東京地方裁判所判決、昭和56年2月27日 本件離婚の準拠法は、法例16条により夫たる被告の本国法、すなわちフィリピン共和国の法によるべきところ、同国法は離婚に関する規定を欠き、したがって、反致もまた認められないものと解される。 しかしながら、妻たる原告が日本国民であり、しかも日本に住所を有すること、原被告が日本において婚姻し、その婚姻生活も日本において営まれたこと、被告が原告を悪意で遺棄した場合であることなど、前記認定の原被告間の婚姻関係の実情からすると、かかる場合にまで、なお夫の本国法であるフィリピン共和国法を適用して離婚の請求を認めないとすることは、わが国における公の秩序、善良の風俗に反するものというべく、本件については、法例30条により前記フィリピン共和国法の適用を排斥し、法廷地法であるわが国の民法を適用すべきものと解するのが相当である。