10.21〜22 意外に早起きしたが、残念ながら雨でジョギングは出来ず。筋トレして、迎えの車を待つ。今日から二日間、山中湖のスタジオで高宮マキ・レコーディング。うちからATCのモニター、アナログ・テープ2本、AKG C 12Aを乗せ、さらにスタジオでNEUMANN U67、AKG D12、AVALON U5、まだ動いてくれたPOWER BOOK 550CとMIDI TIMEPEACEとイーミューのサンプラー、NORD MODULARなどなど大量の機材搬出。豪雨の中を山中湖のEGGS&SHEPスタジオに。2時間遅れで到着。
スタジオはSHEPの1073とOLD NEVEの33114モジュールがずらり並んだ卓が圧巻。ルームも広々としていて素晴らしい。かつプロ・トゥールズとの同期環境もあるってのは僕好み。PHATのメンバーはすでに到着済み。高宮さん、クマさん、マネージャーの阿部さん、東芝EMIの青木さん、それに山口泰と僕というメンバーで、まずは蕎麦屋に行く。鴨田舎サイコ〜、湯葉さしもサイコ〜。雨も上がりつつあり、良い感じ。
夕方までかかって音決め。スタジオは卓がゴージャスなのに、なぜかマイクが不足。うちからヴィンテージ・マイクを持っては出たが、まだ不足気味。でも、山口のマイキングはさすがで、細かく調整するうちに、どんどん良くなっていく。レコーダーはスチューダーのA80ってことで、録り音は太〜い。
夕食後にセッション開始。が、クマさんの意向で最初は譜面なし。クリックとガイド・ヴォーカルのみ聞いて、探りながら演奏することに。でも、ヴォーカルのメロディーはかなり転調感がある。なにやらクイズのよう。僕はまだやることないのだが、ギター借りて、コードを何通りも考えてみる。カルロス・ジョビン風のひたすらベースが下降していく進行を思いついて、結構、気に入ったが、でもPHATにはコード楽器がないので機能しないな。もうひとつ、転調感を最低限に抑えつつ、4小節毎に必ずベースがシンコペして半音上がるヤツを思いつく。これは非常にミニマル感がある。なので、メンバーが四苦八苦してセッション繰り返す間に、その進行でエレピ・パートを打ち込み。
2時頃にこの日は終了。結局、何も録れず。みんなが帰った後、ダイスケと僕でピアノ弾きながら、アイデアを出し合う。ダイスケの作ったミニマルなループ・フレーズとさっきの僕のエレピを組み合わせたら、格好良くなりそう。みんなはロビーでお酒。僕もちょっとだけもらうが、明日は晴れそうだったので早めに就寝。
10時くらいに目が覚める。快晴。目の前にどでかい富士山。よしとばかり、トレーニングウェア着て、外に。二十曲峠というのを昇ることにする。二十分くらいで展望台に。サイコ〜。戻って筋トレ。スタジオ行って、昨日、打ち込んだエレピ・パートをノード・モジュラーで鳴らすべく音色作り。みんながスタジオに来たら、聞けるようにアシスタントに指示を出しておく。
12時頃にみんなで昼飯。その後、クマさん、高宮さんにエレピ・パートを聞いてもらう。「ナイス・サウンド」「でも、リミックスぽいかも」ってことで不採用。ダイスケのループ・フレーズも不採用。これはオリジナル・ヴァージョンを作るセッションなので、ヴォーカルが歌いにくくなるオケは難しいかもしれないなあ。無念。ここでようやくクマさんからコード譜をもらう。コレが正解?と思う、かなりクセのあるコードとメロディーの絡み方をしていた。でも、この感じが高宮さんの個性なのだろう。思ったよりロック的というか、ヴォーカルがブルージーに響くコードの付け方だった。
結局、このコード譜に沿って、リズム・セクションのみで演奏して、ベーシックを録ることに。最初からそうやれば早かったのに・・・とも思いがちだが、こういう経過を辿って、譜面を演奏するのと、最初から譜面でやるのでは結果は違うでしょう。サラっとリズムは録れて、サックスをダビング。クマさんとフレーズ協議しつつ、数テイク繰り返すが、最後のペンタトニックでバリバリ吹いたテイクが採用。僕はその様子を横で見つつ、ヘッドフォンで作業。このままコード進行に沿って演奏しているだけではPHATらしさに欠けるところがあるので、あらためてミニマルなループを考える。曲が一ヶ所、9小節で回るところを利用して、2小節ループが途中でひっくり返るようにすると、コード進行に沿いつつ、ミニマルな響きのフレーズが作れるのを発見。アフリカ人がずっとバラフォンを叩いているようなイメージでシーケンスを組む。
みんなが夕食行った隙にアシスタントと新しいシーケンスを録音。帰ってきたみんなに聞いてもらう。クマさん、高宮さん、ダイスケ、山口も気に入ってくれて採用に。でも、ここで問題発生。アナログ・レコーダーとプロ・トゥールズがうまく同期していない。シーケンス打ち込んでいる時にも気づいていたのだが、スチューダーのピッチが昨日よりやや速くなっているみたいだ。卓もあちこちガリったり、歪んだりで、やっぱりヴィンテージ機材と付き合うのは大変ですね。このへんがバッチリ整備されていたらサイコ〜のスタジオなのだが。
ともあれ、みなさんしばらく待ってくださいってことで、アナログからプロトゥールズにクリックを戻し、テンポ設定などしなおして、ひとり黙々とオーディオ編集。この作業はもう慣れたものっちゃ慣れたものですが。昔から僕はスタジオのトラブル・シューターです。
というわけで、ワン・ヴァージョンは完成。山口が仮ミックス。仮ミックスといっても、録り音から相当に作り込んであるので、かなり世界観は出来上がった音。続いて、セカンド・テイクを録ることにする。ダイスケの強い希望で今度は3人せ〜ので録る。前のテイクとはかなり傾向の違うロックっぽい荒々しさのあるテイク。両方キープってことで12時頃にセッション終了。僕とヌマちゃんとケースケは明日があるので、素早く機材搬出。僕はケースケの車で川崎まで送ってもらう。残りの人達はもう一泊。たぶん、これから朝まで打ち上げるんだろうなあ。というわけで、ゆっくりしたような、でも、ハードだったような二日間。とても勉強になりました。
10.23さすがに走れず。シャワー浴びて、深沢町内のサウンド・アライヴに。今日は朝日美穂レコーディング。ヌマちゃん、鹿島くん、チダの3人とリズム録り。僕は早めに行って、アシスタントにバーッと指示。12時にメンバー到着。ささっとミーティングしたところで、僕は一度、抜けて、東芝EMIに。2時間後に戻ると、セッティングが終わり、音が出始めたところ。エンジニアはいつもの吉光くんなので、ヌマちゃんのドラムはもう出来ている。鹿島くんのベースはいつもよりナチュラルな音色で録らせてもらうことに。しかし、このリズム・セクションはグ〜。鹿島のグイグイとドライヴするベースと、ヌマちゃんのステディなバック・ビートは思った通り、めちゃめちゃ相性が良い。
最後になかなか決まらないのがチダのアコギ。テイラーの僕の持っているのより高級モデルなのだが、鳴るギターが必ずしも良いとは限らないのがアコギの録音。今日はザクザク刻んでもらいたいのだが、キーの関係でチューニングを半音落していることもあり、マイキングをアレコレ変えても、どうもしっくり来ない。僕の仮アコギの音と聞き比べて、これはギター自体の問題だと判断。スタジオに僕のテイラーを取りに行く。ちょっと痛い時間ロス。
ギター替えたら、一発で問題解決。4時頃にリズム録り開始。思えば、このメンバー、僕と朝日は全員を知っているけれども、3人は今日、初めて演奏する。でも、コンビネーションはめちゃめちゃ良くて、そういう時というのは、それぞれの気分も盛り上がるから、テイク重ねるごとにどんどんグルーヴが良くなる。3人とも曲の理解もバッチリ。こういうセッションは楽。3テイクほど録ったが、迷うことなく最後のテイクがサイコ〜。鹿島くんが上機嫌ですから、サイコ〜に決まっています。
6時に予定にリズム録りは終了。鹿島くんはスーパーバッドのリハーサル(!)があるので、ここでお帰り。スタジオは残り半日あるので、みんなでサンガワのカレー食べた後、やれることをいろいろやることにする。まずは岡村靖幸さんに書いてもらった曲をその場でヘッド・アレンジして録ってみる。あ、ここからベースは僕。生まれて初めてプロ・スタジオでベースを弾くわけです。
まずはバンドでやっているアレンジに近いものをトライ。ヌマちゃんのニューオルリンズっぽいドラムはサイコ〜。これはこれで使えるでしょうってことで、ワンテイクOK。続いて、もうワンヴァージョンどうしよう?と協議。参考CDをということで、朝日が持ってきたブーチー・コリンズの新作を聞く。ぶっ壊れたブーチー流ニューウェイヴ・ファンクにアリャ〜と全員ヤラれる。
「じゃあ、次はファンクで」てことでもうワンヴァージョン。弾きはじめたら、なぜか1小節目からナイスなベース・リフが出てきて、そのままひたすら行く。ヌマちゃんのしょっちゅうストップするビートがサイコ〜。チダの緩いアコギがこれまた絶妙。プレイバック聞いて全員で爆笑。さっきブーチー聞いた影響出まくり。凄いわ、ブーチーのオーラは。なんでこんなリフがオレの中から出てきたのかワカンナイもん。しかし、朝日はめっちゃ気に入っている様子。岡村ちゃんもコレは気に入るかもしれないなあ。こんなファンク、今時、誰もやってない。ブーチー以外。
続いて、朝日がピアノのオーディオ・データを持ってきたハチロクのゴスペルっぽい曲にトライ。打ち込みのキックだけが入っていたのをヌマちゃんのドラムに差し替える。情感重視でヴォーカルと一緒に録ることに。静けさのある曲なので、淡々と叩かねばならないのだが、ヌマちゃんはゴスペルのセッションをたくさんやってきたドラマー。吉田美奈子フリークでもある。予想通り、これもワンテイクOK。
つ〜ことで、11時回ってから、さらに4曲目。なんかこき使っているみたいですが、今日のセッション楽しいぞってことで、スタジオの雰囲気は最高。吉光くんもいつになく、アレコレ勝手に音作りしてたりして。先週のMEMORY LAB ORCHESTRAのライヴにしても、今日のレコーディングにしても、音楽の楽しさというのは何よりスポンテイニアスなフィーリングの中にあるというのを再認識しますね。でも、ミュージック・ビジネスの中で悪戦苦闘していると、どうしてもそれが失われがちになる。そんな中で、お金ことも人間関係のことも忘れて、初めてのメンバーでポッと演奏してみると、ああ、音楽やるってこういうことだったじゃん、と思い出したりするわけだ。
最後の曲は打ち込みでオケはもう完成していて、僕の仮歌が入っている仮題「ゴロワーズ」あらため、仮題「ディズニーランド・コンプレックス」。ヌマちゃんが「高橋幸宏めざして」機械と同化したようなドラムを淡々と叩く。なんだかジャーマン・ロックのようでもあり。チダはギターっぽく打ち込んだエレピとかくれんぼするようなエレピっぽいギターをところどころに。これも面白い素材が録れて、ワンテイクOK。お疲れ様。そういえば、今日は機材トラブルなどもなく、非常にストレスの少ないレコーディングでした。帰ってもちろん、パタンキュー。
10.24眠いです。走れません。雨降ってたから、そもそも走れないのだが。午後、渋谷の某レコード会社でミーティング。続いて朝日とミーティング。終らないので、そのまま田町まで移動して、三菱自動車ショールーム内のスターバックスで、PHATのリハーサルを横目に見つつ、さらにミーティング。次のマキシ・シングル「HAPPY NEW YEAR」のジャケットまわりの詰め。
PHATのライヴは次のアルバムに入る新曲中心。かなりハードな演奏。デス・ジャズ?などと、観に来ていたREMIX編集部春日さんと話す。終了後、ヌマちゃんの車でキング・カーティスのライヴなど聞きつつ、送ってもらう。さすがに疲れがたまっていて、12時前に就寝。
10.25久しぶりに駒沢公園へ。やや足に違和感があるので、ウォーキング4キロのみ。それでも午後にがっくり疲れが来て、スタジオには足が向かず。ずっと家でCDを聞く。 ジェームズ・テイラーやジャクソン・ブラウンやトム・ペティの新作。どれもサスガ。特にトム・ペティの「ラストDJ」が予想以上に良い。音楽業界の変質を痛烈に批判する歌詞が並ぶ。日本の音楽業界にもまさに当てはまること。こんな中で音楽の仕事をしていて面白いかい?と日々、僕が思っていること。でも、解説では一言もそれに触れられてないな。
・・・と、ミュージック・マガジンから次号の「シンガー・ソングライター特集」の原稿執筆依頼。70年代と2000年代、シンガー・ソングライター像はどう変わったか?ってのは良いテーマだなあ。書きたい気持ち盛り上がるが、書こうと思ったら3日はかかる・・・と言いつつ、きっと5日くらいかかる。残念ながら、今のスケジュールの中では無理か。
吉田美奈子「BELLS」のCCCDリイシュー盤も聞く。何年ぶりに聞いただろう? やっぱり素晴らしい作品でした。時がとまります。聞きながら、故生田朗さんのことを思い出す。僕がスタジオのこと、エンジニアリングのことにめざめたのは80年代の始め頃、生田さんにたくさんたくさん教えてもらったからだった。82年に初めてジャマイカに行く時も生田さんにはとても世話になった。生田さんが二つしか年上でなかったことは、今考えるととても不思議。いまだに生田さんの仕事は憧れです。
テロが続く。追い詰められた人々が彼らを追い詰めた体制のもとで平穏に暮らす人々を襲う。憎しみの連鎖を断ち切る方法を世界は見つけ出せないまま。9月11日から学ぶどころか、もっともっと悪くなろうとしているように見える。どこで何が起こってもおかしくはない恐怖が地球を覆う。
翻って、僕は音楽業界の中で闘っていかなければならない。ある意味、ラストDJとして、ラスト・クリティックとして、ラスト・プロデューサーとして闘ってやろう!と日々思っているわけだけれど、でも、闘う相手を敵とは考えないこと、その重要性について考えたり。
10.26ほぼ終日、ひとりでスタジオ。いろいろやる。ギター・ダビング、キーボード・ダビング、パーカッションの打ちこみ、プロトゥールズ上でのタイミング調整、EQして、コンプして、ディレイやリヴァーブ作って。次から次によくやることがあるなあ、と自分でも思うくらい。あっちのオレからこっちのオレまで総動員しているかのよう。気がつけば朝の6時。また割増無しのタクシーで帰宅。
10.27寝たのは7時近くだったが、10時半くらい飛び起きて、そのままスタジオに。ベッドの中でアイデアが浮かんでしまったので。3時くらいまで、またいろいろやる。
4時に下北沢に。今日は440で朝日の弾き語りライヴなのでローディー仕事をする。リハーサル終了後、ギャラリー下北沢に西脇くんの個展を見に行く。グリーンの絵が多い。一点、購入させてもらうことに。あ、個展会場のBGM用に作ったというCDがかかっていたが、これがまた素晴らしかった。大半はPCOPENが歌っている。「SEA OF MEMORY」収録の「SUN SEA」の歌詞付きヴァージョンもあったり。感触的には「BLIND MOON」に近い、静かな曲が多い。が、これはさかな名義の作品ではないそう。POCOPEN/西脇ユニットって、どこがちゃうねん?
440は今日はAMADORI、高橋徹也、ゴメス・zザ・ヒットマンの山田くんからなる4組の弾き語りライヴ。会場はほぼ満員。朝日は三番目で、新曲を含めた6曲を歌う。なぜか、朝日は最近、急にキーボードがうまくなった。リズムの安定度が以前とまったく違う。あと、歌のピッチもよくなっている。今年はたくさんライヴやっているからか。でも、今日のライヴは歌詞を間違えすぎ。
ライヴ終るともう11時。打ち上げは遠慮して、サッと帰る。