OWNER'S LOG

01.13〜14
カンアキトシ・レコーディングもなかなかハード。風邪っぽいのを押して、三日間かけて、正調ゴスペル・ハウスを作ってしまいました。思えば、こういうのって日本人はあまりやっていないですね。ヒップホップ・ソウルのディーヴァものはたくさんあるけれど。
シンプルなオケとたくさんのコーラス。曲自体が長いこともあって、ミックスにはいつになく時間がかかり、最後はアナログ機材も総動員でした。コンプが足りないなあ、こういうミックスすると。GATES STA LEVELも絶好調ですが、ディスクリートのステレオコンプと真空管のコンプが、もう一台づつ欲しい。
深夜、かなりパライノアックにフェーダーの書きこみをしていたら、後ろからタオルを投げるがごとく、カンちゃんが「もう全然OKですよ」。そうですね、こういう正調ハウスはある程度、ラフな方がそれらしいかも、ということで終了。もっとも気づくと朝の4時でしたが。
しかし、家にど〜んとソファを置いたというのに、毎日、深夜帰宅でまったく座る時間がありません。そうこうするうちに、ソファの上は脱ぎ捨てた服が山になり。
こんな風に始まっちゃった今年はどんな年になるのかなあ。この後もフジワラダイスケ・ソロを仕上げ、さかなのトリビュート・アルバムを仕上げ、たぶん、PHATのライヴ・アルバムなども作り、幾つかイヴェントなどやっていたら、すぐに目の前のことだけで半年くらいは過ぎてしまいそう。希望的観測では朝日美穂フル・アルバム、さかなフル・アルバム、YAMAUCHIの二作目などもリリース・スケジュールに乗り、去年の暮れに出会った素晴らしいシンガー・ソングライター、ミワカタツノリくんのアルバムなども世に出し、後半にはまだ自分でも予測できないくらいの面白いことが起こったりして・・・などと思うものの、一方では、食べていけるのか?オレ?という問題もあって、どうなることやら。仕事下さ〜い、音楽関係の仕事なら、作詞と照明以外はだいたい出来ます・・・なんて。

01.15
風邪なおりません。しかし、やること山積みは変わらず。いろいろ面倒な、でも、面倒なんて言ってはいられないミーティングやネゴシエーションもあり。キツイっすね、今年はのっけから。

01.16
PHATの「タユタフ」の発売日。ハッキリ言って、これは物凄いアルバムだとは思っているのだけれど、いつものようにレコード屋の様子を見に行ったりする気にはなれなかったりする。先のこと、先のことで頭が一杯だからか。
スタジオでこないだ録ったFM番組用のジングルのミックス。意外に手間がかかる・・・というか、ヴォコーダー使ってみたり、やらなくてもいいことまでいろいろやってしまう。
ヴィデオでコーエン兄弟の「バーバー」を観る。話のテンポ感、芸達者な出演陣ともにコーエン兄弟の作品らしいけれど、あまりに救われない話でねえ。

01.17
もろもろもろもろ。

01.18〜19
書きたいこと沢山あるのですが、日誌に向かう時間がなかなか。
うちのBBSがミュージック・マガジンに対する不満書簡箱みたいになっているのはナンダカナ〜なのですが、今月号は確かにちょっと。オレが若い一読者だったら、買うのやめるきっかけになりそうな一冊だったかもしれない。アイドルとか歌謡曲にまったく疎い(そもそも小学校の頃からテレビをあまり観ないコだったので)僕には特集の内容を云々する力はないですが、「いい女」を語るのにあの誌面のヴィジュアルはないよな〜。
美しいものを語るには、語る者自身が、語り方自体が美しくなければ、と思う。だから、僕はそれにはあまり向いていない、とも思う。オレが女だったら語られたくない。そのへんのデリカシーがまるっきり欠けていると、それこそ若年読者や女性読者なんてひとりもいなくなっちゃうんじゃないか。
CCCDの記事は音楽誌でコレをやる自体が冒険ですから、やることは評価せねばならないと思いつつも、マガジンらしい傍観者的な距離感に苛立ってしまう。別にいいんだね、CCCDでもって感じ。それはライターの渡辺健吾さんの心証かもしれないが、でも、昨今のミュージック・マガジンはすべからくそう、という気がしてしまう。当事者じゃないのだ、何を語るにも。
何かのムーヴィメントとか、ひとりのアーティストでもいいけれど、誰が何と言おうとオレはコレと心中するくらいの当事者感覚がないことに人はついて来ないんじゃないか。年を追うごとに僕の中ではそういう気持ちの方が強くなっている。PHATの「タユタフ」はなんとかCD-DAで出すことが出来たけれど、でも、CCCDに関しては僕はこれからもずっと当事者にならざるを得ない。レコードを聞いたり、作ったり、語ったりすること以外に、オレが今回の人生でやることはないのだから。
楽しみにしていた「タユタフ」の松尾史朗さんの採点は7点でした。アルバム枚に4、6、7点とアップしてきたわけだが、なんの面白味も感じられない、と酷評したバンドが、いつのまにか、センスに磨きがかかっただって? PHATの音楽が大きく変わったか、アナタの聞き方が大きく変わったかしないとそんなこと有り得ないはずだが、そんへんは何も書いてない。というより、CDをちゃんと聞かなきゃ書けないような言葉がひとつも評文の中にはない。
僕が音楽評を書く上で心がけていることは、そのレコードを聞いたことがない人にもどんな内容か分かるように語ること。聞いている人もあらためてハッとするような指摘を折りこむこと。どっちも出来ていないこの人の評文は0点です。オレが編集者なら書き直し。
なんてことを書くのは、アーティストをプロモートせねばならない立場からするととてもいけないことで、敵を作らないように、誰にでも礼儀正しくせねばならないのだ、本当は。こういう立場になった以上、僕の言葉は鈍るわけです、どうしたって。それだけに、世の、真にインディペンデントでありうる批評家の方々には、何者にもおもねらない、鋭利な批評を期待したいものです。傍観者でもいいのだ、もし、本当に誰よりも冷徹な観察者であるならば。でも、現実にはCCCDの件に触れると仕事なくなる、 てなことが暗黙の了解になっているのが、音楽ライターの世界であるらしく。「タユタフ」の収録時間に触れたレコ評って、どっかにあるのかな?
ぐちゃぐちゃ書いているうちに、ひとつ歳を取って、50代にまたひとつ近づきました。アップルズのライヴに行って、母親になったビッケに会い、マンションを買った黒田くんや来週ニューヨークに行くなかじ〜と久しぶりに話した。みんなの人生も動いていく。オレも捨て身でやりましょう、ここまで来たら。