OWNER'S LOG

12.23〜26
ふっと気がつくと、日誌を付け忘れておりました。何をしていたやら。クリスマスにマックス・ツンドラ見たり、J-WAVEでPHATの生ライヴ出演があったり、というのもありましたが、今年中に何とかしておきたい事務、雑務、スタジオ・メンテなどなどに追われバタバタバタバタ。しかしまだ全然終らぬ。
思えば、今年もいろいろありました。3月にPHATの「色」が出て、4月に岡村靖幸トリビュートが出て、MEMORY LABからはYAMAUCHI「樹海」とタイスケマツオ「dismage」が出て、6月に朝日美穂「HOLIDAY」が出て、なんてのはもはや、遠い昔の出来事のように思えてしまいます。
夏から秋はひたすら公園を走り、CCCDと格闘し、その甲斐あって(?)、PHATの「DATE」と「タユタフ」、朝日美穂「HAPPY NEW YEAR」、新川忠「SWEET HEREAFTER」などを世に出すに至った。たくさんの人に応援してもらった気がします。今年は特に。
完成できなかったのはフジワラダイスケのソロ・アルバムとさかなのトリビュート・アルバム。他にもたくさん思い残すことはあり。
2003年は厳しい年になりそうです。音楽家にとっても、レコード会社にとっても、音楽ファンにとっても。僕はそのすべてであるので、誰のせいにも出来ない。せめて、僕の周囲では音楽家とレコード会社と音楽ファンがみんなハッピーになれるような年にしたい、と切に思います。

12.27
渋谷であれこれお買い物。年末くらい家電製品とか買いたいじゃないですか。僕はオーディオ以外の電気製品にはうとく、普通の人が持っているものも持っていません。電子レンジとか、コードレスフォンとか、人が普通に持っているものを持っていない。パソコンもいまだにG3以前のマックだし。なので、今年は何かかってやろうと、ビックカメラを見てまわるものの、どうしても欲しいものというのはなく、東急ハンズに移動するものの、気がつくと買っているのは医療用コンセントだとか、防振材とかだったりして。さらにヤマハに移動して、エイッと思う値段のケーブルを買って、最後にHMVでCDを数枚。これでショッピング終了。う〜ん、ケーブルの値段で楽にDVDプレイヤーくらいは買えたんだけれどな。

12.28
午後、スタジオに。フジワラダイスケとダイスケのソロ・アルバムに参加してくれたアトランタ在住のピアニスト、タカナさんが来訪。アルバムの上がりを聞きつつ、いろいろ話す。彼女のピアノのヴォイシングはとんでもなく素晴らしい。音数少ないのに、奥行深い空間を作り出す。歌心溢れるタッチとどこか「和」なタイミングの感覚も他に聞いたことがない感じ。アメリカでプレイヤーとして生きていくだけの人は、このくらい個性がないと駄目なんだろうな。しかし、非常に気さくな人でした。来年春にレコーディング・メンバーをアメリカから呼んで、フジワラダイスケ・ソロ・ツアーをやろうという計画を話し合う。
夕方からはスタジオ・メンテ。ともかく、思いついたことは何でもやる。ワイアリングもほぼ全面的にやりなおす。信号経路をかなり短縮し、電源系、アナログ系、デジタル系の伝送ケーブルがなるべく交わらないようにも心がけた。アースも取りなおす。断線したケーブル、不調の機材などもハンダごて握って、次々になおす。例のPCB事件のヴィンテージ・コンプもイギリスから輸入したインプット・トランスを付けて、修理できました。フェアチャイルドに似た音するな。早くミックスで使いたい。
夜遅くにTICAの石井マサユキと武田カオリ来訪。年明けにERROR RECORDINGでやるレコーディングについて軽く打ち合わせ。つ〜か、何も決めずにやりましょう、ということだけ決める。しかし、僕にもついにやってきました、ビーチ・ボーイズの曲をレコーディングする機会が。
なわけで気合い入って、さらにスタジオメンテ。しかし、足りないものが多く、一方では余っているものも多い。MIDIケーブルや光ケーブルや同軸のデジタル・ケーブルなど、何のためにこんなに買ったんだろう?というほど余っています。が、一方では買っても買っても足りないのがケーブル。一度、質の良いケーブルを使ってしまうと、もう元には戻れぬ身体になってしまうし。少なくとも、僕は今までに卓に使ったお金の倍以上はケーブルに費やしているな。
結局、朝の4時頃までいろいろやる。家のオーディオくらいだと、ここをこう変えたら、音がこう変わったという判断もしやすいが、スタジオというのは機材の量も違うし、デジタルとアナログが混在、100Vと117Vと220Vが混在。複雑きわまりない信号経路が形作られているので、最終的にどこをどうしたら音が良くなったというのは判断しづらい。でも、ある日、明らかに実感されることはある。その日ために基本的なことをひとつひとつチェックしていくしかないわけだ。基本とは電源の引き回し方、信号経路の取り方、そして、振動対策かな。
来年はもっと良い音が出ますことを。

12.29
昼に駒沢で田中亜矢さんとミーティング。田中さんも駒沢近辺在住。いろいろ話す。ミュージシャンには音楽とその人の普段の雰囲気が一致している人もいれば、似ても似つかない人もいるが、田中さんはとても一致していますね。彼女の弾き語りは日本人離れした、と言いたくなるような、タイム感が太くて、芯がブレない感じのものなのですが、本人も非常に落ち着いた、ブレのない考えを持った感じの女性でした。
そのまま秋葉原にお買い物。ケーブルや真空管を買いこむ。と、とあるコンピューター・ショップで出物。G3のパワーブックが3万円台で売っていた。USB以前のシリアルポート付きのヤツですが、僕はUSBのMIDIインターフェイスを持っていないので、それで良いのです。よし、と思って銀行にお金お下ろしに。が、店に戻ったら、売れてしまっていました。う〜ん、ガックリ。
でも、お金持っていると何か買いたくなってしまう。オーディオなど見てまわるうちに、DVDプレイヤーを買おうと決心。どうせなら、DVDオーディオ対応プレイヤーを買ってみようと思う。いや、例のレーベルゲートCDの件がなければ、絶対にソニーのDVD/SACDコンパチ・プレイヤーを買っていたと思うのだけれど、もはやソニーは自らSACDを見捨てたも一緒だからね。ベータとなら心中してもいいと思った僕も、今回はやめときます・・・てことで、ソフト1枚も持っていないのにDVDオーディオ対応プレイヤーを買いました。メーカーはP社。ここは自社でDVDのドライヴ作っていて、スタジオではコンピューター用に使っている。プロ用DATも太い音で気に入っているから、結構、音も行けるんじゃないかと期待。某専門誌で2001年のベストバイ3位だった機種を購入。
本当はスタジオメンテの続きをするはずだったが、でかい箱を抱えてしまったのでまっすぐ帰宅。早速、プレイヤーをセッティング。これを買ったので、ベッドルームのCDプレイヤーはお役御免。これからはCDもこのDVDプレイヤーで聞けばいいだろう。なにしろ、24BIT192Kまでの能力があるDACを積んでるんだから、CDの音も期待できそう・・・と思って、ジョニ・ミッチェルのベストを聞いてみたのだが、音が出た瞬間にアレ? 何コレ? 高域の質感が非常に耳障りな音。エージングされてないからかもしれないが、これがベストバイ?
あらてめて、今まで使っていたCDプレイヤーで聞き直してみる。仕事場ではTEACのVRDS25XSという、20万円以内で買えるCDプレイヤーとしては圧倒的な完成度を誇る機種を使っている僕ですが、ベッドルームのCDプレイヤーはぜ〜んぜん高価なものではない。SONYのXA3ESという中級機種。中古で見つければ1万円くらいかもしれない。ただし、クロックをLCAUDIOのクロックに買え、電源ケーブルをオヤイデに換え、内部でヘッドフォン出力を切ってしまうという改造はしていたりするが。
で、これで聞き直してみたら、フツ〜に良い音。当たり前だよ、ジョニ・ミッチェルだもの。でも、さっきのDVDプレイヤーの音は何なのだろう? クロックがおかしいような気さえする音だった。少なくとも、CD再生では今まで使っていたSONYの方が100倍良い音だ。
こんなことではDVDオーディオなんてのも期待薄だなあ、と思いつつ、DVDヴィデオを試す。ビョークのライヴのDVDを先日もらったので見てみる。が、この音はスムーズで問題ない感じだった。でも、CDの音はひどい。このへん、何かありそうだなあ、コンパチ・プレイヤーの落とし穴が。
逆に言うと、CDって16BIT44.1KHZという窮屈な弁当箱の中で、ようやくソフトもハードも音のノウハウが完成されたところだったんだよね。しかし、これからは単体のCDプレイヤーなんて買う人はほとんどいなくなるだろう。アレ? でも、DVDプレイヤーじゃCCCDは聞けないんだっけ? つ〜ことは、最近、独り暮らしを始めて、まずはテレビとDVDプレイヤーを買ったって人は、CCCD=ほとんどの新譜作品聞けないのかな?
かといって単体のCDプレイヤーを買おうってことには・・・まずならない。次に買うのはパソコンだろうから。でも、パソコンで圧縮音源聞くだけのためにCCCDは買わないよね。と考えると、やっぱりユーザーを育てる方向には行きそうもないですね、今の音楽業界が進もうとしている方向は。全然、現実に促していない。
と同時に、音のことなんか誰も考えていなんじゃないか? ソフトメーカーもハードメーカーも。オレは良い音が聞きたいんだよ。別に新次元の良い音じゃなくて良いから、子供の頃から聞いてきたような、フツ〜に良い音が聞ければいいのだ。でも、アナログの音を知らない世代の人達が増えてきたのと同じように、これからは結構、良い線まで来ていたCDの音すら知らない世代の人達が増えていくのかもしれない。

12.30
スタジオメンテの続きと大掃除。結局、深夜までかかる。やり切れてないことも幾つか。

12.31
高円寺ペンギンハウスでPHATのカウントダウン・ライヴ+レコーディング。いや、面白かった。ライヴ・レコーディングというのは面白いです。それも、こういうコバコだと。目の前で演奏している生音を聞きながら、ヘッドフォンでオレが録っている音をチェックしている感覚というのは、ちょっとDJブースで外音とヘッドフォンの音の両方を聞いている感覚にも近かったりする。
NEVEとANEKのマイクプリ、DRAWMER1960、AVALONのDI、APIのEQなどなどを持ちこみ、SONYのC37AやAKGのD12といったヴィンテージ・マイクも使って、ともかく、僕の持っている機材とノウハウをすべて使って録ってみた。レコーダーはADAT。が、途中で大アクシデント。どうもテープのフォーマットに問題があったようで、途中でテープがとまったり、暴走したり。ファーストセットはバッチリ録れたのが、よりセッティングを煮詰めて臨んだセカンドセット、それもよりによって新年のカウントダウン演奏のところが録れませんでした。
終了後、ガックリしていたら、みんなになぐさめられたり。まあ、でも、面白かった。リターンマッチやりたいです。
というわけで、皆様、HAPPY NEW YEAR! 今年もよろしく。