後ろをとられてしまった状態から生き延びるのは大変に困難で、基本的には「運」に大きく左右されます。よしんば逆に敵機を撃墜できたとしても、それは単についていただけ、だと思っておいた方が無難です。形勢逆転できるような機動も特定の機種、特定の状況下では確かに存在します。が、それはあくまでも「初弾が回避できれば」というのが必須条件となります。先読みされて最初の1撃で落とされてしまえば、逆転もへったくれもありません。
とはいえ、後ろを取られたからといって諦めてしまってはいけません。いくら運次第といっても、こちらの努力次第でその確率はまったく変わってくるのです。ここでは、そのような状況でどのようにして飛べばいいか、簡単に書いてみたいと思います。
とりあえず、全ての回避の基本となる機動と言えます。左右どちらかのラダーを一杯に蹴り、同時にその方向へバンクし、スティックを引き急旋回します。単純なだけに読まれやすいのですが、高速で突っ込んでくる敵機に対してはタイミングさえ間違わなければ大抵回避できます。この時、スライスターン気味にブレークするとさらに回避しやすいです、というか、大抵はこうします。また、回避方向は相手のいる方向(右後方から迫ってくる敵に対しては右方向へ)というのがセオリーです。これは、自機と敵機の交差角をより大きく取れるためです。
初弾の回避に成功すれば次の機動に移りますが、回避後敵に食いつかれてしまった場合、ベーシックな選択肢としてはダイブ、スパイラルダイブ、シザース、ジンキングなどがあり、状況や機体性能に応じて使い分けます(実際はパイロットの癖によることが多いと思いますが)。敵機が上空からダイブして突っ込んできた場合はそのまま上空へと逃げていくケースがほとんどなので、その場合はこちらの体勢を少しでも整え次に備えます。
ブレークの応用として、スプリットSによる回避があります。スプリットSというのは水平飛行から180度ロールして背面になり、スティックを引いてループの後半のように回る機動です。最初のロールでもたつくとそのまま死に繋がりますが、低空でこれをやると無理に追従しようとした敵機はそのまま墜落してくれる可能性があります。自分の乗る機体でスプリットSができる最低限の高度を把握していると役立つと思います。
敵機より高速な機体に乗っている場合や、とにかく近くの味方に助けを求める際によく使われる機動です。ブレーク後、自機と敵機の進行方向が反対方向になってたりすると条件としては最高なのですが、とにかく降下し速度を稼ぎます。うまく行けばこれだけで離脱できますが、その時の状況や敵機の性能によっては振り切れなかったりします。大抵の場合、ブレークして躱さなければいけない状況ってのは敵機優位なので、これだけじゃ離脱できないことが多いかもしれません。その時は別の手を考えましょう。
垂直ダイブ中にロールをし続け、離脱方向を悟られないようにするのも手です。機種によっては、高速時のロールレートが極端に落ちる機体もあり、このような機体相手には特に有効です。
なお、降下時には機体にかかるGが0になるように飛ぶと効率的な加速ができます。これはアンロードと呼ばれています。が、緊急の場合にはとっとと真下向いてケツまくることが先決なので、あまり気にする必要はありません。
これは、ブレーク後の旋回をそのまま維持する機動です。降下旋回を続けることでコーナー速度近辺での最大効率旋回を維持します。これは局面をそれ自体で打破できるような機動ではありません。ですが、高度さえあれば続けられるので味方の援護を待つ時間稼ぎもできますし、その間に敵機が何かミスをしてくれるかもしれません。間違ってスピンでもしてくれれば一気に形勢逆転です。
また、この機動中にうてるバクチとして、スロットルを絞り(アイドルでも構わない)同時に降下率を徐々に下げるというものがあります。射撃位置につけそうでつけない敵パイロットがこの減速に気づかなかったりすると、一発でオーバーシュートさせられます。その後、逆方向へ切り返せば敵機後上方につくことができるはずです。ちなみに上図は、これによりオーバーシュート気味になっている状況(のつもり)です。
# ちなみに、そんな虫のいい話はめったにありません(^^;;;
ブレークでとりあえず躱せたものの射程内に食いつかれた場合や、ダイブやスパイラルダイブで逃げるだけの高度がない場合、この機動になります。自機と敵機のなす角度が割と大きいときには最初から積極的にこれを狙うこともあります。
やることは単純で、最初のブレークとは逆方向へ旋回を切り返すのを繰り返すだけです。ですがタイミングは微妙で、早すぎれば敵機の目の前に自分の後方を晒すことになりますし、遅すぎれば切り返しの前に被弾してしまいます。このタイミングは後方視界で見える敵機の状態から判断してください。敵機が早めにオーバーシュートした時はすぐに切り返してかまいませんが、じわじわとオーバーシュートしていくような時は十分に角度がずれたのを確認してから切り返してください。
これがタイミングよく行われると、何度かシザースを繰り返した後に相手後方につけ、完全に逆転することができます。そこまできれいに決まらなくても、敵機と正対するところまで持っていけます。その後そのまま直進して離脱するか、そのまま回りつづけて格闘するかは乗っている機体やその場の状況によります。
上記を読んでいただくと分かる通り、切り返し時にもたついているとあっという間にたたき落とされてしまうので、敵機より低速でのロールレートが低い機体でこれをやるのは考えモノです。ロールレートで勝っていても状況判断に優れたパイロットが相手だと、動きを読まれてやられてしまうこともあります。また、高火力機を相手にしている場合はどんな状況でもお勧めできません。
この機動はエネルギーの消耗が激しく、あっという間に失速寸前になります。2回くらい切り返すともうどうしようもないくらいエネルギーをロスしていると思います。そのため、周りに他の敵機がいるような状況では、たとえ当面の敵を片付けたとしても他の敵機に狙われるケースが多くなってしまいます。また、タイミングを間違うと即致命的な状態に陥ることも考えられるので、他に手があるときはやらない方がいいでしょう。
バリエーションとしては、旋回の切り替えしをバレルロールぎみに行うことも考えられます。これはローリングシザースと呼ばれ、ただのシザースと比べると洗練された機動です。
さらにほとんど反則に近いのですが、切り返しのロールを行わず、スティックを前に突っ込んでマイナスG旋回で旋回方向だけを切り返す、というのもあります。レッドアウトするなど、相当バクチ的要素の強い方法ですが、ハマれば面白い手ではあります。
ジンキング
完全に食いつかれてしまった場合に、自機の機動性能が低くシザース程度ではお話にならない時に使われます。この状況を見ても分かる通り、かなり絶望的な状況ではありますが・・・
これは3舵をとにかく不規則に使い、相手の照準から外れつづけようとする機動です。動きに規則性を持たせないように気を付け、ある程度大きく動くようにしましょう。あまりちまちま動いていても、そのエリア内に弾幕を張られればおしまいです。
個人的には、もし他に選択可能な機動があればそちらを選択するのが無難だと思います。特に加速に優れ、防弾性能がそれなりに高い機体に乗っているのであればとっとと距離を稼ぐことを考えた方がいいです。その時に軽くジンキングするのは有効だと思います。
ある程度の速度で飛んでいるときに、後方から迫る敵のオーバーシュートを誘い逆転を狙う機動です。ちなみに、上の画像は参考になりませんです、はい。
敵機の射程距離に入る寸前にラダーを一杯に蹴ってバレルロールをうちます。この時失速してしまわないように注意し、スロットルは適当に調節します。できればスロットルはフルのままがいいです。敵が賢い相手であればいったん上昇し、第2撃に備えるのですが、血の気の多い奴や慣れない奴だとこちらのバレルに追従しようとしてオーバーシュートしてくれます。
その後、可能であれば攻撃に移るのがベストなのですが、こちらもエネルギーをぎりぎりまで消費してへろへろになっているケースが多く、なかなかそこまで行けないというのが本当のところです。
スローロール
敵機との速度差が小さく、直進や多少の横滑りでは被弾しそうな微妙な距離だができるだけ直線でドラッグしたい場合などに行う機動です。
機動といっても大それたことをするわけではありません、ただ単にゆっくりとしたロールを打ち続けます。この時、ロール軸が水平直線上に乗るようにラダー、エレベータを使います。つまり、右90度バンクの時には左ラダーを踏んで支え、背面状態ではスティックを押し込んで機首方向を保つのです。この機動では機体の滑る量、方向が変化し続けるために位置予測が困難になります。その利点を最大限に活かすためにロールレートは意図的に低めに押さえます。
さすがに慣れられてしまうとその分の修正をされてしまうので、ラダーやエレベータの使い方を不規則にして的を絞らせないようにしましょう。
とはいえ、ラダーやエレベータの使用は最小限にしてエネルギーロスを押さえましょう。自機、敵機の性能次第では、スローロールをしながら距離を引き離すことさえ可能です。
プッシュオーバー
これもスローロールと似た状況で使う機動ですが、こちらはドラッグするのが目的ではなく逆転することを第一目的として狙います。
まずは機首を上げ上昇します。敵機がこれに追従し射程距離に入ろうかという頃合いを見計らってスティックをレッドアウトするかしないか程度に前方に押し、急降下に移ります。自機の挙動が把握できていれば多少レッドアウトしてしまっても構いませんが、その状況でも機体操作できなくてはなりません。
この開始時には、全く上昇せずにいきなりスティックを前方に倒す、もしくは軽く機首上げ姿勢を作ってから一気にスティックを前方へ倒すというバリエーションがあります。あまり上昇を長く取るとこちらの意図がバレてしまいがちですので、その辺は工夫しましょう。
大抵のパイロットはマイナスGがかかるような機動はあまり想定していないので、こちらの動きを見て慌てます。しかもこちらの機体は敵機のエンジンカウリングに隠れるようになるのでさらに慌て、必要以上にスティックを突っ込んでくれるはずです。これでうまいことレッドアウトしてくれれば大成功です。
まぁ、実際にはこううまくはいかないことが多いのですが・・・攻撃側としてはこの機動に対抗するのはさほど難しくないんです。一度やって引っかかってくれなかったら別の手を考えた方がいいかもしれません。
ちなみに、「プッシュオーバー」とは、単にスティックを前に倒すことを指します。
まぁ、かなり確率の低い賭けではありますが、こんな手もあるよ、ってことで。マイナスGでの機動に関しては「そんなん実機じゃやらんちゃうんか」という意見もあるかと思いますが、僕が知る限りでは確かに通常時の飛行ではめったにやらないそうですが(機体がそもそもマイナスGに対しては耐性が低い、パイロットにとっても苦痛であるetc.)、緊急時には見られたようです。独空軍のエース、エーリッヒ・ハルトマンは敵に後ろを取られた時、プッシュオーバーの変形で躱していたようですし、元自衛隊パイロットのほにゃらら氏は切り返しなしのマイナスGシザースを逆転技としていたとの話もあります。
僕の場合、最近は単純なブレークばかりがメインです。それもかなり早いタイミング(射程距離に入る遥か前)で開始し、その旋回も降下部分を長めにとります。すると、より高速で突っ込んでくる敵機が速度超過でオーバーシュートする可能性が大きくなりますし、軽戦系ではコントロールできなくなることさえあります。この旋回中、敵機から目を離さないようにし、ちょっとでも追従できそうな場合は旋回を強めにします。
とにかく、最初にも書いたように絶対に諦めてはいけません。気づかぬうちに味方がカバーしてくれるかもしれませんし、敵機の弾薬切れで助かるかもしれません。操作ミスで敵機が落ちてくれる可能性だってあるんです(むしろこれは狙っていくべきです)。空に浮いている限り「悪あがき」してやりましょう。