Last update 22 Oct. 1999
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Attacking Maneuver


 攻撃機動の目的は、「オーバーシュートを避けつつエネルギーロスを押さえ、優位に占位し続ける」ことにあります。敵機の後ろをとり続けることだけを考えるのなら、敵機と速度を合わせて敵機の飛行経路をトレースすれば済むだけの話です。旋回性能に優れた機体なら十分可能でしょう。しかし、速度で優位にある時に、わざわざそれを捨ててまで食らいつくことにメリットがあるでしょうか。目前の敵だけを考えた時はそれも悪くないかもしれませんが、それでは敵機に与えなくてもいい逆転のチャンスを与えることになります。第一、敵は目の前の機体だけではありません。敵機と激烈な格闘戦の末、叩き落としたところで上方に新たな敵機が現れたら、エネルギーを失い機動すらままならない状態で何ができるというのでしょう。

 というわけで、エネルギーロスを極力押さえつつ敵機を撃墜可能なポジションにつくための機動が色々と考えられてきたわけです。これらの機動は全て位置エネルギーと運動エネルギーを相互に変換しています。要は速度が速すぎれば(横旋回で無駄に減速するのではなく)上昇して速度を高度に変え、速度が遅すぎれば降下して高度を速度に変えるというだけの話です。多少のバリエーションはありますが、押さえておかなければならないのはこれだけです。

 基本的に、五分五分の状況から「1発で敵機の6時がとれる」機動は存在しません。実際の戦闘では、小さな優位を積み重ねることで決定的な位置につけることとなります。その途中でミスをしてしまったり、判断が遅れればあっという間に逆転されることもあります。

 以下の各機動は、自機がエネルギー優位にあるというのが前提となります。たとえ後方につけたとしても速度で負けていたならば、敵機が射程外に出るまでに落とさなければチャンスはありません。それどころか、逆に苦境に立たされる可能性も十分にあるのです。

High-YoYo

これでわかるでしょうか?

 敵機のブレークに追従できない時に、余剰分の速度を高度に変えエネルギーを維持しつつ、旋回平面を傾けることで敵機に追従しようとする機動です。

 敵機に追従できないと判断した時点で、バンクをやや弱めて上昇に移ります。そのまま敵機を見失わないようにしつつ上昇し、速度を落としながら旋回し敵機方向に機首を向けます。機動全体は、斜め宙返りに近いもの、もしくはウイングオーバーの形となります。ここで、「速度を落としながら」と書きましたが、これは上昇によるエネルギー損失で落とすのであり、わざわざスロットルを緩めて落とすわけではありません。状況によってはスロットルを併用したほうがいい場合もあるかと思いますが、そこまで速度差があるのなら一旦上空へ離脱、要は一撃離脱に徹した方が無難なのではないでしょうか。特に機動性が優れているのでもない限り、スロットルを絞って一気に減速というやり方はお勧めしかねます。

 まぁ、やることは単純なのですがタイミングは意外と微妙で、早すぎると敵に反撃の機会を与えてしまいますし、遅すぎれば急激な操作をしなければ追従しきれなくなります。また、引き起こしが足りないと敵機の真上につく形になってしまったり、オーバーシュートを防げなくこともあります。

 小さなHigh-YoYoを何度も繰り返して仕掛ける方が楽で簡単なのですが、いかんせんレシプロ機では推力が足りないためかえって危険な状態に陥ることがあります。落としきれない、と思ったら早めに離脱し体勢を整えましょう。何度か繰り返してもなお旋回で食い込みきれない場合は迷わず離脱して下さい。でなければ危険です。優位から攻撃に入っているわけですから、タイミングを誤らなければ離脱できないことはないと思います。ただ、これも状況次第でして、離脱することで相手に時間的余裕を与えてしまう方がかえってマズイ場合には無理をしてでも落としにかかります。が、このような状況はできるだけ作らない方がいいでしょう。

 特にHigh-YoYoに限った話ではないのですが、3次元機動においては自分の思惑と違う状態になった場合、彼我の位置関係や自分の姿勢などが一気に把握できなくなる、酷い時には敵機を見失うといった、一種のパニック状態に陥ることがあります。特に視界切り変えに不慣れだったり、機動中にブラック/レッドアウトしたりするとこの傾向が強くなります。ここで、見失った敵機を探したり、状況を把握する為のほんの一瞬が致命的な一瞬となるケースは少なくありません。


Low-YoYo

こんなもんでしょうか

 この機動はやや特殊で、敵機後方につけ、ブレークにも追従できるものの速度が遅く、引き離されてしまうような状況で用います。また、失速寸前で旋回維持できないような場合には、望まずともこのような動きをすることになります。

 これはHi-YoYoとはまったく逆の機動となります。要は下降して速度を稼ぎ、かつ敵機の旋回円をショートカットして後下方から突き上げるわけです。ただ、敵機の側から見ると割と対応しやすく、これが通用するのは非常に限られたシチュエーションだと思います。少なくとも、積極的に狙っていくべき機動ではありません。


ロールアウェイ

う〜ん・・・

 考え方はHi-YoYoと同じなのですが、上昇時に逆方向にロール、頂点付近でそのままバレルロールのような機動から降下に移り、敵の旋回平面の下に潜って突き上げるような形になります。機動の頂点付近では完全に敵機を見失う状態になりますし、かなりダイナミックな機動となるので完璧に決めるのは難しい機動です。また最終的に敵機の上方(背側)から襲い掛かる形になることが多く、肝心の射撃が困難になるケースもままあります。

 この機動、実際にやってみるとほとんど成功しないんです。もちろん腕のいいパイロットなら難なく決めるのでしょうが、僕くらいの技倆では素直にHigh-YoYoを行った方がずっと確実です。個人的には、レシプロ機でそれほど有効な機動だとは思えない、というのが正直なところです。現代の戦闘機であれば空対空ミサイルが使えるのですが・・・

 ただし、上空に出た時点で敵機と適当な距離を保てる為、そこから降下せずに一度上空でタメを作り、敵機の出方を見てから攻撃…というのはいいかもしれません。


バレルロールアタック

アホですね、この敵機

 これは、これまでの機動とは違いバクチ的要素が強い機動です。これまでの機動がエネルギー損失を避けることに重点が置かれていたのに対し、この機動はとにかく敵を叩き落とすことが重点となっています。敵機との交差角が大き目で、速度差が大きい時、例えば直進している敵機の斜め後上方から飛び込む場合などに有効ですが、ある程度の機動性を要求されます。

 具体的には、オーバーシュートが避けられないとわかった時点で逆方向へバレルロールを行います。頂点で背面になった辺りから上方視界で敵機を確認し、そこからは適切に調整して敵機方向に機首を向けます。

 これは決まると完璧に敵機後方につけます。が、バレルの打ち方によってはエネルギー損失が大きいこと、タイミングやバレルの大きさを間違うと敵機上方、下手すると前方にオーバーシュートしてしまうことなどの欠点もあり、うまくこなすにはそれなりの訓練が必要でしょう。個人的には非常に好きな機動の一つです。これが決まるとホントに気持ちいいんです。


ラグ・パーシュート

これ、意外と決まります

 これは、射撃位置につけることを目的にした機動ではありません。旋回率の高さを活かして敵機後下方の死角をキープし続ける機動です。交差角は小さいものの軸線が敵機の機動の外側にずれているような時には有効ですが、交差角が大きい時や速度差が大きすぎる場合には向きませんし、相対的な旋回性能が極端に劣る場合にも向きません。ただ、後者の場合は撃墜位置につけなくともエネルギーロスを押さえるという意味では効果があります。

 具体的には、無理に一杯の旋回をせず、最大効率、あるいはそれよりやや緩めの旋回を行います。もちろん、敵機はどんどん視界から外れていってしまいます。この時、上方視界で確認して敵機が後方へどんどん回り込んでしまう気配であれば旋回をやめ離脱するなり、他の手を考えます。特に視界内で敵機の背面がまるまる見える(キャノピートゥキャノピーの状態)ようだったら相当マズいのでとっととケツをまくって下さい。もし、前上方視界にキープできるようだったら、そのまま旋回を続けます。この時、敵機の後下方から見上げる形になっていると最高です。敵パイロットからするとここは完全に死角となるので、安心して旋回を止めてしまったり、旋回を切り返したりします。そうなればもうこちらのものです。これは意外と引っかかってくれる人が多いので、状況次第で試してみて下さい。

 また、敵機より大きな旋回円であっても、その中心を適当にずらしてやれば敵機の真後ろにつけるタイミングがあるということも心に留めておいて下さい。

 しかし、いくらロスを押さえると言っても旋回している限りエネルギーは失われていきます。旋回中にも状況を判断し、マズいと思ったら即離脱しましょう。



エクスペルテンへの道


 とか言いつつ、僕自身dweebに毛が生えたようなモノなのですが、それなりに考えている点などを・・・

 一撃離脱を主戦法にしている場合、上記の機動はとりあえず置いといてそのまま上昇し離脱するのが常套手段ではありますが、ロスを押さえかつ優位に占位し続けるという意図は同じです。相手がどんなに低速域での旋回性能に秀でていても、こちらがエネルギーを高く保っている限りその戦闘はこちらの手中にあります。そのまま戦闘を続けるにしても、離脱するにしても選択権はこちらが握っているわけです。逆に不利な状況に追い込まれてしまったら、まず離脱の可能性を探るべきです。と言うか、明らかに不利な体勢になる前に離脱する手を考えなければなりません。

 また、敵にエネルギーロスを強いることも重要です。一番簡単な方法は敵機を射撃すること(そして当てること)です。これで敵機に回避機動をとらせることができれば、それだけでも相当量のエネルギーをロスさせられます。近くに他の脅威がいないのであれば、これを繰り返して追い込んでいけば、そのうち撃墜できます。もちろん、最初の一撃で墜とせれば言うことはありません。

 と、細かいことを並べていますが、何だかんだいって一番大事なのは射撃技術です。どんなに凄い機動で敵機後方につけても、射撃があたらなければ撃墜はとれないのです。この辺は機体によってかなり変わってくるので、offlineで感じをつかんでおくといいでしょう。

 撃墜が取れないと妙に焦ってしまい、無理な機動でエネルギーロスしていいカモにされる、なんてこともありがちです。しかし、こんな時に撃墜を急ぐ必要は全くありません。戦闘機パイロットにとって敵機を撃墜することはもちろん重要ですが、それよりももっと大事なのは生きて帰ることです。実戦なら「次」はないのですから・・・  撃墜されるまでに何機墜とせるかになってしまっては、それはただのシューティングゲームでしかありません。まぁ、どうあがいてもWarBirdsの世界で撃墜されずに飛び続けるのは不可能に近いんですけどね。

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