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04.28
早起きして原稿。先週、田中亜矢さんにも薦めたキャスリン・ウィリアムズのセカンドは、今年に入って、最もよく聞いているアルバムかもしんない。なぜ、日本盤出ないのか?
ピキヌー行ってカレー食べた後、神保町のミュージック・マガジン〜市谷のサウンド&レコーディング・マガジンを回る。両誌の編集長とあれこれ雑談の後、プロモーション。インタヴュー取れたでしょうか?
サンレコ編集部を離れたレイクサイドの山口くんとも久しぶりに歓談。POCOPEN & NISHIWAKIをあげて、レイクサイドのCDをもらう。彼は書籍部に移ったので、じゃあ、単行本企画「ひとりでできるレコード会社」なんてのはどうですか?と話す。
溜池の東芝EMIでミーティング。PHAT関係のもろもろなど話し合った後、新宿タワレコへ。「ONE MORE DOLLAR」の展開などチェック。目の前で「ONE MORE DOLLAR」と「BLIND MOON」の両方をレジに持っていく人がいたりして、こういう時は感動します。レコード会社やる醍醐味。
ソフマップでとある音楽ソフトを購入したかったのだが見つからず。夜も更けてから赤坂で某レコード会社スタッフと会食。目の回るような一日の最後はワイン飲みすぎて、帰宅後、ベッドの上でホントに目が回った。

04.29
朝早く起きて何かやっていたはずだが、あまり覚えていない。もう一度寝て、昼に起きて、急いで渋谷に。イーストワークス山下さんとミーティング、というよりネット界隈ではドミンゴさんと歓談といった方が通りが良いか。いろいろ話す。既存のシステムがいよいよ駄目になってきているのだから、一度、全部ひっくり返して、ゼロから始めましょうよ、というようなことを話し合う。
そうそう、最近、パンクなんですよね、僕の周りは。なぜか、パンク・ロック・ブーム・・・と言うとたいてい誤解されるのは、今の日本でパンクというと、ブルー・ハーツ以降の青春讃歌的な、合唱ノリのロックンロールのことになってしまうからなのだけれど、そうじゃなくて、セックス・ピストルズですよ、セックス・ピストルズ。きっかけは新川忠くんがジュリアン・テンプルの「ノー・フューチャー」のヴィデオを観て、ラウンジなんてやっている場合じゃない、オレはもうパンクしか聞かない、と騒ぎ出したからなのですが、僕も言われて「ノー・フューチャー」見たら、泣けてしまいました。もちろん、ピストルズはリアルタイムでも聞いていたわけで、「音楽の未来に蘇るもの」も書き出しはピストルズだったのだけれど、でも、分かっていたようで分かっていないかったことが、今、この時代になって初めて分かった気がした。単純にいえば、こんなに絶望的な世相じゃなかったからかな、当時の日本は。イギリスに比べて。でも、今の日本のイヤ〜な感じ、無意味な暴力ばかりが増えていく、出口のない、希望の光のない世の中で、当時のピストルズやその初期のギグに集まっていた連中の姿を見ると伝わってくるものが違う、ということかもしれない。物凄くカッコワルくて、でも、物凄く切なくて、物凄く人間を感じる。
情報量だけは過剰なほどに豊かな時代、その一方では出尽くしてしまった方法論を焼き直すことしか出来なくなった時代。90年代以来、ずっとそんな中で僕は生きてきた気がする。破壊だの、革命だのといったことすら、そんな中でとっくに制度化されてしまっていたようにも思う。たぶん、それは音楽の世界に限らず。でも、全部ひっくり返して、ゼロから始めたい、みたいなことを心の底で思っている人は少なくないんじゃないかな。良い音楽はたくさんある。精緻に作られた音楽も。YAMAUCHIや新川忠は二十代半ばにして、あんな驚くべき音楽をたったひとりで作り上げてしまうのだ。それはそれで素晴らしいことなのだけれども、でも、こないだから僕が聞きたい、聞きたいと思っているのは、レインコーツのデビュー・アルバムだったりする。実家のレコード棚から引っ張り出して、あの「ローラ」が聞きたいな。恐ろしく稚拙な、でも、それゆえの批評性と開放感を備えた音楽が、なぜか、あの時代のイギリスにはあった。もちろん、今、同じことをやっても駄目だろうけれど、何か、そういうインパクトがあるものを自分が欲している、作り出したくなっているのは、確かな実感としてあったりする。
スタジオに行って、今日はスタジオ大改装の第一歩を踏み出すことにする。というのも、買ってしまったのですよ、APOGEEのAD-8000SEを。PRO TOOLS HDに進むか、今のPRO TOOLS 24MIX PLUSのままでコンバーターを換えるか迷っていたのだが、僕はやはりアナログ・アンプ部の充実した機材が好きなので、出力部がICのオペアンプではなく、FETを使ったディスクリート構成らしいAD-8000のSEヴァージョンに手が出てしまった。この不景気に、ヒット・レコードもないインディー・レーベルがよく買えましたな。僕の持っている単体の機材では一番高かったかも。でも、人間、心底欲しい物は手に入れるのだよ。
セッティング自体は888 I/Oと入れ換えるだけなので簡単だったが、ワードクロックを含めたデジタルまわりのワイアリングを考え直したりするうちに、こみいったことになってきたので、卓まわりを一度、全部ケーブルを引き抜いて、ワイアリングしなおすことにする。が、ひとつ困ったことが。AD-800SEのバランス出力を、NEOTEKの卓のAUX入力に入れると、歪んでしまう。ミキサーのチャンネルに入れれば歪まないので、どうやら、ちゃんとバランスで受けてやらないと駄目なようだが、NEOTEKの卓はAUX入力は全部アンバラ。そもそも、バランスとアンバラとか、二番ホットか三番ホットかとか、+4か-10かとかいったことが、僕はイマイチ理解できていないので解決できず。888 I/Oのバランス出力なら何の問題もないのにな。なので、DATもCDもすべてAD-8000SEのA/Dコンバータを使って聞くというセッティングが作れない。
しかし、プロトゥールズで作業中の曲を立ち上げて、ちょっと2ミックスをミキサーに立ち上げて聞いただけでも、音は良いわ〜。ま、良くなきゃ困るが、車だって買えるくらいの値段なんだから。柔らかく太い音で、かつハイエンドが透明。今までやっていたミックスは何だったんだろう?というくらいの変わりよう。めっちゃ、やる気が出ました。
AD-8000SEを買った理由のひとつは、ERROR RECORDINGのマスタリング機能をもっと充実させたかったからだったのだが、これでかなりクォリティー・アップは果たせそう。実はPOCOPEN & NISHIWAKIもそうだったのだが、最近はプロ・スタジオでのマスタリングで失敗して、うちでやりなおすという例が多い。僕も去年は4回もやりなおす、ということがあったし。思うに、原因のひとつは、プロ・スタジオでのマスタリングは画一的に過ぎるからだろう。EQもコンプも一、二種類のものがあるだけだし、マスタリングのやり方自体もルーティンに沿って行われる。持ち込まれる音源がプロ・エンジニアがSSLの卓でミックスしたものばかりだった時代にはそれでも良かったかもしれないが、今は持ち込まれる音源自体が多様化している。フォーマットもそうだし、内容もそう。ミュージシャンが自宅でミックスした音源も多いから、音源の性格も様々。にもかかわらず、通例的な商業マスタリングで求められる、ハイファイにして、ビートを強くして、ヴォーカルを前に出して、という方向のマスタリングをすると、音楽が持つグルーヴやムードが変わってしまうのだ。
僕がやるマスタリングは、そういう音源がほとんどだから、ケース・バイ・ケースで使う機材も違うし、何から始めるかも違う。いきなりPRO TOOLSで波形編集から始めることもあったりするし。どちらかというと、ミキシングの最終作業をやって、2ミックスを作り直すところから始める感じだ。APIのEQを通して温度を上げようとか、NEVEのマイクプリにオーヴァーレベル気味に突っ込んで、ブリティッシュな歪みを加えようとか、ドローマーの1960でぶっとく汚そうとか、時にはリヴァーブとかまでいじったりする。GMLのEQみたいなハイエンド機材はないかわりに、PRO TOOLSのプラグインを含めた、いろんな機材でいろんなことが出来るのがERROR RECORDINGでのマスタリングだ。最後の0.5デジベルみたいな音圧競争には勝てないかもしれないが、音楽的な意匠や遊びのあるマスタリングは出来る。
お金があったら、そりゃあ、トム・コインのところに行くのがいい。もちろん、日本にだって、信頼すべきマスタリング・エンジニアはいる。プロ・スタジオでプロ・エンジニアがミックスしたマスターがあって、30万円のマスタリングの予算があるなら、僕などがマスタリングする必要はない。でも、そうじゃない場合はERROR RECORDINGでのマスタリングでプロ・スタジオでのそれよりも良い結果が得られることは多いと思う。POCOPEN & NISHIWAKIや新川忠や、ちょっと古いけれど「SEA OF MEMORY」などを聞いてもらえば分かるでしょう。ブラウニーのアルバムのように外注仕事も受けしております。費用はプロ・スタジオの三分の一くらいです。
・・・と営業などもしてみましたが、さて、なんとか数時間かけてAD-8000SEを中心としたシステムが組み上がったので、いろいろと実験。デジタルの入出力って、同じマイナス・ゼロデジベルのピークを突っ込んでも、機材によって歪むものあればOKのものもあり、ルーティングによって驚くほど音質の違いが出たりもするので、実はアナログのワイアリング以上に繊細なのだ。AD-8000SEにはソフト・リミッティングとUV22が各チャンネルにあるので、その効き具合も試したりしつつ、ミックス・ダウン用にベストと思われるセッティングとマスタリング用にベストと思われるセッティングを見出す。ソフト・リミッティングはやはり僕は好きじゃないことが分かったが、ソフト・リミッティングをかけなくても、結構、クリッピングに耐えられる形は作れた。
試しにフジワラダイスケのソロの曲を2曲ほどマスタリング。POCOPENの歌う「5th Floor」は歌をかなりドライに作ったつもりだったのだが、AD-8000SEではわずかなリヴァーブ成分が綺麗に出て、ちょっと戸惑ったりも。アナログ部分はAVALONのコンプ/EQだけ。PRO TOOLSでもEQのみ使い、2ポイントほどカットしただけ。マスターの状態が半年以上、聞き続けても満足の行く状態と思えるものなので、あまりいじらずにマスタリング完了。一応、ソフト・リミッティングかけて、音圧を上げたヴァージョンも落してみたが、たぶん、使わないでしょう。
しかし、この曲を何度も聞き返しつつ思ったことだが、POCOPENは僕が知る人間の中で、ダントツにパンク・ロッカーかもしれないです。

04.30
フジワラダイスケ・ソロのマスタリング・デー。当然ながら、作日、導入したAPOGEEのAD-8000SEを使ってやるわけです。買ったばかりの機材をすぐに使えるのか?というと、全然、問題ないですね、マスタリングの場合は。最終的なモニター用のDAだけは、使いなれたTASCAM DA-45HRのDAを使ったので、モニター条件は変わらないし。要は音に対する判断力。出てくる音が違えば、違ったようにEQして、コレ!と思うバランスに持っていくだけで。
昨日から今日にかけて分かったのは、DAは888 I/0よりもAD-8000SEの方が圧倒的に好きだということ。DA-45HRのDAよりも好きかな。でも、ADはケース・バイ・ケース。それぞれに癖はある。AD-8000円の方が太さと柔らかさ、響きの豊かさみたいなものがあるけれども、中域にちょっと癖を感じるところもあって、ソースによっては888 I/0やDA45HRの方が良い結果もありそう。あと、ソフト・リミッティングとUV22はやはり癖があって、むやみに使えない。ハイエンドが微妙に曇るような。TC ELECTRONICSのFINALIZERのソフト・リミッティングよりは好きかもしれないけれど、どうも、僕はこの手のものがあまり信用できないのだ。24BITから16BITへのダウン・ビットも結局、単なる切り落としの方が、妙なキャラクターがつかない気がして、APOGEEのUV22もSONYのSBMも積極的に使う気にはなれない。あと、UV22って、どうもハードによってかかり方が違う気がする。YAMAHAのCDR1000のそれの方が癖がないような。
なことも考えつつ、昼からセッティングして、3時頃からダイスケとふたりで作業。何曲かは難航。このアルバム、ミックスも難しかったしなあ。有り得ない空間を作り出すというコンセプトで個人的には作業したのだけれど、CDという小さな弁当箱に詰め込もうとすると、その空間の表現が損なわれやすい。今回は音圧はある程度、犠牲にしても、そこを大事にやろうと考える。だから、デジタル・コンプやソフト・リミッティングはついに1曲も使わなかった。
12時過ぎまでかけて、ようやく5曲。昨日の2曲と合わせて7曲。あと、1曲は以前の仮マスタリングのファイルをそのまま使って、一度、CD-Rに焼いてみることに。焼きながら、POCOPEN & NISHIWAKIのアルバムを聞いたり、こないだの湯川潮音ちゃんのセッションのテープを聞いたり。小学校の頃からのジャズ・オタクで、歌物にはほとんど興味なく過ごしてきたというダイスケが、最近、歌物にめざめたのが面白い。きっかけは何といっても、さかなとの出会いのようで、今日もPOCOPEN & NISHIWAKIの曲を聞きながら、この曲好き、あ、これも好きと一緒に歌っていたりして。
帰宅後、うちのステレオでCD-Rチェック。思ったのは、これは傑作だああああああ! 凄いアルバムを作っちゃっいました。「タユタフ」が世に出てからまだ3カ月足らずだというのに。よく出来たなあ、こんなものが。生きてて良かった。マジにそう思って、夜中にひとり、しんみりしたり。

04.30
さすが疲れて、午後まで寝過ごす。昨日のマスタリングを再度チェックして、ふたつみっつ直しを入れることにする。スタジオに行って、少しメンテ作業。下北沢の楽器屋に修理品を持っていくなどして終わり。

05.01
一応、暦の上ではまだ平日なわけで、雑誌編集部などはもちろん働いていて、僕も何とか連休前入稿のために原稿、原稿。原稿依頼のない編集部にはプロモーション、プロモーション。夕方は駒場東大前に移転したリミックス編集部に。3フロアある良い感じのスペースで、春日さんと野田さんとソファー歓談。前にも書いたことがあるが、プロモーションに行って、その場で音源を聞いて話すことができるというのはリミックス編集部くらいだろう。オレが二十代の頃は、オレが働いていたプレイヤー編集部や、よく溜まっていたアドリブ編集部など、どこへ行っても、音楽がかかりっぱなしだったのにな。
藤原大輔とPOCOPEN & NISHIWAKIのプロモーションだが、リミックス誌には当然ながら、藤原大輔がメイン・・・のはずが、野田努さんは実は「BLIND MOON」以来、さかなのヘヴィー・リスナーになっていて、POCOPENの話ばっかり。ま、藤原大輔でもPOCOPENが歌っているので、良いんですけれどね。インタヴュー、レヴューともに取れたでしょう。
久しぶりに三軒茶屋ツタヤでヴィデオ・レンタル。「黒猫と白猫」を見る。

05.03
朝日美穂レコーディング。LOVADELICのシューゾーくんに来てもらってのギター・ダビング。ランシドとアース・ウィンド&ファイアーが好きなシューゾーくんのギターはライヴで一目見て惚れました。とはいえ、まだ24歳の彼がレコーディングでどのくらい使えるかは未知数だったのですが、これがブラボ〜! オレのファンク・サイドをオレ以上のフィーリングで体現してくれるギタリストに初めて出会ったと言ってもいいくらい。朝日美穂バンドの歴代ギタリスト(桜井芳樹〜石井マサユキ〜石垣窓〜チダタカシ)はみんな優れたギタリストなのですが、でも、ファンク系のリフに関しては、僕がこういうリフ、と弾いて示したものをサラッとそのまま弾いてくれるギタリストはいなくて、なんとか憶えて弾いてもらっても、どうもフィーリングが違うなあということが多かったのですが、シューゾーくんにはほとんど何の説明も要らない。一瞬でそのまま弾いてくれる。アル・マッケイやアーニー・アイズレーやフィル・アップチャーチやナイル・ロジャースなんかのフィーリングを最初から持っている。なおかつ、ルーツはガンズ&ローゼズ。LOVADELIC加入するまでパンクをやっていたが、今はヒップホップばかり聞いているという世代なので、出音がタフでアグレッシヴ。がんがん弾いてもらって、後で編集する作戦で、10トラックぐらいレコーディング。最後にワン・トラックだけ、僕がカーティス・メイフィールド風ワウ・ギターを弾いて終了。シューゾーくんは意外にお喋りで、終った後も朝日と3人で延々、お喋りしてしまいました。

05.04
今日は家で過ごすと心に決める。久しぶりに料理。穴子を煮たりする。でも、原稿仕事あり。連休明けまでに4本上げねばならない。