OWNER'S LOG

07.07
雑用がどっと棚から落ちてくる月曜日。三茶〜下北〜代々木上原(JASRAC)〜渋谷とまわった後、スタジオでひとり作業。一昨日〜昨日で作り上げたストリングスにもう飽きてしまったので、一度、チャラにして、四管のホーン・アレンジを試みる。これは一時間半くらいでサラッと出来た。自分的には今までで一番、すんなり聞ける、というか、一番自分らしいアレンジだな。朝日に「一応、出来ました」と電話して、確認してもらうことに。
中目黒まで朝日を迎えに行って、最近、出来たカレー屋で夕食。店内に小山田くんがいたので挨拶。すごく量の多いカレーで満腹。が、スタジオ戻ったら、風邪がまたぶり返してきて、咳がとまらず、頭痛まで。アレンジにOKは出してもらったが、それ以上の作業は出来ず。電車のある時間だったが、タクシーで帰る。明らかに体調が落ちていて、イヤ〜な感じ。週末はライヴなので、立て直さねば。

07.08
喉が痛い。こんな喉を腫らすなんて、小学生の時以来に思う。熱っぽく、目は涙目。でも、寝てばかりもいられない。寝ているより、起きている方が咳は出ないので、起きてもろもろ事務や連絡など。夕方にスタジオ行って、ちょっとアレンジ作業の続き。細かい音色作りなど。でも、すぐにヘタって、8時頃には終了。

07.09
体調はあまり変わらず。見つからなかった体温計が見つかったので、体温計ると37度台前半。午前中はともかく休むことに。
午後はバワリー・キッチンで小野島大氏とミーティング。内容はヒミツ。結構、深い話もする。
その足でサウンド・アライヴに。ハード・ディスクが置きっぱなしになっていたので、取りにいったのだが、今日のAスタはBRIANと書かれていたので覗かせてもらう。堀内くんやA&R渡辺さんと少しお喋り。
家に戻って一休みの後、スタジオに。朝日美穂レコーディング。今日は新曲にトライ。リズム・トラックをスパスパっと打ち込み。熱があるせいか、妙に浮かれて、エイティーズなスカリプソウルというか、往年のコンパス・ポイント風のリズム・トラックを作る。が、だんだん喉が痛くなってきて、喋るのも苦痛になってきたので、早めに終了。

07.10
薬は飲まない。医者にはかからない。風邪ごときで医者に走る輩をいつも笑ってきた僕が、今度ばかりは弱気になりました。
昨夜はともかく喉の痛みがひどくなり、ちょっと怖かった。このまま喉の腫れが大きくなって、呼吸困難になるんじゃないかと。かつてFMのラジオ番組の仕事をしていた頃、仕事仲間の制作会社の人が仕事中にそうなって(原因は過労)、救急車で病院に運ばれ、喉を切開して、管を入れて一命を取りとめたのを思い出したり。
もうひとつ、ずっと心に引っかかっているのは切石智子さんの死で、生前、親しくさせていただいたわけでもない僕が、そのことについて書くのは憚られるところもあるのだけれど、でも、考えずにいられないのは、同じことは僕の身に、あるいは僕の親しい誰かの身に起きても不思議ないということだったりする。ギリギリのところで生き過ぎていて、精神が休もうとしないので、身体が突如、悲鳴を上げる。そうだったとしか思えない人の死を僕は多く見過ぎてきた。でも、こと音楽なんてものに関わると、人はしばしば、そういう生き方を選んでしまう。
7月1日の晩は僕も家でひとり、ボロ切れのようになって倒れていた。先々週末からの関西行き〜朝日美穂ライヴ〜さかなレコーディングはやる前から過酷なのが分かっていて、でも、何とか乗り切ることができた翌日。その日から体調を崩して、ついに近年にないところまで落ちた。でも、それだけで済んだのかもしれない、僕は、とも思う。
切石さんの生前の仕事を僕がどれだけ知っているかは心許無いところだけれど、つい二週間ほど前にも、「BAJOFONDO/TANGOCLUB」についての原稿を書く時に、切石さんの文章を参考にさせてもらったばかりだった。中南米の多様な音楽文化、とりわけ、現代的なそれについて独自の情報と見識を持っていた彼女の死は、日本の音楽評論にとって大きな損失になるのは間違いない。先日来からOWNER'S BBSで、僕や野間くんやmmさいきさんが言葉をぶつけあっていた命題は、現場へ行くこと、参賀すること、繋げること、だったりしたけれど、切石さんが優れて、それらに意識的なジャーナリストなのも明らかだった。だから、遠くから見ていても、刺激的な存在だった。
僕が切石さんに会ったのは二度しかなく、二度目は前に書いたように、去年の9月、アレハンドロ・フラノフを紹介してもらった時だった。初めて会ったのは野間くんがミュージック・マガジンを去る時の送別会。場所は高円寺のマーブルトロンで、奇しくもあそこにはみんないた、上の激論をしていた男達は。野間くんの旧友であり、関西アンダーグラウンドの生き字引である切石さんのオモロイ話に湧いたのを思い出す。議論だけしている場合じゃない。現場へ行くこと、参賀すること、繋げること。やらなきゃいけないのだ、これからは切石さんの分も。そう思ったりもする。でも、ヴァイリタリティー論は放棄しよう。ヴァイリタリティーだけでは乗り切れないことはあるのだ。
学芸大の駅前で内科を探して、知らない医院に飛びこんで、診察してもらう。やはり喉は相当ひどい炎症を起こしているようだ。もらった抗生物質と3種類もの薬もちゃんと飲む(普段は医者にもらった薬の半分も飲まないのだが)。しかし、あまり症状の改善は見られず。
夕方、渋谷で某ライヴハウスのブッキング・マネージャーとミーティング。さすがの情報量に唸る。見たことのないバンドは一度、見てみたいという、それはもちろん職業意識ではあるのだろうけれど、でも、物凄い貪欲さを感じる。こういう人が随所にいてくれないと面白くならないですよ、音楽シーンは、とも思う。
渋谷でフライヤー蒔きの後、スタジオに。が、体調がさらに落ちてきたので、作業は諦め。あすの新川忠リハーサルの予習だけする。
詩野ちゃんから電話があって、祐天寺で会うことに。おおむらで蕎麦。おばちゃんが「こないだ小西さんが持ってきたんだけれど」とビクターの蕎麦コンピを見せてくれた。岡村詩野責任編集の音楽雑誌「KITTEN」の創刊号はついに完成したそうです。僕は今回は何もお手伝いはしていませんが、でも、コントリビューターには名を連ねています(精神的貢献?)。
詩野ちゃんにも「身体には気をつけなさい」とさんざん叱られて、タクシーで帰宅。

07.11
朝はまずまず。薬飲むには食事をしなければならないので、公園を抜けて、フレッシュネス・バーガーに8時開店と同時に飛びこむ。スープとサラダでゆっくりする。家に戻って、ES125Tを今日はソフトケースに入れ、代々木のリハスタに。何と新川忠バンドは10時からの朝練。新しいカヴァー曲をその場でちゃらちゃらっとアレンジ。キーがGの曲に、ベースをF#でペダルで弾いてもらい、今までになくオルタナ・ロックな感じにしてみたり。ギターもかなり好きにやる。後は軽く通しリハして終了。さすがに体調悪いのはバレバレで、みんなに明日のライヴ欠場を心配されるが、まあ、それは大丈夫でしょう。
外に出ると猛暑、らしかったが、僕には実のところ、よく分からない。渋谷でなるべく柔らかい食べ物を買いこんで、2時過ぎに帰宅。食事して薬飲んで、ともかく休む。が、医者からもらった薬はあまり効いている様子がない。体調自体はそれほど悪いという自覚がないのだが、ともかく、喉がキツイ。だんだん物を食べるのが、いや、水を飲むのすら辛くなってきた。寝ているのに、夕方から熱が出て、38度を越えてしまった。
仕方ないので、近所に最近、出来たばかりの内科に行く。また5種類も薬をもらう。が、ぜんぶ飲むのはどうか? 最初の医者にもらった抗生物質はあまり効かなかったようだ。そもそも抗生物質は細菌には効くがウィルスには効かない。飲む意味があるのかどうか?
ネットで手元にある9種類の薬を検索。最初の医者にもらった薬の中にはステロイド系の消炎剤がまじっていたので、そっちのセットは飲むのを中止することにする。抗生物質は今日もらった方をとりあえず飲むことに。あと、解熱、消炎の薬は飲むが、咳止めと胃腸薬はやめることにした。しかし、抗生物質といっても、いろんな種類があるんですな。そんなもん飲まずに、自分の免疫力だけで治すに越したことはないのだが。
ネットで調べるうちに自分の現在の症状が何なのか、ほぼ分かってきた。これは扁桃周囲炎というものだろう。風邪の症状からちょっとタイムラグがあって、喉の片側だけが痛くなり、リンパ腺も腫れているというのはズバリ。あと、大人の場合、過度の肉体的・精神的疲労が引き金になりやすいらしい。昨日書いたFM制作会社の人もこれだったはずだ(扁桃周囲炎から扁桃周囲膿瘍に進むと、呼吸困難を引き起こす)。しかし、昨日の医者も今日の医者もそこまでの診断をしていない気がする。リンパ腺に触ってもいないし。
どうも、この手の病気は内科では駄目で、専門の耳鼻咽喉科に行くべきなのだな。なので、また検索。バッチリの店、じゃなかった医院を自由が丘に見つける。明日のアサイチで行ってみよ。
ともあれ、あすのライヴは下北沢440、新川忠は8時20分くらいにオンステージです。熱っぽい演奏しますよ、たぶん、オレ。

07.12
喉が痛くて、早朝に起きてしまう。喉というより副鼻腔に近いあたりに痛みが昇ってきて、たぶん、呼吸による乾燥のせいもあるのだろうが、寝ていると息を吸う度に痛い。仕方なく、もう起きてしまって、うがいなどしつつ、耳鼻咽喉科に行くことにする。
朝の9時に飛び込んでも、すでに結構な混雑ぶりの耳鼻咽喉科で、3日連続の初診。しかし、違いますな、耳鼻咽喉科は。内科の診察では、喉が痛いと言っているのに、聴診器で胸や背中を触るばかりで、肝心の顎の下のリンパ腺など調べもしない。が、耳鼻咽喉科では内視鏡みたいのを喉に突っ込んで、いきなり写真撮影。この時、ファルセットで声を出さなければいけないのには驚いた。舌を突き出しながら、ハ〜、とオクターブ上のDの音出したりするマヌケな図。で、患部をポラで見せてもらいました。ぷっくり腫れていて、見るからに痛そう。
しかし、一方では耳鼻咽喉科では体温も計らないのね。あと、投薬に関しては、う〜ん、ここもあまり信頼できそうにないな。というのは、最初に行った内科の処方せんを見せたところ、抗生物質を含め、おおむねOKだが、鎮痛、解熱、消炎の薬は比較的、効き目が弱い物なので、強い物に変えましょう、ということで、別の処方せんを書いてくれた。が、その処方せんの内容は実は二日目に行った内科でもらった鎮痛、解熱、消炎の薬と同じ。ということは最初の内科でもらった抗生物質と、二日目の内科でもらった鎮痛、解熱、消炎の薬を飲めばいい、ということになるが、昨日、ネットで調べていたら、その抗生物質とその鎮痛、解熱、消炎剤の組み合わせは問題がある、としているサイトがあったのだ。果たして、この耳鼻咽喉科はそういう情報を持っているのかどうか?
というあたりを考えると、投薬に関しては、二日目の内科が一番信頼できそう。ステロイド系は出していないし。なので、ポラもらって帰ってきた以外は、耳鼻咽喉科に行っても、特にどうってことない結果になってしまった。
しかし、昨日、抗生物質を変えたのは正解だったようで、二日目の内科の薬のセットを3回飲んだだけで、今日の昼には症状はかなり改善された。朝食、昼食はまだ飲みこむのが辛かったが、一度、昼寝して、夕方、下北沢440に向かう頃には急にリンパ腺の腫れも引き、喉の痛みも驚くぐらい少なくなっていた。
おかげでライヴは無事に出来ました。体調的にリハの時間が一番良くて、本番は薬が切れて、咳が出始めたり、やや苦しかったが、演奏にはそれほど影響しなかったかも。僕個人に関して言えば、今日はまあ、実力通りでしょう。バンド的にはちょっと今日は音がうまく混じりあわなかったかな。でも、楽しくできました。そうそう、結構、スライドを弾いたのだけれど、僕はギターを膝に乗せて、ラップ・スティール・スタイルで弾くので、驚く人が多かったみたい。
松山晋也さんがわざわざ見に来てくださったのにはビックリ。本番直前に下北の商店街でバッタリ会ったFLEX LIFEの大蔵くんと青木さんも来てくれた。あとはBBSでおなじみ、立石嬢とHAPPYSAD嬢も。
しっかし、終了後、440の前で新川くん、森くん、僕、HAPPYSAD嬢、立石嬢がタムロし(この時点で十代から四十代まで年齢バラバラな奇妙な集団)、立石嬢が持ってきた受験問題集を開いて、あ〜だこ〜だ言っている図はシュールだったでしょうなあ。今日の立石はT.A.t.u.風の制服じゃなかったから、まだ良かったが。
最後のバンドが終って撤収。僕はビールの一杯も飲めないので、なんとなく解散。ひとりで駒沢大学駅前で魚定食食べて帰る。
家でしばらく休んだ後、この体調なら大丈夫そうと判断して、終電乗って恵比寿に。MILKでaupeのライヴ。ちょうど始まったところだった。いや〜、良いですよ、コースケとレオくんのツイン・パーカッション編成のaupe。ダンス・ミュージック、あるいはサイケデリック・ミュージックとしてはphatよりはるかに強力。実際、フロアでは人が踊る、踊る。セット修了時にはみんなが両手を上げてアンコール。ちょっと、こういう音楽をやるにはセットが短くて、詰め込みすぎた感があるよね。2時間くらいのセットで、ひとつのネタで行くところまで行く構成のを見たいな〜。
アンコールはなしだったので、後半のnumb+aupeのセッションに期待・・・と思ったのだが、aupeが終ったのが1時半。タイムテーブルを見たら、numbは3時から。さらにnumb+aupeのセッションは3時40分から。う〜ん、さすがに今日のオレは持たないか。煙草の煙で喉も辛くなってきたので、2時頃に帰ることに。悔しい〜。どなたかnumb+aupe、目撃した人は報告を。

07.13
9時に起きてしまった。薬飲むためには何か食べないといけないので、近くのアンナ・ミラーズへ。ファーマーズ・ブレックファストという、パンケーキにトーストにフライドエッグふたつにベーコン、野菜は何もなしという、超アメリカンな朝食セット。オーバーオールしか履けない太っちょのファーマーを作り出してきたカロリー・オーバーのメニューだが、年に一度くらい、こういうのが食べたくなることがある。
薬を飲むために一日三食食べなければならないのは普段、二食しか食べない僕には結構、難しい。もともと間食ってのもあまりしないからね。こんな調子で三食ちゃんと食べていたら、アッという間に数キロ太りそうだ。
喉の具合はかなり良くなったので、抗生物質以外の薬は今日から飲むのをやめた。喉にコロニーを作っている細菌はここでがっちり抑えこみたいが、炎症とか発熱とか咳とかは身体が示す正常な防御反応なので、薬でとめてしまうのが良いこととは思えない。三日間、薬漬けだっただけでも、僕には十分、ヘヴィな体験だった。ちょっとした気分の変化やふとした行動も、ひょっとして薬飲んでいるせいか?と疑ってしまったり。
薬をやめたら、あっさり熱は37度前後まで上がりだし、咳も少し出るようになったが、これこそが正常だろう。こっからは自分の免疫系に働いてもらうしかない。思えば、大変だよなあ。免疫系の人達は(ヘンな表現だが)。現実世界(社会)での僕のストラグルは、大変な中にも喜びや笑いを見出したりしつつやっているわけだけれど、ミクロな世界での闘いにはそんなものもあるはずなく、僕の無理がただただ免疫系にふりかかる。でも、24時間休みなく働いてくれているわけだ。少しは気を遣えよ、彼らにも。
幸い、静かな日曜日。熱くもなく、寒くもなく、午後からはしとしと雨が降り出して、外出もさせてくれない。ベッドでうつらうつら雨音を聞いていると、それだけで気持ち良かったり。そういえば、バリー・ホワイトが死んじゃったんだ、と思いつつ、ラヴ・アンリミテッドの「WALKIN' IN THE RAIN WITH THE ONE I LOVE」など取り出して聞いてみたり(この曲のバリー・ホワイトの語りはR&B史上最高の語りでしょう。合掌)。
そうそう、僕はイントロに雨音が入っている曲が好きなんです。それだけで、ほぼ例外なく。一番最初に好きになったポップスの曲は、牛も知ってるカウシルズの「雨に消えた初恋」だし。なので、朝日美穂「雨上がりの午後」のイントロにもお約束事として入れています。でも、また入れたいぞ。いろいろあるんですよね、一口に雨音と言っても。次の機会のために、この季節に録りだめしとくのがいいかも。