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06.09
ライヴの翌日というのは、打ち上げの酒も残っていたりして、ヘロヘロなわけですが、月曜日ですからね、そうも行かず。フジワラダイスケ「白と黒にある四つの色」のアートワークがなかなか印刷物では再現できないので、対策協議したり。果たして間に合うのか、発売日に。
もろもろ雑用こなした後、午後からスタジオに。パワーアンプのフューズが飛んだままなので、シリアスなレコーディング作業はできないのですが、朝日とふたりで新曲の作詩(!)。オレは作詩だけは出来ないのよ。出来ないのだが、この曲、無頼庵とのデュエット用なので、男が歌うとどうなるのか、やってみないと分からないということもあって、僕を無頼庵に見立ててつつの作詩作業。朝日の作るメロは、音が飛ぶので、声枯れましたですよ。
途中で、スタジオ抜けて、ふたりで渋谷NESTに。フォーク・インプロージョンのライヴ。が、同じくらいお目当てだったのが、京都のLMITED EXPRESS(HAS GONE?)。CDも好きだったけれど、ライヴは20倍くらい良かった。ともかく、バンド感があるバンドで、よれたところを含めて実はタイトという、バンドでグツグツにやり続けないと絶対に出ない、独特のグルーヴが出ている。そういうバンドが好きなのです、僕は。他のバンドじゃ、役に立たないようなメンバーが、そのバンドだとめちゃめちゃカッコイイってのが良かったりして。さかなにしてもそうだし。
終了後、楽屋でメンバーとちょっと話を。初対面だったのですが、今月、僕が大阪行く時にまた会いましょう、と約束。
その間にフォーク・インプロージョンが始まってしまい、会場も物凄い混雑で、何も見えない状態だったので、こっちは14日に出直すことにしてスタジオに戻る。再び、作詩作業。深夜に完成。それからラジカセをモニターにして、デモ録音。僕は歌いませんでしたけれどね。仮ミックスなど作るうちに、すっかり明け方に。ハードな日が続きます。

06.10
さすがに起きられず。いや、一度、起きて、BBSに書きこみなどして、出掛けようと思ったら、マスタリングの時間が夕方以後に変更になり、もう一度、寝たんだった。
夕方、自転車で初めて行く不動前のスタジオに。さかなの「白い家」を収録するエーヴェックス・イオのコンピレーション、「DISCOVER URC」のマスタリング。A&RのOさんはナイスガイです。エーヴェックス・イオのURC物といえば、CCCD回避のためのCD-EXTRA仕様で話題になったこともありましたな。そのへんの話を聞いてみたくもあったのですが、今回はパス。このコンピレーションがCCCDなのかどうかも知りません。知らないでおこう、という意識もどこかにあったのかな。
で、マスタリング。う〜ん、教訓はですね、今後はこういうコンピレーションに曲を提供する時は、自分で完璧にマスタリング作業も終えたDAT、あるいはデータを持っていこうということでした。
そもそも、16bitのデータしか持ちこめない、というところで、僕にとっては大半のマスタリング・スタジオは終っています。アメリカじゃ、そんなんじゃショーバイにならないぜ。PRO TOOLSの置いてないマスタリング・スタジオなんてないですからね、もはや。
でもって、今日行ったスタジオの使用機材はというと、PANASONIC SV3700、FORCUSLITEのBLUE SERIES EQ、APOGEE AD1000、TC ELECTRONICSのFINALIZER PLUS。モニターはYAMAHA 10M。BLUE SERIES EQを除くと、プロ・スタジオに来たって旨みがない。つ〜か、もはや古臭い。PANASONICのDATもFINALIZERも前にERROR RECORDINGで使っていましたが、もう使わなくなりました。電源まわりやケーブル、機材の設置法(震動対策)などを見ても、雑だしな。見栄でもいいから、音質のためにウチは最大限のことをやっています、という姿勢が見えないと、プロ・スタジオに来たって気分が盛り上がらないじゃんか。そうそう、使っているCD-Rは誘電の現行32倍速。ここでも終っています。
エンジニアはジェントルな方だったので、EQはポイントを指定してやってもらいましたが、FINALIZERのソフト・リミッティングの癖が好きじゃない僕としては、コンプがそれしかない時点で、もう諦めねばなりません。今回のミックスはヴォーカルはノーコンプですし、トータル・コンプもほとんどかけずに作ったので、マスタリングで音圧感を出したかったのですが、FINALIZERに突っ込むのは嫌だしな。こういう時は多くを望まず、もとのミックス・バランスを崩さずに行くしかない。
でも、ともかくプロ・スタジオとしてはレベル低すぎ。が、それが通っちゃうのが、日本の音楽界のレベルなんでしょう。つまりは、望んでいるか、望んでいないか。トム・コインやスティーヴ・マーカセンと勝負しようなんて、考えなければいいわけだ。オレは考えちゃうけれどね、個人で買えるレベルの機材でやっていても(それでも今日のプロ・スタジオよりは投資している)。
自転車で帰ろうと思ったら、後輪がパンク。仕方なく、押して帰る。トホホ。途中で鰻食ったが、2時間以上もかかって、ヘトヘトで帰宅。一昨日からの疲れもあって、早めにベッドへ。

06.11
アップルズ黒田くんが絶賛する駒沢公園前の一風堂に行ってみる。このラーメン屋、いつも行列が出来ているが、僕にとっては、家から一番近い食い物屋でしかない。夜中の12時近くになって、家に食べ物がなくて、仕方ないってので飛びこむことが年に何度か。フツ〜の時間帯にはまず入らない(並ぶしね)。でも、ちょっと並んで、昼に入ってみたら、閉店間際よりおいしかった気が。グツグツ煮て、カルシウムで濁らせちゃうトンコツ・スープも、やはりフレッシュな時間帯の方がおいしいようだ。でも、特筆すべき店とは思わないですけれどね、やはり。かおたんラーメン(かつて、DJが選ぶラーメンの1位になった)がこの近さにあったらなあ。
昨日、自転車押して歩いたせいか、あるいは、ライヴの疲れが今頃出たか、足がガクガク。遅い午後まで、あれやこれやの雑務を片付け、ディストリビューターにはっぱかけたりした後、渋谷に出て買い物。アロハばっかり見てたりして。13日のアロハは金魚柄に決めましたが、三軒茶屋に売っているバンビ柄のアロハも気になる。
スタジオへ行くと、なぜか、キャロルが爆音でかかっているですよ。朝日がCD聞いている。いきなり一緒に歌っちゃいました。高校の昼休みを思い出すなあ。でも、6/29のライヴでカヴァーしたいって? やめなさい、と説得。ギターを弾いてもらう石垣くんも電話で、やめた方が、と。ギター弾く立場だったら、そう思いますよね。シンプルなロケンロールこそ、洒落では出来ない。
じゃあ、何のカヴァーを?という話になって、候補に出たのが、なぜかワムの「ウェイク・ミー・アップ」。でも、CDはもちろん手元にないです。bitmusicで買って聞く? いや中古盤屋に行けば、100円くらいでありそう、ということで学芸大の中古盤屋に行ってみることに。が、ないです、ワムは。二軒見たけれども、1枚も。結局、関係ないエサ箱漁りだけして、レブロン・ブラザース、アントニオ・カルロス&ジョカフィなど購入。100円CDの中から友人のミュージシャンの作品を保護。
中古は諦めて、次はツタヤに。80年代のヒット曲コンピを借りて、スタジオに戻る。でも、「ウェイク・ミー・アップ」は意外にアレンジしようがなく、面白くないかな〜という結論に。なので、別の曲にトライ。この曲、このアーティストが、いや、ちょっと名前を出すのもはばかられる(ワム以上に)ハズカシ・エイティーズなんですが、これをジョルジュ・ベンみたいなアコギでやったら面白そう。なので、パッとギター・アレンジ考えて、いきなりレコーディングしてみました。う〜ん、これは大受けか、はたまた大ブーイングあるかも。
ヴォーカル録りもしてデモをミックス。無頼庵と石垣くん用のMDを作ったりしているうちに深夜に。今日はこんなことしているはずじゃなかったのにな。
が、まだまだハプニング多い日。LOVADELICコニーから電話で相談事。ちゃんと会って話そうということで、深夜、バワリー・キッチンに。閉店近くまで、かなり深い話を。帰ったら、一通のメールが。非常に嬉しいメールで、すぐに返事を。やるぞ〜、ガオ〜。今年はますます大変な年になりそうです。どうか体力と財力が持ちますように。

06.12
昨夜も朝帰りに近かった。それからメールの返事書いて、BBSに書きこみして、明るくなってから寝て、9時には起きてまたBBSに書きこみ。詩野ちゃんからメールが来たので、返事書いて、書いているうちに思うことあって、関係ないことまで書いて。
ところで、日曜日の新川忠のライヴは岡村女史によって、朝日新聞でレヴューされるらしいです。写真入りで。初めて人前で歌って、それが大新聞に載っちゃうとは。でも、本人には言わないでおこ。
午後より、スタジオで2カ月ぶりの田中亜矢レコーディング。僕のギター・ダビング。田中さんのギターとヴォーカル、向島ゆり子さんのヴァイオリンですでに完パケているトラックに、セカンド・ギターを入れる。接着剤的な役割のセカンド・ギターですな。でも、これが難しい。試しに数テイク。いろいろやってみるが、どうも集中度を欠いていて、方向性が定まらない。そうするうちに、指が早くも限界に。僕のテイラーはライトゲージでもかなりテンション高いのだ。
田中さんの冷静沈着なディレクションで、ようやく、やるべきことを思い出す。思い出したら、コレは行けてる!ってワンテイクが録れた。あとは細かい直しをして完了。しかし、レコーディングには必ず来た、来た、来たって瞬間があるのが面白いですね。それを引き出すことができて、逃さずテイクを残すことができるのが良いプロデューサーであって、そういう意味で田中さんはプロデューサーの資質があると思った。あのテイクのここが良かったとか、必ず憶えていてくれるし。そのうちリンダ・ロンシュタットみたいになったりして。
ギタリスト仕事が終ったところで、シュークリームほおばりつつミックス突入。田中さんがうしろにいるにもかかわらず、ブツブツ言い続けながら、ワイアリングのために、何度も卓のうしろに這いつくばったりしつつ、数時間ぶっとおしで作業。完成しました。サイコ〜の仕上がりでしょう。田中さんのアルバムのムードはちょっと違った、ダークな奥行ある作品になったはず。
あ、田中亜矢さんのアルバム「朝」は先週くらいに発売になったばかり。僕が帯を書いています。13日は吉祥寺タワレコでインストア・ライヴ。6時から。これを観て、その足で新川忠@高円寺マーブルトロンに行くってコースは最高ですね。

06.13
新川忠セカンド・ライヴの日。意外に早起き。入り時間が遅いこともあって、遅い午後まであれこれ雑務。昨日の田中亜矢さんのミックスを聞き返すが、ちょっと不満が残る。わずかな質感の問題なのですが。EQなのか、コンプなのか。スタジオ行ってやりなおそうかと思ったが、そこまでの時間はないので諦める。
キーボードの森くんと朝日美穂宅にノード・エレクトロを借りに行って、4時に高円寺マーブルトロンに。今日はNASICAのリリース・パーティー。初めてNASICAを見る・・・って、彼ら自身、3年間で4回目のライヴだそう。森くんの書く曲はメロディー良いです。女性ながら、ウッドベース弾きながら、ヴォーカルを取る助川さんは大柄で自信に溢れて見えて、日本人ぽくないミュージシャンです。もうひとつの共演者は千の小鳥で、YMO直系のテクノ+超絶テクのボッサ・ギター+歌のおねえさん的なワケワカンナイ、しかし、非常にインパクトのあるバンド。すごいブッキングっちゃあ、ブッキングですね、このイヴェント。
新川忠リハは6時からだったので、高円寺の街をフラフラ。古着など見る。またアロハ購入。戻ると、もうバンドは揃っていて、僕待ちの状態。サラッとリハ。モニターが厳しいな今日は。
お客さんは多いとは言えないですが、9割が女性。BBSにも来てくれるHAPPYSADさんが多摩地区限定のカレーを差し入れに持ってきてくれたり、久しぶりにアニキ(ニックネームです。全然、年下の女性なのですが)に会ったり。でもって、立石さんも制服で登場。カ、カワイイ。ごめんさい。制服似合わんだろ、なんて言って。今度、ダイスケにも見せてやってくれ。
しかし、新川くんほかに「友達の立石さん」と紹介しても、みんな一瞬、引きます。友達という以外、紹介しようがないのだが。姪です、とか言っておいた方が無難かも。
マーブルトロンはステージが暗く、サングラスしたら、何も見えません。一応、譜面を立てているのだが、曲名すら見えない。でも、一度、ライヴをやるとコード進行とかは楽勝になっていて、もう間違えません。だいたい間違える、間違えないってレベルでライヴやってちゃあねえ。でも、別のところではいろいろ問題点も見えたりはして、バンド全体の出来としては、ビギナーズ・ラックがあった前回の方が良かったかもしれない。
しかし、次はもうない新川忠ライヴ・・・のはずだったが、高校生を含む女の子達から「もっとやってください」「次も行きます」などと言われるうちに新川くんも軟化。7月もライヴやることに。実はブッキングしてあったんですけれどね。7/22、渋谷7th Floorでもう一度、やります。
演奏終了すると、野間くんがいて一言、「育ちの良さそうな音楽ですな」。ワハハ。でも、思うに「育ちが良い」ことと「良さそう」なのは違いますね。育ちが悪そうな音楽をやっている人達が、実は育ちが良いこともあるのはローリング・ストーンズやパブリック・エナミーの例を出すまでもなく。育ちの良さそうな音楽が、実は凄惨な人生の賜物であるってこともあるかもよ。
11時頃にイヴェント終了。ノード・エレクトロを朝日宅に戻して、それからスタジオに。どうしても、今日のうちにやっておきたくて、田中亜矢ミックスの直しをする。が、これが難しい。ヴォーカルとアコギのわずかな質感の問題なのだが、何がいけないのか考え出すと、振りだしに戻らねばならなかったりして。EQを変え、コンプを変え、ルーティングを変え。4時間くらい、その一点だけのために作業するが、どうしても納得がいかない。5テイクも落すが、ツマミが1ミリ違うか、違わないかの差なので、たぶん、僕以外には聞き分けつかないかも。でも、決め手に欠ける。
と、夜も明けてきた頃に、マックがフリーズ。今日は諦めなさいってことか。仕方なく、タクシーで帰宅。

06.14
ライヴのあとに、さらに深夜、ミックスするというのは、さすがに身体に来て、昼間は抜け殻のようでした。が、遅い午後から朝日美穂レコーディング。アレンジが膠着状態の1曲。2カ月くらい前のデモの方がグルーヴがあった。いろいろやっていううちに、整然とはしてきても、グルーヴが失われていくというのは、よくあることで。パーツの再検討。ベーシックになっているキーボード・パートを誰かに弾きなおしてもらうことに。
渋谷NESTでフォーク・インプロージョン二日目。タクシーが道、間違えおって、着いたら二階堂和美さんは最後の1曲。会場は物凄い混雑で、次のモールスは3曲ほどで諦める。ロビーでかなり酔っ払っていたイルリメとお喋りしたり。
フォーク・インプロージョンはルー・バーロウが出てきて2曲やった後、新しいトリオでの演奏に。バンド名、変えた方が良いかもって思うくらい、太い出音の、本格派のバンド感ありの演奏でした。ニール・ヤング&クレイジー・ホースのようでもあり、時にベースとギターがユニゾンで疾走するあたり、B級プログレのようでもあり。ドラムはジョン・ボーナムみたいだし。ま、詳しくは後日、朝日新聞で。
スタジオ戻って、あした歌入れする別の曲の検討。あと、ライヴ用の打ち合わせ。思いついて、とある曲のピアノ・アレンジ、いじったり。3時頃まであれこれやって帰る。

06.15
父の転院先が決まって、ホッとしたり。来週以降はそれもあって、物事が恐ろしく立てこみそう。スケジュールを立て直して、幾つか、物事を諦める。
夕方から、また朝日美穂レコーディング。仮歌録りの後、歌詞のブラッシュ・アップに時間がかかり、コーラス録りまでは進めず。