BEFORE GET IN SLEEP

10.07
軽くジョギング2キロのみ。大先輩の黒田くんによれば、20分以上運動しないと体脂肪の燃焼は始まらないらしい。ちょっとモチベーション落ちているのかなあ。
スタジオに行って、どのギターを持っていこうか迷った末、ES335にすることに。代々木のスタジオに向かう。代々木の駅前では何事もなく使えていた携帯が、スタジオに入ったら不通に。外に出ても駄目。いよいよ壊れましたか。携帯つってもピッチです。今は亡きアステルの。みんなに見せたら、「化石ですか? それは」と驚かれた。
スタジオでは新川くんの初のライヴ・リハ。メンバーはキーボードがNASICAというユニットの森くん、ベースがアップルズ黒田くん、ドラムスがPHONESのGAKUちゃん、ギターが僕。新川くんの曲はどれもスローだけれども、ひとりで全楽器演奏していることもあって、独特のグルーヴがある。もともとR&Bマニアのドラマーだし。でも、そうやって丁重に多重録音した曲をバンドで演奏するのは難しい。ノリでやって、盛り上がれる音楽ではないし。コードはめちゃめちゃ多いし、普段使わないキーばかり。僕は譜面とにらめっこして演奏するのが苦手なので、ミストーン多発で四苦八苦。
しかし、ドラムのGAKUちゃんはさすがダウンテンポ・マスター。ベースの黒田くんも彼自身、転調好きのソングライターですから、さらさらっと曲を理解して演奏している。初回にもかかわらず、良いグルーヴが出始めている瞬間もあり。キーボードの森くんもコード理論バッチリのソングライター。ピアノもバリバリ上手い。新川くんの相棒的存在にもなりつつあるので、アレンジ決まってくれば、バンドの核になるはず。あと、これら全員、バンド・リーダーですから、プレイヤーだけやっている人間にはない、ツボの押さえ方がありますね。
となると、穴は僕。う〜ん。もうちょっと出来ると思ったんだけれどなあ。ギターはアコギの方が良いかも。なにはともあれ、家で練習しないと。あ、新川くんのヴォーカルもなんだ歌えるじゃん!でした。初期キリンジ・レベルかと思ったら、全然、ピッチも良くて。これはライヴやるべきでしょう。
リハ終了したところにPHATのダイスケがやってきて、そのままミーティング。さらに東芝EMIの田中くんも合流して、12月発売のマキシに関して、いろいろと詰める。
一度、帰宅して夕飯食べた後、スタジオに。PHATのヌマちゃん来訪。「デート」のニュー・ヴァージョンを聞いてもらう。ヌマちゃんのプロデューサー的センスはいつもながら素晴らしく、エレピの扱いに関して、鋭いポイントを突いてくれたので、ふたりでMIDI編集からやりなおす。2時間ほどかけて、さらにヴァージョン・アップ。グルーヴが研ぎ澄まされ、ポップ度が増したミックスが完成。
珍しくヌマちゃんとゆっくり喋り、今月後半の朝日美穂レコーディングのためのアイデア出しなども、あれこれCD聞きながらしてみたり。ヌマちゃんと鹿島くんの初顔合わせ。コレは楽しみ。たぶん、ファンキー度にかけては日本最強のリズム・セクションが出現するはず。
帰宅後、FLEX LIFEからドラムの児島くん脱退のニュースを知る。音楽家には苦難の時代。そもそもがデリケートな音楽家同士のコミニュケーションもよけいに難しくなるのが分かるだけに、結構ショック。440でのライヴ最高だったのになあ、もう観れないのか。歌物ドラマーとして素晴らしいセンスを感じていました。

10.08
やや寝坊。慌てて東芝EMIにPHATのアルバム収録曲の仮ミックス集のDATをバイク便で送る。これからまた9曲も完成させねばならない。しかしまあ、自分でも驚くくらいレコードを作り続けていますね。でも、レコード幾ら買ってもまだ買いたかった時期と同じく、何枚作ってもまた作りたいのだ、今は。
昼頃に駒沢公園に出るが、ウォーキングの途中でボツボツ降ってきたので中断。家に戻って雑用などした後、ピキヌーへ。帰り道の駒沢公園で黒田くんに遭遇。今だったら走れるか、と思ったが、時間ないので諦める。
スタジオ行って、マスタリング直前の最後のあがき。昨日、ヌマちゃんとミックスした「デート」をまたやりなおす。スカみたいな8分ウラのパルスをエレピとは対照的なデジタル・シンセの音で入れたくなり、マイクロウェイヴで音作り。PHATの曲に僕が打ち込みを足したりすることは滅多にないのだが、今回はある種、「狙った」企画物だからアリでしょう。夕方までかかって、ファイナル・ヴァージョン完成。この曲、最初にミックスしたのは8月だったはず。さすがに聞き飽きましたが、でも、そこまでやるか!というポップ・チューンに到達した気がする。早くラジオから流れてくるのを聞きたいな。
夜はフジワラダイスケ・ソロ。「YUKI」という曲の前半と後半をミックス。後半はたぶん、違うタイトルの別の曲になるはず。これで残るは「IQ」と「MAKOTO」の2曲。「IQ」はほぼ出来ているので、簡単なマスタリング作業をして6曲入りのダイジェストCD-Rを作る。作っていたら、アルバムの全体像がぐっと見えてきて、気持ち盛り上がる。これは誰も聞いたことがないような音楽。アコースティックとエレクトロの融合、なんて使い古された表現だけれども、PHATのそれともまったく違った「有り得ない空間」の表現。聞き始めたら最後、パタンと後ろで扉が閉じてしまう。40分は出られないよ。そんなアルバムが出来るまで、あともう少し。

10.09
ウォーキング4キロ、ジョギング2キロ。中目黒のデザイナー菅原さん宅で、フジワラダイスケ、A&Rの田中くんとPHATのヴィジュアル・ミーティング。菅原さんはYAMAUCHIの一連のジャケットをやってもらった人。いろいろとアイデアが出て、アルバム完成に向けてのモティベーションも上がる。しかし、進行スケジュールを確認して、ちょっと気が遠くなる。
ダイスケとスタジオに行って、「デート」の最終ミックス確認。それからフジワラダイスケ・ソロのダイジェストを聞く。1曲、「スーパースター」のフェンダー・ローズの音色のみ、注文が。「今の音は海の中みたいなイメージ。そうじゃなくて、限りなく黒に近い紺みたいなカラーにして欲しい」。出来るかな。
渋谷でひとつミーティングの後、クアトロへ。スモール・サークル・オブ・フレンズのワンマン。開演が8時だったので早く着き過ぎ。ヒップランド松枝さんが楽屋に案内してくれたので、開演前にみんなと雑談。鹿島くん、マサユキ、上田くん、楠くんら、よく知ったサポート・メンバー。いきなり和みつつ、この感じ、久しぶりだなあと思ったのは、そう、最近は僕のまわりは二十代のミュージシャンばっかりだからだ。ここの楽屋ではみんなで筋肉痛の話とかしている。やっぱり、三十代後半以降になんないと出てこないでしょ、この適度にヨレた空気というのは。
SCOFのステージはさながら彼らのグレーテストヒッツ。でも、変わらないようでいて変わってきている。いつまでたっても少年と少女のような東くんとサツキさん。でも、声にはふくよかさが加わり、そして、バンドが放つ生のグルーヴと力強く呼応しあっている。久しぶりに鹿島くんのベースにぐらんぐらん揺らされ、マサユキのギターのツボに痺れまくり。今の朝日美穂バンドも良くなってきたけれど、何が違うかというと、演奏力だけじゃない色気の部分かな。
再び楽屋へ。朝日も観に来ていたので、鹿島くんとレコーディングの相談。来月は京都METROでSOCFと朝日美穂が一緒にやる。このメンバーで行くのは楽しそうだなあ。上田くんとちょっとシリアスな音楽活動のスタンスの話をしたり。マサユキと今後一緒に出来そうなことを話しあったり。TICAのタケチュー、ヒックスヴィル中森さん小暮くん、ナチュカラ森くん、ムース・ヒルのおふたりなどなどにも会う。
打ち上げ顔出したかったが、時間も遅かったので残念。スタジオに戻って、深夜、黙々とPHATのアルバムの仮ミックスを全曲、DATに落とす作業。さすがに眠くて眠くて、自転車置いて、タクシー帰宅。

10.10
意外に早起き。ジョギングのみ6キロ。前半好調で8キロ行けるかなと思ったが、3周目で足に来たので諦める。家帰ってもヘトヘトで、筋トレも少なめ。気力だけでは越えられぬハードルはあるものです。
新子安のJVCマスタリング・センターで、PHATのマキシ・シングルのマスタリング。メンバー3人も揃って、小鉄ルームへ。思えば、今年ここに来るのは四度目。世界の小鉄さんと年に四回も仕事できるなんて幸せ者だなあ、オレは(年内にあともう一回あるかも)。
小鉄ルームはスピーカーがJBLがメイン。スモールモニターはYAMAHA10M。ATCやDYNAUDIOやROGERSで普段、音楽を聞いている僕とはスピーカーの趣味はまったく合わない。だから、ここで聞く音は僕の聞きたい音ではないのだが、でも、家に持ち帰るといつもバッチリなのが小鉄さんのマスタリング。だから、僕はハイの出過ぎに気をつけるくらいで、最近はほぼお任せのマスタリングになりつつある。
でも、PHATの3人は小鉄マジック初体験なので、最初はJBLの音に戸惑ったり、先生に質問する生徒のように質疑応答の時間になったり。オイオイ、話が長くなりすぎ、と僕がたしなめる時間もあったりしたものの、4曲とも全員がコレだ!と納得するバランスに到達。今日も素晴らしいマスタリングでした。
終了後、3人は品川でのストリート・ライヴに。マスターの最終確認のために残った僕は、帰り際、小鉄さんに半ば、インタヴュー的な会話を。もちろん、話題はCCCDのこと。なんと、僕のこの日記がビクター社内でコピーされ、小鉄さんのところにも回ってきていたのを知る。
小鉄さんは東芝EMIの小野リサの新作のマスタリングをやったそうで、CCCDでも最大限、音質を損なわないマスタリングをするために、ビクター工場を使ってテストプレスまでしたそう(聞いた話をすべて明かすことは避けるが、音質重視でやってきたアーティストだけに、現場のスタッフは大変だったようだ)。しかし、小鉄さんも滝瀬さんと同じく、現状ではCDS方式のCCCD化を考慮して、先回りした音作りをするマスタリングは不可能だと言っていた。
ビクターの独自方式のCCCDの話も少しだけ聞く。小鉄さんのようにレコード・メイカーとオーディオ・メイカーの間で仕事してきた人は、どちらの立場も分かるだけに、非常に複雑な思いがあるだろう。良い音のことだけを考えていれば良かった時代はもう戻ってこないのだろうか? 何はともあれ、今回のPHATのマキシは通常のCD-DAです。僕達の音楽的環境を守ってくれたA&Rの田中くん、原島さんに深く感謝。
自由が丘で石焼きビビンパ食べて帰宅。深夜、ちょっと良い知らせ。たくさんの人に助けられていること。それなしに音楽活動をできる人なんていないことをあらためて思う。

10.11
ややヘバリ気味で、ウォーキング4キロのみ。今週末は溜まりに溜まった雑務を片付ける決意をするが、その実、なかなかはかどらず。
夜は朝日美穂レコーディング。こないだ打ち込みしたのはいつだったっけ? やった内容を全然憶えていなかった。今日は朝日はソファで歌詞にかかりっきりだったので、僕はエレピに時間を費やす。イーミューのサンプラーの機能を今まではあまり活用してこなかったのだが、マニュアル片手にベンド情報やモジュレーション情報の今までにない使い方を試す。クォンタイズ機能というのが面白く、そうか、こんなことも出来るのか。ギターっぽいコードワークが鍵盤で出来たり。エイモス・ギャレットみたいにグニョ〜っと・・・あ、あんまりやると、レイ・ハラカミっぽくなり過ぎ?
深夜に終了。今までだったら、ここで三宿の蕎麦屋でも行って、一杯やって、ということが多かったのだが、あしたの朝があるのでってことでサラッと帰る。不思議なもので、最近は過食をしなくなった。お腹がすいて、食事が待ち遠しくて仕方なかったりはするのだが、いざ食べる時は以前ほど食べられない。現在63キロ台。二十代の一番太っていた時よりは少なくなって、第一目標はクリア。でも、見た目はあまり変わらないみたいです。

10.12
今日もウォーキング4キロのみ。今週は駄目だなあ。筋トレもお休み。午前中から近所のスタジオでちょっとしたミーティング。しかしまあ、考えてみると、僕の日々というのは、ここではほとんど書きませんが、お金の算段に明け暮れています。何かというと、金、金、金のネゴシエーション。そんなこと気にせずに、良い音楽を作ることだけに集中できたら、どれほど良いかと思うけれども、出来るわけないなあ。オレが金に関して気をつかっていないと、とんでもないことになることばかりだから。なわけで、今日もちょっと気疲れる。まったく、言ったことは言った通りにしてくれ。仕事の途中で担当者を替えて、責任をタライ回しにしたりするな。と、珍しくグチでした。
自由が丘まで歩いて出て、ちょっとお買い物。午後は原稿を1本書いて、あとはゆっくり家のことを片付けるつもりだったが、なぜか、スタジオに足が向く。クラブキングから頼まれたラジオ番組用の選曲をしつつ、昨日やった朝日の曲の打ち込みの続きに手をつける。エレピのパートを細かく手直しし、ミュートロンのフェイザーを細かくいじりつつ、プロトゥールズに録っていく。アナログ通したいなあ、と思いつつ。
続いて、ベースをやり、ドラムをやり、琴のパートをやって、ベーシックなトラックはほぼ完成に。プロトゥールズで細かいカット&ペーストやタイミング調整。ぜ〜んぜんジャストじゃないパートが多いので、耳が頼り。しかし、奇妙なトラックを作ってしまったなあ。いきなり琴です、また。ハープ系の音色だったら何でも良いといえば良いのだけれど、琴の音色にした途端、シュール度が増すように思うのは僕が日本人のせい? 曲はメジャーセヴンス多用のフレンチ・ボッサな感じなのに、5音階の琴がたどたどしくループされ、エレピは半音階のスライドを繰り返し、シンセ・ベースはブニュブニュとベンドしまくっている。ドラムはボトボト粗く落ちる感じ。気持ちとしてはR&Bなんだけれど、果たして成立しているのやら?
朝日は自宅で歌詞を書いていて、現れる気配もないため、仕方なく、自分で仮歌も入れてみる。う〜ん、こういうトラックに、ピッチもリズムもバキバキにジャストなコーラスが乗ったら、すごくカッコイイと思うのだが、自分の歌だと何が何だか分からなくなってきた。もう少し、黒っぽく歌うとか出来ないのか? 出来るわけないか。夜半過ぎまで作業するが、途中でめったやたらに眠くなり、ソファで仮眠。気がついたら3時過ぎ。ヤベ。元の生活に戻りつつあるぞ。

10.13
今日はヤバイです。絶好のジョギング日和だったにもかかわらず、サボりました。筋トレも二日連続でしていません。理由は・・・目が覚めると同時に、昨夜の打ち込みのあそことあそこを直したいと思いつき、スタジオ直行。こういう生活が始まったら、リバウンドはアッという間だろうなあ。
午前中にさらさらっと直しをするつもりでスタジオに向かったものの、あれやこれや、あれやこれややっているうちに7時間くらい経っていました。途中、眠くなってソファでうとうとしたり。
夕方、帰宅して、いきなり鳥のガラスープなど作る。そのスープ使って、カレーも作る。チキンとポテトとブロッコリーのカレー。大盛りライスでバクバク食べて、う〜ん、今日はまさしくリバウンドデーか。
11時も回ってから六本木に。日本で初開催のSONAR SOUND FESTIVAL。YAMAUCHIが出演するので観に行く。前はニッサンのショールームだった場所が会場で、音響はあまりよろしくない。モニター状況のせいかYAMAUCHIもやり辛そうに見えたが、でも、フェス自体は定着するといいな、と思わせる内容かも。会場でロンドンで知り合ったバンボーラ・レコーディングの田中さんに会う。
砂原のDJを観たかったが、その前のアクトがつまらな過ぎたので、タクシー拾う。帰宅後、またワイン飲んだりして、とことん自制が効きません、今日は。誰かになじってもらわないと。