OWNER'S LOG

12.16
風邪は快方に。昨夜、帰ってから、ひとりで鍋作って暖まったのが効きましたね。
実は昨日はとある友人から鍋の誘い。「それも僕以外、全員女の子なので・・・」という甘い誘惑があったのですが、さかなのワンマンだったので断念したのでした。しかし、鍋は食べたかったので、昼のうちに用意。寒い外から帰って食べる韓国風あんこう鍋は超美味でした。
思うに、鍋というのは大人数でつつくものとされている。確かに、ふたりで鍋なんてのは盛り上がらないものです。付き合い始めのカップルでもない限り。
しかし、ひとり鍋というのは別ジャンルの料理としてあって良いのではないか? 韓国などでは普通でしょう。あと、昨今の鍋というのはどれもこれも寄せ鍋、ちゃんこ鍋。つまり、具の種類がやたらに多い。が、これをもっとシンプルに、具は3〜5種類ぐらいにとどめて、そのかわり、具にあった味付けをした小さな鍋料理をヴァラエティー豊かに提案する。こういう方向があっても良いのではないか? どこかの雑誌でやりたいなあ、そういうミニマル鍋の企画・・・などと考えているオレは一体、何者なのでしょう?
と、珍しく、ミュージック・マガジン編集長のオサムくんから電話。次号でCCCDの問題について、正面切って特集するということで、幾つか質問など受ける。
原稿依頼はなかったので、まあ、お手並み拝見というところですが、多方面に取材して、これまで以上に問題を掘り下げた記事になることを期待。あ、ところで、僕もひとつ、CCCDに関連して、探していることがある。CDあるいはCCCDのエラー検出をして、グラフを書いたりする技術を持っている方がいたら、お話してみたい、あるいは、お願いしたいことがあるのです。どなたか紹介していただけたら幸いです。
夕方に祐天寺でミーティング。その後、六本木で吉田美奈子の「BELLS」コンサート。これは見てみたかった。歌い方がかなり大仰になってはいるものの(彼女くらいの世代の人達には多いことですが)、ライヴで聞けるなどと思っていなかった「クリスマス・ツリー」や「もみの木」が聞けたのだから、足を運んだ甲斐はありました。アレコレ苦言もぶつけている僕ですが、吉田美奈子が歌い続けているということは素晴らしく貴重なことだとは思わせる、本気のパフォーマンスでした。
ただね〜、これだけは言いたくなってしまうのは・・・バックのお粗末さ。あまりにグルーヴのない演奏にはちょっとビックリした。村上ポンタ、岡沢章、土方隆行などと言えば、僕が二十代前半の頃には雲の上のような存在。当時は楽器が上手くないとプロ・ミュージシャンになれない時代だったので、ピットインなどで彼らの演奏を見たりすると、呆然自失したものでした。しかし、そんな人達が今や、こんな演奏しか出来ないとは・・・。
グルーヴがないのは各楽器の絡み方が悪い、和声や音色の当て方も悪いからで、結果、各人の力技しか響いてこない。ドラマチックにすることでしか、曲を盛り上げられない。そういう演奏をバックにしていたら、美奈子さんの歌もそういう響き方にならざるを得ない。こないだ見たプリンスの、4ピースのコンボ編成でも恐ろしくゴージャスでスピーディーでグルーヴのある演奏を思い返すと、所詮、日本人にはソウルやファンクやブルーズやゴスペルなんて感覚的にないんだよ、と絶望的な気持ちになってしまったりする。
いや、でも、そんなことはないですね。スモール・サークル・オブ・フレンズでの鹿島達也や石井マサユキの演奏を聞けば。1000倍はグルーヴありますもん。あるいは、PHATの演奏だってそう。グルーヴの強さ、アンサンブルの繊細さ、ひいては音楽に対する理解力の深さにおいて、もう大人と子供くらいの差はある気がする。子供というのは、もちろん、村上ポンタのような大御所とされる人達の方です。
異論のある人もいるかもしれない。でも、一度、見てみれば分かります、そのレベルの差は。というより、一番大きいのは音楽への取り組み方の差だろうな。グルーヴとは何かといえば、繰り返しの中にいかに新鮮さを吹き込むか、という命題だったりする。ただのループでは駄目。グルーヴのある状態というのは、ループする度にフレッシュになっていく状態。音楽への取り組み方が停滞しているミュージシャンは、だから、グルーヴが失われていくわけです。
ああ、また書いちゃったな〜、こんなこと。でも、僕は初めてのインタヴューの席で、傑作「モンスター・イン・タウン」を前に、演奏がこれでは物足らない、もっとザップみたいに、ミーターズみたいにファンクして欲しいなどと美奈子さんに言った失礼なガキだったので、変わってないのね、キミってことで許してもらいましょう。そして、ドラマーには沼直也を推薦したい。

12.17
終日、家でデスク・ワーク。雑務の山。合間に来年のヴァレンタインデーのイヴェントのフライヤーなども作る。せっかくだから、お見せしましょう。

これはライヴ折り込み用のモノクロ版。カラー版も製作中で、そっちはチョコレートで立体文字を書くのに挑戦しています。しかし、こういう一銭にもならないことを夢中でやっている時が一番楽しいのはなぜでしょうね?
ちなみに、「ミファソ・ランデブー」、「飲茶ロック」、「チョコパニック」といったイヴェントのネーミングは、たいてい、僕と朝日のまぬけ〜な会話の中から生まれています。彼女はカッコイイものが嫌い。で、あ〜でもないこ〜でもないと喋っているうちに、訳分からない、まぬけ〜なネーミングに大受けして、よ〜しタイトル決定となることが多い。おかげで、会社名はドニドニですし、メジャー・デビューのシングルは「モモティー」だったし、最新シングルもまさか、あの副題を付けるとは・・・。このへんのセンスにもっと突っ込み入れてくれる人がいたらいいのにな。
ところで、僕と日々、まぬけな会話を繰り広げているもうひとりのミュージシャン、フジワラダイスケがネットで日誌的なものを書いているのは、あまり知られていないかもしれない。PHAT-LABのARTICLEのページですが、アルバム「タユタフ」の全曲解説が早くもアップされています。まあ、読んだだけでは、一体、どんなアルバムなのか、よけいに分からなくなりそうだが。

12.18
雑務、雑務。
東芝EMIでミーティング。フジワラダイスケのインタヴューの席にちょっと顔を出したり。夕方、渋谷の街をフラフラ。何か買いたいな〜と思って、ビックカメラなどを見てまわるが、何も買わず。
取材が終ったフジワラダイスケがスタジオにやってきて、今日はミックスのやりなおし。「ガンツ」を考え直す。前のミックスも僕は気に入っているのだが、ダイスケのリクエストで、各楽器がもう少しクリアーに聞こえる方向でやる。前のはガヤついた体育館みたいだったが、今度のは非常にハイファイになった。キモは波形レベルでドラムの位相を徹底的に合わせていったこと。こういうことはプロトゥールズ以前には出来なかった。
比較的、早めに終了して、帰宅。何か買いたいな〜と思って、オークションを見てまわるが、入札したのはNEOTEKの卓の補修パーツ。地味ですな〜。

12.19
今日は外注エンジニア仕事。カンアキトシさんの来年の夏頃に出るアルバムを全曲ミックス担当することになりました。そういえば、今年、2曲ほど彼女の曲をミックスしているのですが、世には出ていません。が、その上がりを彼女が気に入って、残りすべてをやることに。こういうのは嬉しいですね。普段、僕はプロダクションにも関わり、プロモーションにも関わり、という仕事をしているので、純粋に職人として関わる仕事というのは、別の意味で気が引き締まって良いものです。
昼頃にカンちゃん来訪。彼女の家はうちのスタジオから歩いて3分ほどです。まずはヴォーカルの録りなおし。U67 〜NEVE33115〜ADL1000といういつものセッティングですが、中域の密度が良い感じ。コーラス多重のパートも8チャンネルくらい録音したので、数時間かかりましたが、夕飯前に終了。駅前の定食屋でふたりで魚定食など食べた後、ミックスに突入。打ち込みのオケのグルーヴ強化を中心にやっていく。カンちゃんも「お任せで」と言ってくれているので、自分でも驚くくらい短時間で良いバランスに。12時頃にはほぼ完成。カンちゃんからもOKが。
。 が、曲の流れの作り方でもう少し頑張れそうだったので、ヴォーカルを中心にフェーダーをたくさん書く。結局、これに3時間くらいかかって、やはり終了は夜中に。こうなると、大音量で聞いてローエンドのバランスの最終確認が出来ないので、マスターへの落としは明日やることに。でも、今日は無駄のない、素早い仕事ぶりでしたな、我ながら。いつもこうだったら・・・。

12.20
銀座で朝日新聞の試聴室選考会議。今月はミッシー・エリオット以下、R&B〜ヒップホップばかり推す。
そういえば、ミュージック・マガジンの年間ベスト。この時期にもう年間ベストが誌面になっていることには違和感を覚えずにいられない僕ですが(おかげで選んだ10枚中3枚は去年入れ損なった2001年盤)、車中でパラパラ読んでみても、ふ〜ん、やっぱりこんなもんだったのかあ、今年は・・・という感じ。正直、例年に比べて、ワッと思うレコードを少なく感じていたのだが、でも、それは僕が聞き逃しているからで、いろんな人のベストを見たら、ヤバ、コレもアレも聞いてない、と思うかと思っていたのですが、そういうこともないみたいでした。
僕のセレクションはかなり外れまくっていて、僕の10枚の中でジャンル別ベストテンに入っていたのは「ジョイ/スター・キティの逆襲」だけ。一般読者にはなんかよくワカランだろうなあ。なので、軽く解説してみましょう、ここで。

ブランディ/フルムーン(イースト・ウェスト AMCY-1001)
一番よく聞きました。感覚的にはビョークの「ホモジェニック」あたりを聞く感覚に近いというか、暴力的なリズム・トラックに殴り倒されるみたいな、そういう意味で最も2002年的な新しい音だと思ったレコード。ズラしにズラした楽器とヴォーカルのアンサンブルはめちゃめちゃファンクかつサイケデリックでもある。これに比べたら、TLCは大人しくなっちゃったな。R&Bの1位になぜ選ばれぬ?
ミュージック/ジャスリスン(ユニヴァーサル UICD-6043)
「ハーフクレイジー」が初めてラジオから流れてきた時には震えました。ベスト・シングル。フランス映画音楽をネタにした最高のヒップホップ・ワルツ。微妙な青さと生真面目さを残した歌声が心くすぐる。そういえば、作り終えてから気がついたのだけれども、朝日美穂新作中の「ディズニーランド・コンプレックス」のリズム・トラックはブランディの影響とミュージックの影響が一緒になっていました。ずっとループしている琴のメロディーは「パリの巡りあい」と同じ音階だった。
ジョイ/スター・キティーの逆襲(ユニヴァーサル UICU-1023)
ルーシー・パールとは似ても似つかぬねっとりとしたファンクに乗せてビッチを演ずる母のけなげさ。プリンス、ブーチーも愛聴したし、今年は何よりファンクだったのだ、個人的には。評文にも書きましたが、淡いものや曖昧なものよりも、ハッキリしたものに惹かれるようになった。脱音響派。ウィルコやベックもそりゃあ聞きましたけれどね、何かもう安心して聞ける音楽になっちゃったのは否めず。
Spacek / Carvutis (Island CIDZ8105/548688-2)
ミュージック以外にもピーヴン・エヴェレットとか、男性R&Bには孤独な才人が増えつつある気がするが、このスペーセックは英国産の密室派ソウル(その極北)。チープかつダビーなトラックに乗せて、眠れぬ夜の魂の震えを歌い綴る。
Ian O'brien/a history of things to come(PFG 009 CD)
長〜い時間をかけて奈落の底に落ちていくような感覚が味わえる。何度かクラブでDJした時にもかけたけれど、最高に気持ち良かった。PHATの新作「タユタフ」の中の「捨てられた衛星」という曲は、個人的にはイアン・オブライエンに聞いてもらいたい一心で作りました。
Four Tet/Pause (Domino Recordings WIGCD94)
脱音響派とは言いつつも、これはよく聞いた。イギリスの田園風景やその影に潜む寓話の数々を想起させるような音は、あたかも2000年代版ペンギン・カフェ・オーケストラのよう。手法が画一化していく時代にこそ、ローカリズムの復権に意味があると思ったり。
タイアグラ/イミーラ・タイーア・イビ・タイアグラ(東芝EMI TOCP-66070)
東芝のブラジル・オデオンの再発シリーズは凄かった。存在すら知らなかったアルバムだが、ジャケット見た瞬間に傑作なのを確信。時空を越えた奇想天外な音像は、エルメート・パスコワールが手掛けたポップ・レコードであればこそかな。まだ十分に咀嚼できていないですが。
青山陽一/COME AND GO (徳間ジャパン TKCA-72341)
アルバムではなく、マキシを選ぶのは失礼かなと思ったが、表題曲の印象が強かった(地味な曲なのになぜか強く残ります。アレンジ秀逸。日本語の音楽として確実に新しい)のと、もうひとつの理由はお分かりですね。3曲目のオリジナルを収録するはずだったさかなのニュー・アルバムはあえなくお蔵入りしてしまいましたが。
Flex Life / それいゆ(ZETIMA )
クラムボンの「ID」と迷ったけれども、2002年のベスト・フィーメイル・シンガー(日本)は青木里枝に。彼女の歌は本当に素晴らしいです。最も好きなヴォーカリストです。例えば、ジル・スコットがやっているようなことを日本語でやってのけている人がいるとしたら、彼女だけだと思う。あまりに無視され過ぎ。
新川忠/Ripple Of Stars b/w Carnival (COOOP No Number)
僕がマスタリングしましたが、プロダクションには関わっていません。これもよく聞きました。僕の聞きたい音楽をたったひとりでこともなげに作ってしまう新川くんは紛れもない天才です。僕は毎年ひとりは天才を見つけます。今年は?ってそれはまだ内緒。

というところかな。

12.21
寒い雨の日。買い物に出ようとしたが三歩で引き返す。一日中、家で過ごすも、雑務もはかどらず。ヴィデオで「テルミン」、「ヴィドック」など見る。

12.22
下北沢ERAで朝日美穂ライヴ。そうえいば、一昨日、この日のメニューのためにスタジオであれこれ確認作業をしたのでした。今回は完全なソロ・セットなのですが、朝日は自分でSE作ったり、キーボードのデコレーション考えたり、いつになく演出にも意欲的。しかし、初めてやる曲などもあり、問題点いろいろ。不安残したまま当日に。
なんだかんだでローディーの僕は会場に20分遅刻。が、朝日は40分遅刻。歩行者天国で下北沢商店街には車が入れず、搬入も大変だったりして。朝日は朝の8時まで準備にかかり、3時間睡眠とかで、「眠い〜、気分サイアク」。どうなることやら。
バタバタとリハに突入。ERAは最近、出来たライヴハウスで、初めて来ましたが、天上がたっぷりしていて、なかなか音が良い。エンジニアの人もセンスが感じられ、リハは比較的スムーズに。が、忘れ物が判明。朝日は終了後、家に取りに戻る。僕はカフェであれこれ内職。
家に戻るのにタクシーがつかまらず歩いて戻ったとかで、「今日はもうダメ〜」とか言いつつのライヴ本番。しかし、ライヴというのは本当に分かりませんね。今年やった朝日のライヴ、バンド編成のものも含めて、今日のライヴがベストだったでしょう。冒頭の「星に願いを」(ディズニーの)こそ、歌詞があやふやだったようだけれど、後はいつになく歌に集中した感じのパフォーマンス。「バスタ・ブライムス」はピアノも含めて完璧でした。ソロでは初披露の「西の空へ」も素晴らしい出来。弾き語りでは無理、と思われていた曲を最近の彼女はうまくやってのけます。
思えば、初めてソロ・ライヴをやったのが今年の2月、大阪でしたが、10カ月前に比べると、300%くらいのパフォーマンスになっている。先日のプリンスのアンコール・セットを思い出したりしましたもん・・・てのは、さすがに誉めすぎとしても、今日は僕もただ楽しんで見ていればいいライヴ。加えて、イヴェント自体もとても良い感じでした。鳥取のトリ・レーベルというインディーの来京イヴェントだったのですが、趣向豊かで、出演者もどれも楽しく見れるパフォーマンスばかりでした。個人的にはミワカタツノリさんの歌にはハマりました。
終了後、朝日宅に機材を戻し、僕はリキッドルームにマックス・ツンドラ観に行くはずだったのですが、池の上の台湾料理店で大根モチとビールをいただいたら、ドッと疲れが出てキャンセル方向に。