BEFORE GET IN SLEEP

01.01
元旦の明け方まで働いたのは初めてかも。初詣どころではなく、夕方までベッドから出られず。薄暗くなってから近所のスーパーでワインとふぐ刺しを買って、実家に。父の介護を申し訳程度に手伝う。
父を寝かせた後、母とふたりで静かな食事。ふぐを食べさせようと思ったのに、彼女は肝のところは怖いと言って食べなかった。これが旨いのに、いいじゃん、正月に旨いもの食って死ぬなら、とひとりでバクバク食べた。
母は70歳にしてノートブック・パソコンを買い、メールはもちろん、表計算までやるようになっていたりして、周囲を驚かせている。サスガ、オレの親。僕はWINDOWSを扱ったことがないので、やり方、教えてもらって、ネットに繋いでみたり。しかし、正月に実家に帰っても、やることがない。母もテレビをつけないので、ひたすら静か。ここはホント、東京とは思えないくらいに静かだ。
僕はひとり暮らしを始めてから一度も実家に泊まったことがなかったのだが、初めて泊まる。18年ぶりくらいか。自分の部屋はレコードの倉庫になってしまっているので、茶の間に寝ることに。夜中にあまりにやることがないので、テレビをつけたらスピルバーグの映画をやっていたので、途中からだったが最後まで見た。奴隷船での反乱とその裁判をめぐる映画だが、誰かタイトル教えてください。

01.02
朝8時に起きて、また父の介護を申し訳程度に手伝ってから帰る。自由が丘でスターバックス行って、開いたばかりのスニーカー屋でスニーカーを衝動買い。福袋目当てに行列が出来ている店が結構あるのに驚く。家に戻って一息ついてから、自転車でスタジオに。PHATのミックスの続き。ほどなくダイスケもやってきて、アルバムの最後の仕上げに突入。こないだ山口泰とやりなおした「MEXICAN PUSHER」をさらに細かく手直し。この曲がシングル的な扱いになりそうなので、ヴィデオ・クリップ用のショート・ヴァージョンなども作る。
こないだ落した「BLACK BIRD」にダイスケからエディットの注文が出るが、これは僕が突っ撥ねて、大晦日のミックスで行くことに。最近、ダイスケは曲を短くしよう、短くしようとする。以前はPHATの曲は演奏を始めるとすぐに10分を越えて、それがPHATのスタイルなのは分かるが、レコードにする時は4、5分の曲も作らないと、と僕が説得する側だった。が、BLUE NOTEからのフル・アルバムは10曲から11曲も収録されたものなりそう。僕はここまでコンパクトな曲が並ぶとは思ってもいなかった。
続いて、「MM」という曲のエディットを再び。意外にてこずる。それからやりかけだった「TIGHTEN UP」のミックス。正月からこんなに働いて、売れなかったらオレもうヤダよ、とダイスケを脅しつつ、またまたふたりでエディットに次ぐエディット。スタジオでフリーに演奏したものをエディットして、ポップな構成を与えることは本当に上達したな。
食事もせずに働き詰めだったが、ラッキーなことに近所に越してきたカン(アキトシ)ちゃんから新年会の誘い。韓国雑煮を食べさせてくれるというのでダイスケとふたりで飛んで行く。カンちゃんの友達数人による新年会はかなり酒が空いた頃合いだったが、僕達はともかくウホウホ食べる。カンちゃんがまたまた恐ろしく手際よく料理を作っては出してくるのに驚く。
OL度の高い新年会だったので残念だったが、ガーッ食べるだけ食べてゴチソウサマ。スタジオに戻って、ミックスの続き。結局、午前4時までやる。最後の方で新年会をお開きにしたカンちゃんが来訪。話していたら、カンちゃんとダイスケは同じ明治大学。共通の知り合いがたくさんいることが判明。話盛り上がっていた。

01.03
なんとかベッドから這い出て、またスタジオに。ひとりで昨日の「TIGHTEN UP」の仕上げ。爆音で聞いたら、いつものようにベースが出すぎだったので、キックとのバランスを作り直す。パンニングなども細かく調整。これはまた良いミックスになったぞ。PHATとは思えないくらいオープンかつスムーズなナイス・グルーヴ。
ちょうど終ったところに朝日がやってきて、正月中にやらねばならない作業を箇条書きにして渡される。どんどんやりましょう。岡村トリビュート用のイルリメに渡す音源を編集。続いて、すでに上がっている曲を繋げてダイジェスト的にまとめたCD-Rを作る。言ってみれば映画の予告編を作るようなもの。この編集には燃えた。だって、オレは天才じゃん、PRO TOOLSでのこういう作業に限っては。ただ繋げるだけじゃつまらないので、1曲の中で良いところを圧縮したものを作って、さらにそれをテンポ感も細かく調整し、フェイドやカットアウトも細かく書いて、8分ほどの予告編が完成。コレ聞いたら、絶対、凄いアルバムだって思えるだろうな。ネットにアップしてみたい。
CD-Rをたくさん焼いた後、朝日美穂レコーディング。先日からやっている曲のハーモニー・パートの録音。今日は声の調子が今一つで難航したが、なんとか録り終える。あとは間奏のパートが出来れば、ようやくこの曲も完パケ。
さらに以前、レコーディングした曲、2曲を検討。青柳くんとやったマドンナのカヴァーはオケはもうコレで良いのでヴォーカル・アレンジの方向性だけ詰める。もう1曲は1年くらい前にレコーディングした曲だが、久しぶりにファイルを開けてみたら、これが良いわ。ライヴでも何度かやった曲だったが、このレコーディング・ヴァージョンは僕の打ち込みにエマーソン北村のキーボードと松永孝義さんのベースをダビングしただけのもの。でも、このオリジナル・アレンジがグ〜だったのだ。続き明日。

01.04
こうやって毎日、駄文を書いていても、せっかく読みに来てくれる人がいるのだから、もう少しは面白いことでも書きたいもの。が、ともかく全然、余裕がない。年内に終らなかった原稿は山積み。に加えて、急遽、締め切りを告げられた仕事も増えたりして。PHATのアルバムの締め切りもあと数日。世間が静かなうちに、なんとかラッシュしたいのだが、疲れが溜まっているのか、身体が動かない感じ。
しかし、鞭打って、午前中から原稿仕事。が、なんかピリッとしたいなあと思ったら、そうだ、今日からピキヌーが開く、ということを思い出した。駒沢公園を駆け抜けて、即、飛んで行く。ナムプラーたっぷり振ったグリーン・カレー。ピキヌーのご夫婦は約一ヶ月間、イタリアに旅行に行っていた。その話を聞かせてもらったり、イタリアで買ってきたCDを見せてもらったり。この店はカレーも素晴らしいが、かかっている音楽もいつも良い。今日もさっきからかかっているCDが良いな〜と思っていたら、なんと、チョコレート・ジーニアスの新譜。「あ、これ知り合いなんですよ、前にCD渡したSAKANAってバンドとニューヨークで一緒にライヴやったこともある」と言ったら、驚かれたが。
スタジオ行って、PHATの「体操」のミックスのやりなおし。ナレーションとヴォコーダー入りのヴァージョンを作り直しているのだが、アナログ・ミキサーになって以来、トータル・リコールが効かないので、どうも前にミックスした時のハイパーな高揚感が出ない。出そうとすると、あちこちのデコボコが気になってしまったりして。ミックスというのも生演奏と一緒で、ファーストテイクが良いというか、やりなおすと細部は丁重になるのだが、勢いとかグルーヴとかが落ちてしまうことが多い。結局、納得できるところまでは行かず。
夕方から朝日美穂レコーディング。マドンナのカヴァー曲の歌入れ。リード・ヴォーカルを何テイクか録った後に、部分的にダブルにすることを僕が提案。彼女はいつもダブルのを嫌がるのだが、ヴィンセント・ギャロを聞かせて説得する。部分的に、とある言葉を強調するためだけにダブルを作る、ラップ・グループみたいな感じのダブルをトライ。
続いて、ひがしみえちゃんに来てもらって、別の曲にピアニカのダビング。僕がシンセで考えたフレーズをコピーして弾いてもらったのだが、さすが、みえちゃんは飲みこみが良く、彼女らしいコミカルなニュアンスも加わった良いテイクがサラッと録れた。終了後、祐天寺のK'S KITCHENで食事。店に入ったら、アリス・クリークの「DON'T YOU CARE」がかかっていて驚く。懐かしの「TOTALY WIRED VOL.7」に入っていた僕の大好きな曲。こないだ大阪のDAWNでDJした時にもかけていたら、エゴ・ラッピンの森くんに「ワハハ、トータリー・ワイアード」と笑われたのだが、オリジナル盤が東芝EMIでCD化されているなんて知らなかったな。まだ買えるんだろうか、コレ。しかし、僕が好きな店は音楽も良いな。

01.05
ゆうべは倒れるように寝てしまったので、意外に早起き。午前中から原稿、原稿。なんとか2本は終える。外は雪になりそうな寒さ。が、次の原稿用の資料が足りないのに気づき、渋谷まで買いに出掛ける。しかし、渋谷みたいに沢山レコード屋があっても、いざ1枚のレコードを探そうと思うと見つからないもの。関係ないレコードを7、8枚買ったところで諦める。タワレコでは「SEA OF MEMORY」、「KING OF PIMP」、「樹海」すべてが面出しされていてニッコリ(PHATは二ヶ所で展開)。誰も知らない新人、YAMAUCHIもリミックスやバウンスでのレヴューが効いたのか、ここに来て、良い展開が始まりつつある。
家に戻ろうか、スタジオ行こうか迷ったが、なんとなくスタジオに。やらねばならない仕事は山積みなのだが、なんとなくCD聞いたり、ギター弾いたりして過ごす。そうそう、昨日、アメリカから到着した荷物を開封。AKGのスプリング・リヴァーブ。PHATの「体操」の中間部でショート・ディレイを使って、スプリング・リヴァーブ風のサウンドを作っていたのだが、本物が手に入ったので早速、差し替えてみる。AKGのスプリング・リヴァーブは評判通り、内蔵のEQが強力。こりゃ面白いわ。ダブするのには最高。
そのまま「体操」の仕上げに入る。ヴォコーダー・パートの扱いが難しかったのだが、左右に逆相で振って、極端なEQしたら上手くいった。前にミックスした時はちょっとミッドローが薄かったので、マウス・オン・マーズと聞き比べながら、AVALONのコンプ/EQトータル・バランスを作る。この扱いもようやく慣れてきた。が、今回はテッド・ジェンセンにマスタリングしてもらうので、トータル・コンプは控え目に。かなり良いミックスになったはず。
続いて、昨日までやっていた朝日の曲、2曲の仮ミックスを作る。仮ミックスのつもりだったのだが、やり始めるとついつい細かく作り込んでしまう。なんのかんので午前3時まで作業して、ようやく終了。

01.06
午前中はいつものように原稿・・・って言って、うちの原稿は全然来ないじゃないか、と言っている編集の方々もいるとは思うのだが、もう少しで全部片付くはず(って去年の仕事がだが)。そうそう、ゆうべからフォー・テットの2枚のCDを繰り返し聞いていたのだが、これはいいな。最近のイギリスの非クラブ系の音楽では出色。非クラブ系といってもロックではないし、エレクトロニカでもない。なんだろう? ペンギン・カフェ・オーケストラの21世紀版かもしれない。イギリス独特の田園的というか牧歌的というか、そういう空気感があるのがいい。あと、音の肌合いは違うけれども、アコースティック楽器にエレクトロニカルな(?)編集を凝らしていく手法は、今、僕がPHATのレコーディングでやっていることとかなり共通する。
もう少しで全部終わるのはPHATのレコーディングもだ。最終コーナーをまわって、ゴールのテープが見えてきた。午後にスタジオ行って、最後に残った1曲、「DEFLECTION」のミックス。しかし、これがほとほと難しい。ポエトリーが入る前のラフミックスの感じが良いのだが、たぶんカセットテレコに吹き込まれたのだろう、まったく違うローファイな空気感のポエトリーとの共存を考えると、成立しなくなってしまった。が、前回やったミックスは両方をひとつのフレーミングに収めようとエフェクトを多用しすぎて、全体がこじんまりとしてしまった。こういう場合はどうしたらよいか。全部バラすしかない。ドラムのチャンネルを減らすところから始めて、EQ、コンプもすべてやりなおし。リズムセクションだけで聞いて気持ち良いところに戻り、それからポエトリーとエレクトロニクス、サックスのバランスを、あまり神経質にならず、ざっくり決めて、それでOKということにした。とはいえ、10分もある曲なので、最後にDATに落すところでの調整を何度もやりなおす度に、また10分、また10分。う〜ん、もうぐったり。
これでついに全曲のミックスが完成だが、でも、やりなおしの可能性はアリなので、卓のレベルやEQは細かくメモ。続いて、夜はいつものように朝日美穂レコーディング。ゆうべ作った仮ミックスを聞いてもらうが、恐れていた通り、アレコレ注文が出て、やりなおすことに。お任せ、と言っていたのに・・・とブツブツ。トータル・リコールが効かないのは、こういう時にとても不便だ。だから、仮ミックスなんかはPRO TOOLSの中だけでやればいいのだが、でも、一度アナログに出して音を聞いてしまうと出来ないんだよな〜。NEOTEKのEQは優秀で、最近はNEVEより気に入っているくらい。ヴォーカルやベースを単体で卓に立ち上げるだけで、もう存在感が全然違うのだ。
仮ミックスやりなおしの後は別の曲の歌入れ。元ミュート・ビート組のベースとオルガンを卓に立ちあげて、ヴィンテージ・レゲエ風のミックスを作ってから作業。曲自体はレゲエではないのだが、ソウル・シンジケートとかボリス・ガーディナーとかがやっていたファンキーなジャメイカンR&Bっぽいイメージ。今日もまたAKGのスプリング・リヴァーブが活躍。やっぱよいわ、アナログは。
リード・ヴォーカルと6パートぐらいのコーラスをざざっと録って、さらにギブソンES125Tで緩〜い感じのギターをかぶせて作業終了。POCOPENに貸していたES125Tが帰ってきたのだが、良いギターだな、コレ。まだ歌詞を書き直す可能性もアリということだったので、仮の仮ぐらいのミックスを作って落す 。
気がつくと昼から何も食べていなかったのだが、日曜日の深夜になってしまったので、店がほとんどやっていない。仕方なくラーメン食べて帰宅。帰宅後、月曜日の朝に怯えて、再び原稿に戻る。