OWNER'S LOG

05.12
珍しく二日酔い、というか4時間くらいしか寝ていないので、ゆうべ飲んだワインが抜けていない状態で、なぜかフラフラと起き出し、最近、出来た近くのオーガニック・コーヒー店に。回らない頭で、やらねばならないことを整理してみるが、急を要するのはスタジオのマックのメンテだという結論に達して、自転車でスタジオに行く。というのも、かなり危ない状態なのです、最近。バックアップ取っていないレコーディング・データが増えてきて、しかし、FIREWIREのHDがフォーマットできない問題があったり、PRO TOOLSまわりもAD8000SEに換えたせいか、ちょっと不安定に感じられる。マックがほとんどすべての仕事のプラットホームですから、すごく不安な状態。
なので、OS9.1のインストールをして(これでFIREWIREのフォーマットの問題は解消)、すべてのHDのチェックをして、ファイルのバックアップを取って・・・というのに、ほぼ一日を費やす。なにしろ、SCSIのハードディスクだけで70G、FIREWIREのHDと来たら、全部で400Gくらいある。全部チェックしたら、FIREWIREのHDが一台、認識せず。ドライヴの情報すら読めないので、絶望的。これは20Gの古いヤツで、ファイルのバックアップはあったから問題ないけれど、でも、HDは消耗品ということをあらためて思い知る。
途中、コピーに1時間以上かかったりもするので、自転車で目黒区内をまわり、CD-R購入。国産の12倍速や16倍速のCD-Rもまだあるところにはありますね。当分、サンプル焼いたりする分も含めて、十分な量を確保。そうそう、こないだ買ったイルカはウェルバランスで、マスターにも使える音質でした。盤面がプロっぽくないけれど。今時、コレを箱で買えたのはかなりラッキーだったのかも。

05.13
家でジミ〜に事務作業など。終らね〜っす。夕方より朝日美穂レコーディング。が、PRO TOOLSのトラブルではかどらず。AD8000SEと888 I/Oの併用状態で作業していると、888 I/OのDAが発音しなくなる。プリファレンスを捨てたりして何とか解決し、ようやくヴォーカル録りと思ったら、今度はAD8000SEが不調。クロックずれのような音を発した後、DAから音が出なくなる。何かクロックまわりのセットアップがまずいのか。
買ったばかりのAD8000SEのトラブルにはかなり青くなるが、888 I/Oを外して、単体セットアップで復旧。ヴォコーダーに加えて、オートチューンも試してみようということで、ヴォーカル・リフレインを録音。しかし、オートチューンはピッチが正確だとあまりかかってくれないので、わざとピッチをズラすため、音程のある楽器をすべてカット、ドラムだけを聞いて歌ってもらったりする。さらにオートチューンの手前にピッチ・シフトを入れて、デチューンした後に、オートチューンでピッチ補正するとか、いろいろ試す。シェールやマドンナもいろいろやっているんだろうなあ。しかし、今更「あめ〜りかん・ら〜いふ」みたいのもなんなので、もっと面白いことはないのか?とあれやこれのエフェクターを試したり。深夜にこんなことばかりやっていると、何が何だか分からなくなってきますが。
デニーズで食事の後、明け方、帰宅。デニーズの夏のメニュー、冷たいカペリーニは結構、好き。

05.14
午後よりスタジオ。ポリスターからデビューするCONTACTというバンドのマスタリング。プロデューサー、THE ITさん以下、4人が来訪し、狭いスタジオで作業。ブリティッシュな感じのギター・バンドで演奏が非常に巧み。ヴォーカルはポップ。4曲のミニ・アルバムで、2曲は先日、湯川潮音ちゃんのレコーディングで一緒になった中野さんのミックス。2曲はライヴ音源でマスターはMD。後者の方が面白そうだったので、先にやる、ベースがあまり聞こえない状態だったが、NEVEのEQを通すとなぜか音が立体的になり、ベースが聞こえてくる。ほとんどモノラル状態だったが、TCのFINALIZERのWIDE IMAGEプログラムで疑似ステレオに。AVALONの747でチューブの色もつけてコンプし、さらにPRO TOOLSでリヴァーブをつけ、そのリヴァーブ量もパートごとにオートメーションで書きこみ。最後はWAVES L1でバリバリに突っ込んで、元はMDとは思えない爆音に。なにしろ、こういうのはPHATのカセット音源のマスタリングでさんざんやったので大得意。ERRORを恐れぬERROR RECORDINGならではの乱暴なマスタリング。プロ・スタジオではこんなことは出来ません。
スタジオ録音の2曲はすでに高品位なミックス。かなりトータル・コンプもかかっていたので、レベルを稼ぐことは考えず、出音の太さとヴォーカルの抜けのバランスに注意して仕上げる。意外に時間がかかってしまって、8時終了。
入れ換わりにさかなのふたりがやってきて、先日のレコーディングの続き。POCOPEN先生のパーカッション・ダビング! こないだのラフ・ミックスでちょっと高音域がさびしい気がしたので、ふりものなど入れては?という提案をしたところ、POCOPENは最近、シェイカーに凝っているということで、今日のダビングに。シェイカーとトライアングルかわりの音叉をダビング。良い感じ。12時頃に終了。ツカレタ〜。
でも、家に戻って、もう一仕事。STOP・PLAY・RECORDsの商品構成の追いこみ。そういえば、一昨日、我が出身高校(都立小山台)のある武蔵小山まで自転車飛ばして行ってみたのだが、駅前のPET SOUNDSは健在。というより、素晴らしい商品構成で唸りました。もちろん、駅前の小さなレコード店ですから、一番売れるのはロシアのレスビアン・デュオだったりするんだろうけれど、それでいてナチュラル・フォーのアナログ盤もディスプレイしてあるような店。当然ながら、ビーチ・ボーイズや大瀧、山下まわりは強度にマニアックで、往年のパイドパイパーハウスを思い出したり。こんな店がうちの近所にもあったらな。

05.15
午後、スタジオでサウンド&レコーディング・マガジンの取材。藤原大輔ソロの最初の取材です。ダイスケと僕がそれぞれ質問に答えていく中で、レコード作りって面白いなあとあらためて思いました。旅に似ている。どこかに辿り着いて終るのだけれど、その間には人間の英知を越えた何かに導かれているような瞬間が必ずある。このアルバムの成り立ちは僕が過去に関わったどんな音楽作品とも違っていて、何がどうしたら、こんなものが出来上がったのか、説明は出来るのだけれども、でも、僕ごときには語れない、もっと凄いものだと思えてならなかったりもします。別の言い方をすると、オレは自分でも想像もしなかった人生を歩んでいる、サイコ〜の旅をしている!と、このアルバムを聞いていると思えたりもするのです。
終了後、ダイチャンと渋谷に行って、ROCK ON COMPANYでEMAGICのWAVE BURNER PROを購入。昨日のCONTACTのマスタリングのシークエンス編集用。が、スタジオに戻って、大失態に気づく。動作条件はG3/500MHZ以上、G4推奨でした。オレはマスタリング用のプラグインも使わないし、並べて焼くだけなんだから、そんなにCPUに依存したソフトにしてくれなくてもいいのにな。なので、スタジオのマックでは使えず。仕方なく、ハードディスクごとデータを持ち帰り、家のマックで作業。家にはスタジオで使っているのと同じPLEXTORのCD-Rライターの他にYAMAHAのクラシックな4倍速ライターもあったので両方試すが、等速ではYAMAHAの方が音抜けが良かったので、こっちを採用。メディアは太陽誘電とアクシアを試すが、ハイの立ち上がりを重視したい音源なので、アクシアを採用。あしたは7時起きせねばならないので、早めに就寝。

05.16
7時にはまったく起きられず、母親のモーニング・コールでようやく起きる。急いで家を出て、実家近くの病院に。父の手術は30分ほどで終わる。それでも長くかかった方らしい。痩せこけた父の焦点の定まらない目を覗きこんで思うことは・・・うまく書けないな。特別な体験ではなく、家族を持つ誰もがこういう場面を通るのだろう。家族と向き合うということは、死と向き合うことだったりする。父とは対照的に、七十歳を過ぎて恐ろしく元気な母と叔母と一緒に昼食。叔母の車で魚定食を食べに行く。叔母は七十代も後半だが、ばりばりに運転する。先週はディズニー・シーに行ったそうだ。母はパソコン使いこなし、いつも電子辞書を持ち歩いていたりもする。ふたりの会話を聞いていると、凄いわ、この人達と思わずにいられない。30年経ってもまだまだ人生捨てたもんじゃないんだ、と思わせてくれる老人達。
ここならあるんじゃないか?とアタリをつけていた実家近くの文房具店で、太陽誘電OEMの8倍速CD-Rを大量に発見。現在の太陽誘電のマスター用と5年くらい前のデッドストックになるこの8倍速を聞き比べてみるのは面白そうだ。8倍速の方が良ければ、数分の一の値段で大量確保できるのだから。
家に戻って、雑誌の取材を受ける。「STEREO SOUND」の別冊の取材で、ベッドルームのステレオセットを公開。ちなみに、ベッドルームのステレオはCDプレイヤーがSONY XA3ES(クロック改造品)、プリアンプがAURA PA200、メインアンプがLEAK ST20(6BQ5 PP)、スピーカーがJIM ROGERS JR150、サブとしてプリメインがLEAK ST30、スピーカーがFOCALとDYNAUDIOのユニットを使った自作。PA200も内部を銅板や銅箔でシールドしたりしているし、ST20はコンデンサー交換などして完全リストアしたし、JR150もネットを再生させたし、ST30以外はすべて僕の手が入っている。どっちかというと、「STEREO SOUND」よりは「MJ」なセットわけです。全然、ハイエンドじゃないしね。アンプは50年代と60年代の超オールド。でも、GOLD MUNDやBRYSTONやAMCRONやLUXMANやその他のいろんなアンプをとっかえひっかえした後に、僕が辿り着いたのが古ぼけたLEAKのアンプだったわけで、これはもう買い換える気がほとんどない。しかしまあ、オーディオ雑誌の中では相当に浮いたシステムになるんだろうな。
思うに、僕は子供の頃から聞いてきたフツ〜に良い音が聞きたいのだ。特にプライヴェートで音楽を聞く時には。中学の時に使っていた最初のステレオは父親が友人宅から貰ってきてくれたトリオの真空管式アンプと16センチ・フルレンジのスピーカー、それに自分で買ったパイオニアのレコード・プレイヤーを加えたものだった。あのステレオより今のステレオセットが良い音をしているのかどうか? 15歳の時にあのステレオで聞いたジョニ・ミッチェルやニール・ヤングを今も同じくらい良い音で聞ければ、それでいいんだよ。目の覚めるような音じゃなくていい。心やすまる音楽的な音だったら。でも、それが難しい。オーディオの世界は進歩しているどころか、むしろ、良い音楽を良い音で聞くことを難しくする要素ばかり増えているように思う。なにしろ、CCCDなわけだから、今や。百万円もするDAコンバーターを持っていたって、ジッターだらけのデジタル・サウンドを心地よく聞くことなんて出来ないわけで。
取材が終ると、今度は入れ替わりにTHE ITさん登場。家に二組も来客があるなんて、なんと珍しい日でしょう。昨日、シーケンスを作ったCONTACTのマスターCD-Rを納品。しばらく雑談。夜は珍しく家で静かに過ごす。疲れていたので、12時前に寝てしまった。

05.17
マスタリングの仕事がまた数本入りそうということが分かったので、システムをグレードアップすべきかどうか、考える。専用にG4マックを買うのはどうか。そうすればWAVE BURNERも動くし。スタジオに2台目のマックがあれば、いろんなソフト・シンセやソフト・サンプラーなんかも使えて楽しいだろう。ならば安い買い物かもしれない。PRO TOOLSは当分、24BIT、48KHZで行くことにしたので、G4マックをベースに96KHZのシステムを組むのも面白そうだ。WAVE BURNERは96Kまで行けるから、サウンドボードを買って、WAVE BURNERをマスターレコーダーにしてしまうのはどうか? つまり、DATに録ったりするかわりに、二台目のMACにマスターを録るわけだ。88.2MHZで録って、WAVE BURNER上でマスタリング処理〜44.1MHZにダウンコンバートしつつ、マスターCD-Rを焼いたら、結果はどうだろうか? でも、88.2MHZで録るからには、良いコンバーターが欲しいな。AOPGEEは買っちゃったから、次は・・・DSDにも対応したDCSの新しいコンバーターがあれば最高だ! 思うに、将来的にはDSDレコーディング・ソフトも登場するのではないか? つ〜か、今、分かったけれど、それを作ればマスタリングの革命が起こせるじゃん! DSDレコーディングできるWAVE BURNERみたいのがあったら、それにマスターを録ればいいのだ。で、ソフトウェア上で1ビット・マスタリング。そのままSACDが作れるし、通常CDのフォーマットにも特殊なアルゴリズムを使って、ほとんど音質を落さずダウン・コンバート・・・なんてのを誰か開発しないかな。つ〜か、オレに開発能力があったらなあ、億万長者になれるかも?!
しかしまあ、こんなことばっかり考えているので、お金は出ていく一方なわけです。仕方ない。僕の欲しいものはガキの頃からレコードと楽器とオーディオ、ホント、それしかないのだから。残りの人生でやりたいことはレコードを作ること。本を作ることもまだちょっぴりはやりたいかな。ともあれ、ガキの頃から好きだったものに囲まれて、いつのまにか囲まれすぎて、ひいひい言いながら生きているのだから、文句など言えない。オレの葬式ではみんなが「あの人は好きに生きたから・・・」と突き放すように言うのではないか・・・なんてことを思うのは、昨日のオヤジのことがあったからかもしれないな。今になって、オレはオヤジのことを何も知らなかったんじゃないか、と思ったりする。オヤジもまた、ひとりで好きに生きていた。何年か前に、母親に「オヤジの一番の好物はカキフライだ」という話をしたら、彼女は「そんな話、初めて聞いた」と言った。そのくらい、家族の誰もオヤジのことをよく知らなかった。そしてもう、彼を知る機会は失われてしまった。
「音楽配信メモ」に小田晶房くんのWEB日記が引用されていたのを読む。メジャー・レーベルに原盤を売り渡してしまったミュージシャンが、レーベルを離れたら最後、原盤の使用に関して、何の発言権も持てなくなるのは当然で、それを避けるには原盤を自分で持つしかない。気に入らないベスト盤が作られるくらいのことは、リリースまもないアルバムを廃盤にされたり、作った原盤をオクラにされたりするよりはマシ。僕は逆に、ソニーに朝日美穂のベスト盤を作ってくれ、と頼んだことがあるけれども、受け入れられなかった(そこにジム・オルークとヴンダー/ヴィクセル・ガーランドの作ってくれた美しいリミックス・ヴァージョンを入れたかったのだ)。でも、原盤を売り渡しているのだから仕方がない。かわりにお金を得たのも事実だし。
メジャー・レーベルの体質や方向性に問題を感じることは多いけれども、実際に一緒に仕事した人達に対してネガティヴな感情を持つことは、僕の場合はあまりなかったりする。結果に不満足であったとしても、半分は自分の側の責任だし。もらってしまったお金のことは忘れて、音楽家としての大義みたいなものばかりを語るのも、僕には違和感がある。メジャー・レーベルで1万枚も売れないレコードを出すことの問題は、人をタダ働きさせてしまうことだ、とECDが書いていたけれども、ホント、そう思うもん。でも、そういう意識が欠落しているミュージシャンは多いし、売れなかったことを誰かのせいにするミュージシャンも多い。だったら、原盤持てよ、と思ったりもする。
CCCDの件にしたってそう。僕がレコーディングに関わったアルバムの幾つかはすでにCCCDになっている。でも、そういう仕事もある。CCCDでなかったら、もっと良い音で聞いてもらえるのに、とは思うけれども、僕はアーティストでもA&Rでもないから、そこに意見する立場にはない。ギャラもらったちゃったしさ。メジャー・レーベルはお金があるから好きです、というのは本心だ。時にはエッ!?と思うようなギャラをもらうコマーシャルな個人仕事のおかげで、MEMORY LABで原盤を持って、出したい形で出すレコードが作れてきたわけでもあるし。
ただ、そのことと、CCCDについて一個人としてジェネラリー・スピーキングすることもまた、別の次元にあることだ。口を閉ざす理由はどこにもない。ここでの僕の発言や情報リークがかなりネット上を騒がしたこともあったようだが、別に何もなかったです、エーヴェックスからも東芝EMIからもソニーからも。親しいレコード会社の人と意見を求められたりすることはあっても、そのことで仕事を失うとか、不利益を受けたことは一度もない。だから、メディアの人達、あるいはアーティストを抱える事務所の人達などがとても神経質になって、CCCDに対するネガティヴな意見を記事からカットするなんて、不可解このうえない。何もないですよ、記事になったって。あと、この構図は一見、レコード会社の顔色を窺って・・・という風に見えるだろうけれど、ホントにそんな弱者と強者の関係なのか? 今や、レコード会社はそんなに強い立場にない。オマエラにたかられるだけたかられて、悲鳴を上げているのがレコード会社じゃないか、とも思えることも多い。一番ズルイのはメディアだ。あるいはライターだ。いつも安全圏にいようとするばかりで・・・。
というようなことをつらつらと考えた。あと、小田くんは吉田美奈子やテイトーワの発言から、彼らの音楽を聞く気持ちが萎えたというようなことを書いていたけれども、僕にはそれなはないな。彼らだってリスクを引き受けて発言している。リスクを引き受けずに、沈黙している人達はたくさんいる。でも、アーティストの発言は痛々しく映ることも多いので、最近はそれも責められない気持ちだったりする。かわりに、メディアやライターがリスクを負って、やるべきことはないのか?とも思う。
ところで、今気づいたけれども、リトル・テンポを含め、今、名前を出したアーティストは全員、エーヴェックスにいたことがあるのだね。あと、全員、僕が過去、年間ベストテンに選んだことのある(邦楽では数少ない)アーティスト達でした。このことの意味は、後でもう少し考えてみよ。つ〜か、思えば、オレもかつてエーヴェックスにいたことあったんだった。

05.18
家から出ないことにして、STOP・PLAY・RECORDsの商品構成を決定まで追いこむ。今や、タワーやHMVやamazonのサイトで膨大なカタログを検索して、瞬時に購入できる時代ですから、あれもこれも並べることには意味がない。100アイテムくらいあればいいかな、と思っていたのだが、リストアップしてみると、100アイテムなんてアッという間で、すぐに倍くらいになってしまった。そこからエイッとふるい落とし、でも、考えているうちにまた増えていき、みたいなことの繰り返し。全部にキャプションつけるつもりなので、多くすればするほど自分の首を絞める。でも、どうしても200アイテムは必要になってしまった。
棚は三つに分かれていて、一つ目の棚は「LIFETIME ALBUMS」。いつもステレオの近くに置いておきたい一生もののフェイバリット。でも、これを選ぶのも難しい。あまり定番のものばかり並べるのもつまらないから、キャプション書きたいという気持ちになるものから並べていった。ワン・アーティスト一作品に限った。さしてマニアックなセレクションではないと思うが、これはもう、どこから見ても僕のレコード棚そのまま、という並びだな。
二番目の棚は「FRESH AIR」。友人に最近、いいのある?と聞かれた時に取り出すようなアルバムを選んだ。新譜といっても、ここ2年くらいの幅で考えたのは、昨今のレコード店の、二週間ディスプレイして売れなければ、後はノーケアみたいな展開の仕方へのアンチでもあったりする。聞いていないのに聞いたような気分になっているアルバムが意外にあるんじゃないかな? 自分の耳で確かめたものしか置かないので、新譜の入荷は遅いです。でも、僕は月に一、二度、レコード店で新譜のジャケット買いをするから、その中にあったみっけもんを並べて行こうと思っている。自分の財布で確かめた推薦盤というわけ。
三つ目の棚は「MEMORY LAB & FRIENDS」。これはもうタイトル通りです。あと、余裕が出来たら、何か特集みたいなものを考えていきたい。このへんは雑誌編集と同じような感覚だ。
特殊な仕入れルートを持っているわけではないので(最近、MEMORY LABも海外のディストリビューターとのコンタクトが出来つつあるので、将来的にはあるかも)、ここでしか買えないようなレア・アイテムを揃えた店でもない。ホント、遊びに来た友人にレコード棚を見てもらうというのと、ほとんど変わりないだけの店。キャプション読んで面白そうと思ったら、大型店に行って、実際に試聴して買うのもいいんじゃないかな。あるいはamazonあたりで買い慣れている人はそっちで買ったっていいし。でも、たまにうちの棚を覗くと、何かあるでしょ、というぐらいの存在になればいいと思っている。
思うに、音楽の面白さ、というか音楽マニアになる面白さって、芋づる式にアレを聞いてみたらコレも聞いてみたくなって、そういう中で面白い人と人の繋がりも出来ていって、みたいなところにあるはず。今の僕はまさしくそういう経験に育てられた。僕が若い頃に通ったレコード店、芽瑠璃堂やジョージアやパイドパイパーハウスやメロディーハウスは、ただの店というよりは半分、遊び場だった。そんなことも思い出しながら、必死でキャプションを書いてます。