BEFORE GET IN SLEEP

11.26
午前11時にひとりでチェックアウト。アメ村をちょっとふらふら。心斎橋タワレコにプロモーション。それからエルマガジンに寄り、FM802に寄って、さらにプロモーション。夕方、新幹線に乗って帰宅。さすがに疲れた。

11.27
遅い午後、原稿仕事を終えて、スタジオに。今日はメンテの日にすることにした。まずはU67のノイズ問題。U67のチュ ーブはEF86。オリジナルのTELEFUNKENは今や入手困難だが、EF86なら、家に4本もストックがあった。LEAKのアン プに刺さっていたオリジナルのMULLARDのEF86を温存してあったのだ。メッシュ・タイプのこれまた希少な球。変え てみてノイズがなくなればラッキー。駄目だった場合は、デリケートなヴォンテージ・マイクの内部部品を自分で触る のは不可能だから、海外のスペシャリストにでも送るしかない。
なので、結構、ドキドキして、交換する。ノイマン・マイクの内部は40年も前の製品とは思えないほど美しい。ドイツ 人の精密工作の素晴らしさが分かる。で、交換後の音を聞いてみたら、見事、クリーンなサウンドに。テレフンケンの きまじめな音よりも、ムラードらしい、ちょっとブリティッシュな艶が乗った音になったかもしれない。
気を良くして、次は懸案のNEOTEKコンソールのマスター・セクションに今日こそ決着をと意気込む。壁に立てかけ て、裏蓋を開ける。こないだ秋葉原で交換用のコンデンサーをごそっと買いこんできたのだが、その前にオペ・アンプ を替えてみることにする。ピンセットで作業すれば、こっちの方が簡単に出来そうだったからだ。NEOTEKのマスター セクションに使われているのは、80年代に一世を風靡し、特にレコーディング機器に多く使われた5534というオペアン プだ。NEVEの3***シリーズのマイクプリなども、後期モデルはオール・ディスクリートではなくなって、この 5534を使っていた。
が、ただ交換するのでは面白くないので、マスターセクションにある4つの5534を思い切って、バー・ブラウンの OPA627に替えてみた。OPA627は一個3000円もする超ハイエンドなオペアンプ。しかし、オペアンプはただ差し替えれ ばいいというわけでもなく、うまくいかない場合は発振したり、歪んだりすることもあるようだ。なので、ギャンブル ではあったのだが、差し替えて、音を出してみたら、特に問題なし。サブミックス・アウトと聞き比べてみると、音が 太くなり、なおかつ、高域のオープン感も増した。まあ、値段が値段だから、音悪くなっちゃ困るが。 どうもコンデンサー交換しなくても、これで治ったような気もしたので、続いて、部屋の電源工事。コンセントを医療 用のものに替える。すでに一ヶ所は替えてあったのだが、今回、もう一ヶ所も医療用にして、さらにアース線を窓から 垂らして、完全に接地させることにした。これまた簡単に終了。
ここで一度、スタジオを出て、秋葉原に。コネクター類やケーブルや家のLEAKのアンプ用のコンデンサーなどをどさ どさ買う。サンレコのせいで、最近、若い客が増えたオヤイデ電気や海神無線、それに若松通商、平方電線といったい つものコース。
途中、届け物など雑用もして、スタジオに戻る。しばらくCDを聞いていたら、NEOTEKの左チャンネルに症状再発。原 因はオペアンプではなかったようだ。く〜。
となると、コンデンサーを交換していくしかない。だが、マスターアウトプット・セクションには15個ぐらいのコンデ ンサーがある。基盤の中央付近にあるものはハンダごてを入れるのが難しく、全部やるとなると、かなり大変な作業 だ。が、基盤を外すとなると、NEOTEKはソケットなしのハンドワイアードなので、配線をひとつひとつ外さねばなら ない。これも出来れば避けたい。なので、しばらく回路図と睨めっこ。マスターフェーダーの直後にある10mFのコンデ ンサーに犯人を絞る。
が、オリジナルのニチコンのコンデンサーを取り外してみたら、これには極性がなかった。ノンポーラ・タイプなの だ。だが、買い置いてあったELENAのMUSEシリーズの電解は極性あり。極性ありのコンデンサーはプラスマイナスを 間違えると爆発してしまう。なので、再び回路図と基盤の模様と睨めっこ。手前側がプラスと確信を得てから作業。と はいえ、終えて、電源入れる時にはかなり緊張。
無事、音は出た。左チャンネルも好調。が、必ずしも再現性のないトラブルなので、まだ分からない。3時間くらいC Dを聞き続ける。問題なし。治ったのだろうか?
家に帰って、深夜だというのに、まだ作業。LEAKのPOINT ONEプリアンプのコンデンサーを片っ端から交換。オイル コンはTONE FACTORY、フィルムコンはASC。昔のチューブアンプのコンデンサー交換はスペースが十分にあるので、 はるかに楽だ。簡単に終了。左右バランスの問題も解決。と同時に、超高音質化した。40年も前の製品とは思えないス ウィートな音。大満足して、ブルース・コバーンを聞きながら眠る。

11.28
いろいろあって世間から隠れる・・・って、普段から隠れているようなものか。ま、実家のことでいろいろ。

11.29
ヴィンテージ・オーディオ熱が止まらず、家のメインのステレオセットもアンプを替えることになった。今まで使っていたのはAURAのCA200というプリアンプとSTEWERTのPRO REFERENCE 500というパワーアンプ。パワーアンプの方はBRYSTONやらGOLDMUNDやらELECTRO COMPNIETやらを試した末、これに落ち着いていた。今もこれは気に入っているのだが、しかし、LEAKのアンプに続いて、また40年前のヴィンテージ・アンプを手に入れてしまったのだ。モノは1960年くらいに作られたらしいTELEFUNKENのプリメイン。TELEFUNKENといえばチューブは有名だが、民生用のアンプはポピュラーではない。ものの本を見ても、ネットで検索しても、ほとんど資料がない。手に入れたのは、いかにもドイツらしい、飾り気ない(面白味ないとも言える)デザインの木箱入りのアンプ。中身はEL86のプッシュプル。が、型番も何も書いていない。表示はすべてドイツ語。
しかし、この時代のTELEFUNKENは最高のチューブを作っていた。あるいは、プロ・オーディオの世界ではV72やV76といったこの時代のTELEFUNKENのチューブ・マイクプリはNEVEと並ぶマイクプリの最高峰。僕もいつか手に入れたいと思っている。調べてみたら、同じ頃のコンソール・モジュールにはV81というモデルがあり、これは12Wくらいのチューブのパワー・アンプだったようだ。とすると、EL86のプッシュプルだったかもしれない。なんてことを考えていくと、聞いてみたくなるでしょ。TELEFUNKENのアンプ。
ドイツから届いたそれは当然ながら、チューブはすべてTELEFUNKEN。これだけでもプレミアム。が、背面を見て、一瞬、途方に暮れた。入力はすべてDINNコネクター。さらにスピーカー端子に至っては、見たこともない形状のコネクターだ。
なので、まずはDINNのケーブルを作らねばならない。一昨日、秋葉原に行ったのもひとつにはそのため。平方電線にベルデンのケーブルを使ったRCA=DINNのケーブルがあったので1本購入。さらにプラグを買って自作に備えた。スピーカーのコネクターは秋葉原を探し歩いてもまったく見つからない。ドイツ人はオリジナリティーあり過ぎだな。仕方ないので、これもDINNコネクタに替えることにした。穴のサイズがまったく一緒だったので、それが一番、工作の手間が少なくて済む。
で、今朝から作業。スピーカーのコネクタの交換には手間取った。なにしろ40年間、樹脂で固定されていたネジなので、なかなか回らない。なんとか交換した後、DINNコネクターの付いたスピーカー・ケーブルも作る。ケーブルは47研究所の単線を使用。最近、個人的に単線ブームなのだが、この47研究所の単線ケーブルは使いやすくて、気に入っている。LEAKのアンプの電源ケーブルもこれを依って作ってある。
作業終了して、いよいよ音出し。まずは40年も前のアンプなのにSNが良いのに驚く。さすがTELEFUNKENの技術力。しかし、ATCのSCM10を鳴らした印象は今ひとつ。LEAKのSTEREO20よりも低域が太く出てくるが、高域のオープン感ではLEAKの方が上。TELEFUNKENはちょっとコンプがかかったような音。生真面目すぎて艶がない感じだ。チューブ・アンプの魅力である中高域の滑らかさ、立体的な空気感の表現みたいなものが今ひとつ出てこない。
ちょっとがっかりしたが、中低域が太いアンプなので、LEAKではきらびやかになり過ぎるALR JORDANのENTRY Sを鳴らしてみることにした。そうしたら、こっちはいいわ〜。ATCだとアンプもスピーカーも中低域の密度が濃いので、重厚さが必要以上に強調されてしまったようだ。それに対して、メタルコーンのALR JORDAはすごく音離れが良いので、このアンプに合っているのだろう。とすると、DYNAUDIOのツイーターを使った自作SPにも向いているかもしれない。
と思って、メインのセットのアンプを交換。自作SPを鳴らしてみたら、これも良い音。特にヴォーカルが良い。新しいコンデンサー・マイクからヴィンテージ・チューブ・マイクに替えた時みたいに、温度感を伴ったディティールの表現が出てくる。チューブ・アンプなので、今の音楽を鳴らすには低域のダンピングが足りない感じはしてしまうが、でも、これからまだまだセッティングは詰められるはず。LEAKのように中を開けて、パーツ交換で高音質化を計っていく楽しみもある。
なので、ベッドルームのステレオに続いて、メインのステレオセットもチューブ化が決定。でも、これでもう一生、アンプは買わないかもしれないな。 普通にオーディオ・マニアをやっていると、グレードアップの果てはマーク・レビンソンだ、スペクトラルだ、といった価格的にエスカレートした製品に手を出すことになっていくが、ヴィンテージ・オーディオはいじればいじるほど愛着が湧いてしまうので、買い換えることもできなくなる。つまり、地球に優しいホビーだったりして。
ま、それはともかく、TELEFUNKENの民生用アンプに関して、情報をお持ちの方がいたら、ぜひ、ご連絡を。
趣味の時間を終えて、仕事するつもりで、スタジオに。向かう途中、祐天寺商店街に寄ったら、長身の男性とすれ違った。木村さんだ、と気づいて、声をかけてみる。「パードン・ミー?」。
自己紹介したら、パードン木村さんも僕のことを知っていた。NEOTEKの卓を持っていることもZAKから聞いていたそう。なので、いきなり長〜い立ち話。単線ケーブルがどうだの、コンデンサーがどうだの、オペアンプがどうだの、商店街の真ん中で。しかし、同じ祐天寺にNEOTEKの卓が二台もあるのは奇遇。今度、お互いのスタジオに遊びに行くことを約束。
スタジオ行って、片づけなどしつつ、ハーバートのCDを聞いていたら、NEOTEKの左チャンネルのトラブル再発。こないだ替えたコンデンサーが犯人ではなかったわけだ。なので、またしてもコンソールを壁に立てかけて裏蓋を開封。回路図と睨めっこしつつ、策を練る。が、信号系統にある主要なコンデンサーは替えてしまった。となると、オペアンプの左右にそれぞれふたつづつ付いている小さな電解コンデンサーか、高域の補正用に使われていると思われる小さなフィルコンの類か? しかし、回路図を見ていても、何が分かるわけではない。結局、今日はコンデンサー交換は見送る。ノンポーラのコンデンサーが多いので、プラスマイナスのある普通の電解コンデンサーに替えるのは危険という判断。しかし、理科系に進んでおけば良かったなあ・・・と後悔することが多いこの頃。
そうそう、本屋で「装苑」を立ち読みしたら、サエキけんぞうさんがコラムに「SEA OF MEMORY」を取り上げてくれていた。それはとっても嬉しかったのだけれど、ただ、やっぱり書かれるんだよなあ、「評論家として有名な高橋健太郎」のレーベルって。それが疎ましくて、僕は音楽雑誌に書くのが嫌になったところが多分にある。文章なんてのは、どうにでも意のままに操れる。音はそうは行かない。電気回路は、ハンダごて握っても、もっと思うようにならない。でも、僕の興味が向いているのは、そっちなのだから仕方がない。
しかし、評論家なんてやってた明らかに文系の人間が、いきなりエンジニアをやるようになるなんてのも奇妙なことなのだろう。別にいきなりではないわけだけれどね、僕にとっては。真空管アンプの中を開けたりするのは高校生の時からやっていたし、大学の終わり頃にはオープンの4チャンネル・デッキで宅録始めていたし。自分にとっての良い音の基準というのも、実はその頃の経験がベースになっていることに、最近になって気づいた。僕の最初のステレオセットは父親が友人から貰ってきてくれた60年代の始めのトリオの真空管式コンソール。思えば、今朝いじっていたTELEFUNKENと同時代の民生機。友達に見せるのも恥ずかしい、古ぼけたステレオだったが、あれは良い音がした。レシーヴァーだけでも取っておけば良かった。チューブの音で育つことが出来たのはラッキーだった。
初めて買ったミキサーはTEACのM2Aという6チャンネルのミキサーで、吾妻光良さんに進められて買ったのだが、あれも思えば、良い音がした。時代からして、オール・ディスクリートだったのだろう。SNはお世辞にも良くはなく、ハイがやや足りなかったが、品のある、落ち着いた音だった。二十年以上前の記憶だから、アテにはならないかもしれないが、しかし、不思議なくらいにかつて使っていた機材がこういう音だったという印象は残っているものだ。
でも、今の子供たちは良い音を聞いて育つのは難しいだろう。テレビの音、ミニコンポの音、ウォークマンの音、パソコンで聞くMP3の音。そんな音しか聞いたことがないとしたら・・・ジャンク・フードを食べて育つのと同じではないか。そんな気はしてしまうな。

12.01
朝早くにPHATのヌマちゃんがやってくる。大阪で即売するCDを積み込み。意外に元気だったので、このまま一緒に行こうかどうか迷う。大阪は絶対、楽しそうだし。でも、踏みとどまる。二度寝して昼過ぎに 起きる。あとは久々に一日、家で過ごす。掃除、洗濯に、アレコレ雑務。アッという間に一日が過ぎてしまい、さすがにお腹がすいたので、近所のラーメン屋へ。ところが、行ったら閉まっている。アレ?と思って、時間を確かめたら午前1時過ぎだった。

12.02
昨日の続きで家の片づけ。問題はいつものように床に溢れ出したCDなのだが、宅急便で大量に実家に送り、少しは床が見えるように。
夕方、自転車に乗って、三軒茶屋に。人見記念講堂でビョークのコンサート。詳しくは別の機会に書くけれど、ぶっちぎりで凄いわ、今回のビョークは。ほぼ予想通りの内容ではあったのだが、でも、一瞬たりとも目が離せなかった。あ、前座のマトモスはつまらねえぞ。リキッドルームよりはショーアップされてたが、でも、アメリカ人なんだよな、所詮。オタクな行為に美学的価値を与えることにかけてはドイツ人や日本人の方が圧倒的に優れている。アメリカ的な馬鹿馬鹿しさもディーヴィぐらいまで行けば別だが(なんか、今日は口調が汚かった)。