03.04 月曜の朝に帳尻を合わせるべく、明け方から仕事。なんとか乗りきる。昼には出掛ける予定だったが、午後の予定が変更になったので安心して、ちょっと昼寝。夕方、下北沢へ。アンディーズ・ミュージックが新しく作ったスタジオを覗く。さらに吉祥寺に行って、スターパインズでひがしみえちゃんのライヴを観る。前半はシークエンスも多用したドラムのジョーくんとのふたりのセット。後半はベーシストを入れて、トリオの生演奏。着実に力を付けているのが分かる好演。途中、やけに歌い回しがPOCOPENに似ている曲があったな。そのまま吉祥寺で朝日とマーブルトロン、THE IT氏で打ち合わせ。
件の壊れたコンプレッサーのインプット・トランスに関して、ネットで調べていたら、面白いイギリス人のサイトに当たったのでメールを送ってみた。すぐに返事が来て、いろいろ教えてもらった。回路図も手に入ったし、代替えのトランスも目当てがついたし、プロ・オーディオに関するネット上のアーカイヴというのは凄い。しかし、いろいろと工作したいことがたまっているのだが、時間が取れないのでフラストレーションが募る。03.05
午前中より原稿準備やもろもろ郵送作業など。午後にスタジオに行って、オトゲノム小汲さんと打ち合わせ。小汲さんのカーネーション時代の担当楽器はサックスだったそうだ。そういえば、サックス奏者のいたカーネーションを見た記憶がおぼろげにあるような。
夕方、東銀座に。東京録音というところで、朝日&モユニジュモの曲のマスタリング。僕と朝日としたことが珍しく余裕持って到着。前のマスタリングが押しているとうことだったので、マガジンハウス脇の「樹の花」に久しぶりに行く。「樹の花」はジョンとヨーコが訪れたことで有名な店(その時の灰皿をずっと保存している)。マガジンハウスでたくさん仕事していた時代にはよくここで原稿用紙に向かったりした。その頃はメニューになかったカレーがあって、食べてみたら、非常に美味だった。こういう店ではもちろんラテなんて頼まない。定番の樹の花ブレンド。滝本誠さんに本当にお久しぶりにお会いした。
東京録音でのマスタリングはなんともラフな作業。DATをプリズムサウンドのDAでアナログにして、AMEKのEQとコンプを通して、最後に僕のよく知らない新しいADでデジタルにする。でも、お名前知らないエンジニア氏は何十秒か聞いただけで、最後のADのインプットでレベル突っ込んで、ソフトリミッティングがバリバリにかかった状態にして、曲が終ると「どうですか?」。そんなマスタリングあるかよ! かつてボビー・ハタという人とやった時も思ったのだが、曲は一度くらい通して聞け! こっちはモニターの状態も把握できない。アンタだって、曲を音楽として把握する必要はないのか?
モニターはジェネレックの1031だが、二台のスピーカーは内向きに、軸がエンジニアの椅子のあたりに来るように置かれている。エンジニアの1.5メートルくらい後ろにいる我々のポイントでは、軸は交差してスピーカーはあさっての方向を向いている。当然ながら位相はめちゃめちゃだ。
こないだの東芝テラでのマスタリングもそうだったが、こういう状況ではデリケートな作業をするのは無理だ。ソフトリミッティングでバリバリ言っているのが気になったので、まずそれを外してもらい、AMEKでアナログコンプしてもらうように頼んだのだが、「ハイ」とコンプをオンにしただけ。セッティングはアアタックリリース最小、スレッショルドも最小みたいだったが、メーターはゲインリダクションではなく、レベルを振っているので、どのくらいかかっているのかも分からない。同じAMEKのコンプを滝瀬さんだったら、そんなんで音が変わるのかと思うくらい、微妙に微妙にツマミを触る。0.1ミリぐらいの精度で幾つかのツマミを動かしていくと、しかし、あるポイントで効果は劇的なくらい音楽的に表われる。
だが、今日はP-VINEのコンピレーションのマスタリングなので、我々がクライアントなわけではない。自分でコンプ、EQを細かく作っても良かったが、モニター状況もよく分からないところで、余計なことをすると失敗する可能性も高い。ヘッドフォンでDATのヘッドフォンアウトをチェック。マスターは悪くない。結局、デジタル上ではいじらないことにして、アナログでもコンプはなし、EQで中低域をちょっとだけカットして、あとはレベル合わせだけにしてもらうことにした。P-VINEのCDはいつもハイエンドが眠い印象があるので、そこを足しておくべきかとも思ったが、失敗が怖いのでいじれなかった。
たぶん、コンピレーションの他の曲はあのソフトリミッティングがバリバリにかかっているだろうから、そういう中に入ると地味に聞こえてしまうかもしれないが、この状況では仕方ない。しかし、かくもクリエイティヴじゃない環境で、マスタリングという重要な作業を行うというのは・・・・結局、音楽に対する愛情と、あとはそれぞれの人の生き方の問題だろうな。生き様ロックじゃないけれど、小鉄さんのところに行ったりすると、これぞ、生き様マスタリングって思うもん。
夜遅く、代官山でバウンス・レコードの斉藤さんと朝日と3人でミーティング。「バウンス」誌用の広告のデザインを見せてもらう。めちゃめちゃ綺麗。これは目立つぞ。初回注文もかなり好調みたいだ。そうそう、アルバムが出るというアナウンスがあったせいで、去年出した朝日/直枝のシングルもこのところ問い合わせ多数。良いムード。
なんだか今日はあまり働いた気にならなかったので、深夜、スタジオに。フィラ・ブラジリアみたいに、なんの変哲もないエイトビートを、でも、今の音として聞かすにはなどと考えながら、シンセ系のドラム音をアレコレいじってみる。帰りに三茶のツタヤで、ヴィデオ化された「ユリイカ」を借りるが、1本目の半ばで眠くなりダウン。03.06
午後よりスタジオに。今時、エイトビートの打ち込みをどうしたら聞かせられるか?について考える。
下北沢のアンディーズミュージックから電話。探していた機材が見つかったので、早速、自転車飛ばして買いに行く。そのままQUEに行って、アップルズのライヴを久々に見る。前半は新曲。後半はアルバムに入っている曲中心。フレパイ小野くんと黒田くんのコンビネーションも良く、バンドとしての成熟すら感じるライヴ。継続は力なりだな、やっぱり。「ステレオスコープ」はやっぱり名曲だし、初披露の新曲もなかじ〜の朗々とした声によくあった美メロで、レコーディング中の新作への期待も募る。
そのまま、下北沢で朝日とミーティング。あしたマスタリングの岡村トリビュートの細かいところに関して詰める。ふたりとも自転車だったので、三軒茶屋ツタヤに移動。やっぱり見つからね〜ぞ、PHATの「色」は。メジャーの営業力というのも万能ではないということか。
帰宅後、「ユリイカ」に再チャレンジ。が、また15分くらいで落ちる。ヴィデオで見ているせいだとは思うが、モノクロでオーヴァー露光気味、かつセピア系に色褪せた画面はかなり疲れる。03.07
午後より新子安のJVCマスタリングセンターで岡村トリビュートのマスタリング。思えば、朝日/直枝のシングルのマスタリングをしたのは去年の6月。9月かけて、ようやくアルバム完成までこぎつけたわけで感慨もひとしお。
全11曲をマスタリングするわけだが、サウンドがバ〜ラバラなので、簡単にはいかない。しかし、小鉄さんの魂のこもった仕事ぶりには本当に本当に敬服させられる。そして、今日は何度も何度も小鉄マジックを見た。参加アーティストの中ではFLEX LIFEの青木さんと大倉さん、ニーネの大塚くんが立ち会いに。最近、その歌声にぞっこん入れこんじゃっている青木さんと会ってドキドキ。でも、楽しくお喋りさせてもらう。今日の白眉はそのFLEX LIFEのマスタリング。ディアンジェロの「ヴードゥー」みたいなサウンドに、ということで小鉄さんにCDを渡すと、いや、ビックリ、目の前で本当に「ヴードゥー」みたいなサウンドになっていく。最後はどっちがどっちだか分からなくなるくらい。メンバーも僕もただただ驚いて、頷くだけでマスタリング終了。ニーネのマスタリングも大塚くんが持ってきたペイヴメントのCDをリファレンスにしたら、ベースの重心の位置がぐぐっと変わり、ラフなようでいて艶のあるムードに。ここまでマスタリングで変わるのか!と、あらためて思った。
僕はLYRICOの「LION HEART」もミックスしているのだが、小鉄さんのマスタリングにはあれこれ注文をつけることもなく、スケール感が何倍にもなった仕上がりに満足。ともかく、アルバム全編に小鉄さんが魂を吹き込んでくれた。同じマスタリングという名の作業でも、一昨日とは天と地ほどの開きがある経験。つまるところ、それは人間としての生き方の差から来るものだろうし、オレもまたそこだけは絶対に譲らずに生きていこう、とあらためて考えたり。
マスタリング終盤、今日の最大の問題は朝日の「だいすき」のヴァージョン選び。僕は山口泰ミックスを収録することを提案。でも、朝日はシングルと同じ僕のミックスを入れたがって、ずっと平行線だった。僕のミックスの方が明るく、ラジオ・エアプレイを意識したシングル向きだったが、山口泰のミックスの方がグルーヴは強力だ。僕は全楽器を演奏しているので、山口泰がそれを使って組み立ててくれたグルーヴも聞きたい。ギターなんて二十倍くらい上手く聞こえるし。
ただ、いつもながら彼のミックスはダークではある。ニューヨークでやったこともあって、洋楽的でもある。カッコイイけれども、岡村楽曲の持つユーモアからは遠くなる。そこを小鉄マジックでポップな明るさを加えてもらうようにお願いする。結局、バウンス・レコード斉藤さん、オトゲノム小汲さんの口添えもあって、朝日を説得。山口泰ミックスを収録することに。まあ、僕としては自分のミックスが入ったら入ったで、それも良かったのだが、聞く人はどっちを好むのだろう? できたら、両者を聞き比べてもらうと、面白いはず。ミックスというのも、やはり人間が表れるものだ。
マスタリングは待ち時間が長いので、僕、朝日、斉藤さん、小汲さんでたくさんたくさんお喋り。一緒に仕事する上では、こういう時間を共有して、ジョークが飛ばしあえる仲になることも大事。一回限りのチームになるかもしれないが、良いメンツだなあと思う。みんな、この企画を面白がっている。そりゃそうだよ、こんなCD、作れないもん。メジャーじゃ無理。でも、インディーでも難しい。その狭間でスタッフが集まったからこそ、出来たのだ。各方面からの反応もめちゃ良し。あとは売るだけ。ガンバロ〜。