わてほんまに よーいわんわ


 川崎駅では乗客の約半数が入れ替わる。私の隣にいたきれいなおねいさんも駅に着いてから10秒もたたんうちにくたびれたスーツの暑苦しいおっさんにチェンジ。このおっさん何かゴソゴソとカバンの中を引っ掻き回してる。「電車混んでんのわかってんねんから要るもん有ったら乗る前に準備しとかんかい。」と心の中で突っ込みかましていると、目的の物を見つけたらしくカバンから一冊の雑誌を取り出した、ジャンプである。友情と問答無用の力(パワーと読む)と売上のためには物語の矛盾を意に介さない販売方針で一世風靡したがドラゴンボールの終了と共にしおしおのパーになった雑誌である。ちなみにおっさんむけ雑誌ではなく頭に「少年」がつく。

 おっさんは食い入るように読んでいるせいか読むのがやたら遅い。読むのが遅いだけでなく何度も前のページに戻って何やら確認しながら読んでいる。はっきり言わせてもらおう、それはジャンプの読み方ではない。ジャンプは勢いで読む物だ、というかそれしかない。その勢いにまかせてうおりゃぁぁあ!と読むのが正しい読み方である。ジャンプ何ぞにじっくり読み、鑑賞するのに耐えられる作品なんぞあるわきゃ無い。

 まあ、随分絵柄も変わっているしジャンプも昔のままつーことは無いんかもなぁと、ふと覗き込むとテニスのマンガなんぞ載ってる。なんかテニスつーのはブルジョア向きのスポーツで何たら婦人とかお公家さんがやるような感じで少年向とは思えないのだが、時代は変わったのか?

 ふと気になるコマが有った、そこにはコートに立つキャラクターに対する観客の声援が書かれている。多分彼の字なのであろうが観客は「皇帝」と叫んでいるのだ「皇帝」と書いて「エンペラー」と読まない、あくまで「こうてい」である。文字で見るとなんて事無いのだがこれは観客の声援だ、きっと「う」と「お」は長音に化けている。従って観客の声援を正確に表記するならば「こーてー!」、いきなりテニスコートが黒門市場に化けてしもたやないですか。

 そこまで考えたところで私の脳みその意識野の80%は笠置シズ子に占領され一日中「買い物ブギ」があたまんなかでぐるぐるすることになってしまったのであった。




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