立石嬢と渋谷FMに。夕方、電話をもらった時に「今、ホームルームなんで、終ったら向かいます」と言っていたが、そうか、学校帰りということはまた制服。物販をお願いしていたナガミ〜に「すみません、ちょっと外出してきます」と言って、ふたりで出ていく時点で、もうロビーの人々の不審な目が集まっていたりして。NESTから渋谷FMまではわずか2、3分ですが、しかし、場所はラブホだらけの道玄坂上です。時は夕暮れ。びびりまくりの僕を脅すかのように、立石嬢はわざとはしゃいで周囲の目を集めたりして。
渋谷FMでディレクター、Eさんとサラッとミーティング。先日、僕が出演したクラブ・キングの「選曲家アワー」に立石嬢の出演が決まる。プリクラ、プリクラとうるさい彼女にこないだ「次は八木さんとプリクラ撮りなさい」と言ったら、「それより桑原茂一さんと撮りたいです」ということだったので、茂一さんが次のヴィクテムになる道を作ってみたわけです。10/23の6時から生放送。マークシティの道玄坂側出口脇にあるサテライト・スタジオで、制服でDJしている姿が見られるはず。
NESTに戻って、エンケンのライヴ。凄かった。エンケン、サイコ〜なのは15歳の時から知ってます。僕ははっぴいえんどより先にエンケンで、思えば、カレーの道に入ったのも、エンケンの「カレーライス」があったからでした。しかし、久しぶりにアコギ1本のライヴで、「満足できるかな」〜「カレーライス}〜「夜汽車のブルース」といった30年以上前の曲を続けてやるのを見て、ぶっとびました。こんな人、世界的に見てもいないと。ジム・オルークに見せたいな、とか。
そんなエンケンの次に19歳の潮音ちゃんがトリで出てくるのだから凄いイヴェント。お父さんのトーベンさんも見守る中、ハラハラさせつつも、太いところも垣間見せるステージ。2曲目に僕との共作の「MATCHBOX」を、3曲目に新川忠と共作の「あのこのうた」を。後半は物販の用意でロビーで見ることになりましたが、彼女の不思議な存在感が会場を満たしたライヴだったんじゃないかな。
終了後、見に来ていた新川くんや立石嬢などとお喋り。このふたりのコンビも面白い。THE ITさんやサエキのけんちゃんとも久しぶりにいろいろ話す。ナガミーの車で朝日宅に機材戻した後、光春でダイコンモチなど食べて帰る。ひとりに戻った家で思うのは・・・彼女はどうしたかなあ。良い飼い主が見つかるといいなあ。

10.07
レコーディング。とあるお仕事用のリズム・トラックを作り直す。久しぶりにヴァイナルからサンプル・ネタを沢山拾ったり。AKAI S1100を起動して、昔取った杵柄的作業。最近はほとんどネタをPRO TOOLSに取り込んで、という形が多かったが、切ってちぎって、鍵盤に並べて、というのも良いね、やっぱり。ひとり楽しく作業。

10.08
前日に続いて、ひとりレコーディング。先日のスタジオ・メンテのおかげで、ルーティングも整理され、快適に作業。夕方にFUCK!な電話が一本あった以外は楽しい一日。
電話の主は東芝EMIのHという男で、電話してきた案件は、すでに同社のKさんとの間で話し合い済みだったので、「今頃電話してきても、キミと話す必要はないよ」だったのだが、その電話でわざわざこういうことを言うので、メジャー・レーベルの感覚というのはそういうものか?ということを問う意味で、あえて、彼の言ったことをここに記しておく。
詳しく言うと、一昨日のイヴェントのギャラの件で、彼は昨日、電話をくれるという約束だったが、電話してこなかった。その間にKさんとメールでその件は話し合われたので、もはや彼と話す必要はなかったのだが、ただし、Hはイヴェントの責任者だ。が、当日もこちらから問わなければ、ギャランティーについての説明は何もなし。コバコのイヴェントの場合、ギャラは当日精算が普通だが、質問してようやく「あす電話します」ということだったので、電話を待ったが電話なし。せっかくの機会なので、その理由をHに問うと、彼はこういうことを言ったのだ。

自分はイヴェントで人にギャラを払った経験がない(!)。
今回のイヴェントは最初から赤字だと思っていたので、ハコとチャージバックなどの取り決めはしていない。赤字でもゼロにして欲しいということだけ(!!)。
なので、出演者にもギャラが発生するとは思っていなかった(!!!)。

これを読んでいる人の中にも自分でイヴェントを主催したり、あるいは、出演者として出演したり、スタッフとして協力したりした経験を持つ人はいるだろう。みんなで開いた口が塞げずにいる図が浮かびます。どれも、事前、あるいは事後にもギャラの説明をしない理由にはなってないし、するといった電話をしてこない理由にもなるはずないが、それはまあ、コイツの人間的信頼性の問題だから、置いておこう。
それ以前に、唖然とするのは、平然とこういうことを言う彼の中には、イヴェントの責任者として、客を集めよう、採算の取れるイヴェントにしよう、という感覚がかけらもなかったのが分かるからだ。Hの仕事は新人アーティストのプロモートであるにもかかわらず。
今日はもう出掛けるので、この話は一般論として、もう一度書くかな。コバコのイヴェントは確かに難しい。しかしね、真剣にやっているのだ、僕の知る多くの人達は。ノーギャラが致し方ないことだってある。新川忠バンドなんて、最大4000円のギャラしか貰ったことしかなかったしね。そんなのは全然OK。その4000円をひねり出した主催者の苦労も分かるし。ぶっちゃけ、僕の経験の中だけでいえば、過去、ギャラでトラブった(というか説明すらないまま放置された)2、3回は、すべてメジャー・レーベルが絡んだ時だ。そうえいば、2年前の浜崎貴志イヴェント@リキッドルームの、さかな+フリーボのギャラの件は、いまだにスピードスター・ミュージックからの説明待ちをしています。

10.09〜11
いろいろあったといえばあったけれど、基本的にはレコーディングしていただけなので、上の話の続きを書くことにする。
上のを書いてから思ったが、イヴェントってお客さん、入っていないことが多いですよね。こないだのライヴ? 入りが厳しくて、ギャラ、ン千円でした、というような話を身近から聞くことも多いし。
が、僕自身が企画に関わったイヴェントに関して言えば、幸いなことに、過去、目も当てられないような不入りだったことは一度もない。コバコのイヴェントはお金にならない、ということは全然なくて、満員にすれば、こんなにお金が入るんだと思う経験もしてきた。スターパインズカフェでの「ミファソ・ランデブー」の第一回なんて、残った札束を前に、出演者みんなで仰天したくらい。今年を振り返っても「チョコパニック」も、PHATのクアトロも、朝日美穂ワンウーマンも、「飲茶ロックVOL.2」もお客さんには恵まれてきた。
で、お客さんが入れば、もちろん、出演者にも相応のギャラは払える。イヴェンターが間に入らないコバコのイヴェントの方が、むしろ、出演者への還元はたやすいのだ。こないだの朝日美穂企画「飲茶ロックVOL.2」でも、イルリメを関西から呼ぶ交通費を捻出しつつ、ECDに「エッ!こんなに?」と言ってもらえるギャラを渡すことが出来たしね。あるいは、MANDA-LA2で常に150人前後を動員しているさかな企画のイヴェントなどでも、対バンに呼ばれたミュージシャンはギャラの封筒に驚くことが多いだろう。コバコのイヴェントでもこんなにちゃんとギャラが出るんだと。
しかし、そういうイヴェントにするには、企画と宣伝の努力が絶対的に必要だ。僕の場合だったら、数千枚のフライヤー蒔き(めぼしいライヴでの折り込み)をして、雑誌にプロモして、ネットでもDM出したり、あちこちBBSに書きこみしたり。二日、三日は完全に潰すくらいの覚悟でやらないと、小さなイヴェントのプロモだって出来ない。やりたくてやることだし、やれば確実に結果にもはねかえることだから、苦にはならないが。
そういう努力をして、出演者に妥当な額のギャラを保証できる集客を得ることが、企画者の責任だと僕は思う。それが出来ないならイヴェントなどやるな。あるいは、自腹で先にギャラ保証を用意しておけ、とも。こんなことは僕がここで強調しなくとも、多くのイヴェント企画者にとっては、言わずもがなのことだと思うが。
ところが、中には上の東芝EMIの林のように、そんなことは考えたこともありませんでした、という人間がイヴェントを企画したりもするのだ(おっと、実名出ちゃったが、ま、いいでしょ、彼はもう僕のまわりには出入り禁止にしたので)。彼の言葉の根底にあるのは、こんなコバコでやっているイヴェントなんて、所詮、プロモ・ライヴに過ぎない、オマエラもプロモと考えろ、というような発想だろう。FUCK YOU! オレが口汚くなるのは、そういうイヴェントに何千円かのお金を払って、こまめに足を運んでくれる音楽ファンの存在を彼がコケにしているからに他ならない。メジャー・レーベルには取るに足らない十人、二十人だったりするかもしれない。だが、それでもそこは業界向けのコンベンション会場ではなく、ちゃんと音楽にお金を出すリスナーがいて、それに応えようとするミュージシャンがいる場所なのだ。
イヴェント企画者として、まず最初にやるべき、そういう音楽ファンを地道に集める努力もしないで、どうせ赤字だ、プロモ・ライヴだ、と林は勝手に考えていたわけだが、じゃあ、プロモ・ライヴにはなっていたのか?というと、編集者やライターの数人すらも呼べてはいない(頼まれれば、オレが呼び込まないでもなかったのに)。一体、オマエの仕事は何なのだ?とこっちが頭を抱えたくなる。形として、何かイヴェントやらなきゃいけないから、やっただけ。イヴェント・タイトルがいつまでも決まらなかったり、当日のタイムテーブルが非常にイーカゲンだったりしたところからも、それは窺える。
で、そんなイヴェントでハコが埋まるはずもないですよ(うちのネット予約ではなんとか二桁売ったけれど、ぴあ売りなんて片手行ったのだろうか?)。かつ、プロモ・ライヴとしても招待者を呼べていない(評論家にインビくらい出したのだろうか? オレの知る限りは出てなかったな、あと、アルバムの参加ミュージシャンにも)。その日、僕はしがないPAオペレイターだったわけだが、何のためにあそこにいたのか? 音楽的には本当にハッピーでビューティフルなイヴェントだったというのに、林の電話で恐ろしく空しい気分にもなってしまった。
彼の仕事は新人アーティストのプロモーションだ。それも、僕にとっても非常に愛すべき、この人のためならノーギャラだろうが何だろうが、何でもしたいと思うくらいのね。が、これから協力者を集めねばならない新人アーティストのプロモーターが上のような言葉を口にするというのは、レコード会社の基本的な社員教育の問題としてもどうなのか?と思う。どこか感覚が麻痺しているんじゃないだろうか? メジャー・レーベルだろうが何だろうが、原点となる「音楽のある場所」を大事にしなかったら、未来はないよ。亡き福田一郎先生に代わって、来週、斉藤さんと会う時にでも一言、言うべきかもね。あと、PAオペレイターごときに出入り禁止にされてもたいしたことはないだろうが、でも、オレにもいろいろ職種はあるわけで、洋楽やSTには回されない方がいいでしょう、彼は。
ついでに、スピードスター・ミュージックのS原さんにも重ねてメッセージ。上の浜崎貴志イヴェント@リキッドルームの件、連絡お待ちしていますよ、ずっと。

10.12
音楽関係の仕事でやったことはないのは作詞と照明、というのが僕の口癖だったわけですが、今日はついにやってしまいました、作詞を。厳密にいえば、補作詞になるでしょうが、よし、韻踏んでやるぞ、と思ってやってみたら、これが面白かった。ハルカリのアルバムでFPMの田中くんがやっているような感じのものをめざしたのですが、なんだ、オレにも出来るじゃんと自分で自分にビックリ。深夜、関係者二名にメールで送ったところ、どちらも好反応。というわけで、そのうち世に出てしまうかもしれません。初の作詞クレジット作品が。